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[朝日新聞] 北朝鮮とテロ 人権無視を看過できぬ (2017年04月23日)

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北朝鮮による人権無視が続いている。テロ国家呼ばわりされるのも自業自得だろう。

ティラーソン米国務長官が、北朝鮮について、テロ支援国家の再指定を検討していることを明らかにした。

米政府は北朝鮮を約30年前から指定してきた。核問題をめぐる6者協議の進展を受けてブッシュ政権が08年に解除したが、それ以降、北朝鮮の行動は改まるどころか悪化した。

日本人拉致問題などをめぐる協議で、北朝鮮は3年前、包括的な調査を約束しながら、その後、全面的に中止した。最近も北朝鮮の担当大使が、訪朝した記者団に、拉致問題には「誰も関心がない」と切り捨てた。

2月にマレーシアで起きた、金正恩(キムジョンウン)委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏の殺害事件は、北朝鮮当局が関与した可能性が極めて高い。

化学兵器が使われたとされるが、現地警察の捜査にまともに応じようともせず、不誠実な対応に終始している。こうした態度を国際社会は見過ごすべきではない。米下院は今月、国務省にテロ支援国家の再指定を求める法案を可決した。

再指定になれば、北朝鮮には様々な制裁が科され、アジア開銀など国際機関からの融資の道も断たれる。だが、すでに核・ミサイル問題での国連制裁があるため実質的な変化はない。

むしろ再指定は、北朝鮮が重視する国際的な体面を失わせる象徴的な意味が強い。だとしても、テロや大量破壊兵器の拡散を許さない国際社会の警告を発することにはなる。

トランプ米政権は、北朝鮮に対し、軍事面を含めた「最大限の圧力」をかける方針という。同時に「我々の目的は非核化であり、北朝鮮の体制転換ではない」(ティラーソン氏)とし、北朝鮮に自制を求めている。

朝鮮半島問題は武力では解決できないし、軍事紛争になれば日本、韓国など各国が重大な影響を被る。トランプ政権も安倍政権も、圧力の強化はあくまでも平和的解決をはかる手段であることを忘れてはなるまい。

もしテロ支援国家の再指定となれば、北朝鮮の激しい反発が予想される。だが、そんな状況を招いたのは他の誰でもない。北朝鮮自身である。

国内向けには「百戦百勝」などと常に体制を礼賛するが、無法なふるまいの結果、国際的な包囲網は確実に狭まっている。

国際社会の中で、不名誉なレッテルを再び貼られたくないのなら、人権を尊重し、核を放棄するしか道がないことを悟るべきである。

[日経新聞] G20首脳が保護主義の自制へ先頭に立て (2017年04月23日)

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世界経済は足元で回復基調を強めているものの、下振れリスクは大きい。その最たるものが保護主義である。20カ国・地域(G20)の首脳こそが先頭に立って自由貿易の意義を説き、保護主義を自制しなければならない。

ワシントンで開いていたG20財務相・中央銀行総裁会議は、通貨安競争を回避するなどの原則を確認して閉幕した。

国際通貨基金(IMF)の見通しによると、世界経済の成長率は2016年の3.1%から17年に3.5%まで高まる。先進国、新興国ともに全体として着実に回復していると評価できる。

先行きの懸念は、米国の政策や政治の不確実性が強いことだ。「米国第一」を掲げるトランプ米政権の政策は保護主義の色彩が濃く、米国の主張をうけ前回のG20会議は声明に「保護主義に対抗」との文言を明記できなかった。

今回は声明をとりまとめなかったが、G20議長国ドイツのワイトマン連邦銀行総裁は「ほぼ全員が開かれた市場や自由な市場アクセスの重要性を強調した」と明らかにした。

問われているのは、各国・地域の行動だ。たとえば、米政府は日本などの鉄鋼製品に反ダンピング(不当廉売)関税を適用する方針を決めたほか、鉄鋼の輸入規制にのりだそうとしている。

反ダンピング関税そのものは世界貿易機関(WTO)協定で認められている。ただ貿易相手国が関税上げという報復を繰り返す事態になれば、貿易減少を通じ世界経済の足を引っ張りかねない。

WTOによると、G20が導入した貿易制限措置はかなり残っている。世界経済の成長を後押しするため、G20は関税上げといった自由貿易をゆがめる政策を厳に控えねばならない。

通商政策を担っていない財務相・中銀総裁にこれ以上の議論を委ねるのは適切ではない。首脳こそが7月の会議の際に反保護主義で結束し、行動する必要がある。

自由貿易に背を向けて国や地域が豊かになれるわけではない。一方で急速な技術の変化に追いつけず、経済のグローバル化から取り残された層がいるのも事実だ。

自由貿易の利点を最大限生かしつつ、失業者にはきめ細かな職業訓練や再教育といった支援をする。そんな地道な取り組みが均衡のとれた成長につながる点をG20首脳は再確認してほしい。

[日経新聞] IT企業が変える自動車開発 (2017年04月23日)

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中国のネット検索大手、百度(バイドゥ)が、自動運転車を制御するソフトを外部企業に無償で公開することを決めた。開発力が低い自動車メーカーなども百度のソフトを使い、自動運転車を早期に生産できるようになる。

ソフトを公開して誰でも利用や改良ができるようにする手法は、IT(情報技術)分野で普及している。百度の取り組みは、IT業界の経験を自動車の開発に応用する新たな試みといえる。

自動運転車の開発は自動車メーカーに加えて、グーグルやアップルといった米国のIT企業が力を入れている。百度も2015年に着手し、公道で実証実験もした。障害物の検知や経路の設定などに使うソフトを今年7月から段階的に公開し、20年までに完全自動運転を可能にするという。

これまで企業の間では多額の資金や人材を投じて開発した技術を囲い込み、自社だけが使える期間を長くする動きが目立っていた。だが、IT企業の一部はこうした流れと一線を画し、成果をあげている。

グーグルは基本ソフト(OS)「アンドロイド」を無償で外部に提供し、このソフトで動くスマートフォンは世界販売が年間10億台を超えるまでに成長した。ソフトそのものでは対価を得ず、広告配信などを収益源としている。

広くソフトを公開すれば普及の速度が増す。世界各地の技術者が改良に取り組むことにより、完成度を高めやすい。百度もこうした効果を狙っている。

ただ、誰でも詳細を見たり、手を加えたりできるソフトに対しては、一部で安全性を懸念する声が上がっている。

自動車は人命を左右するため慎重に開発すべきだとの考え方も根強いが、IT化の流れは着実に強まっている。日本の自動車メーカーには安全性や製品の個性を高めるために技術を囲い込む分野と、他社と協力する分野を明確に分け、バランスを保つ経営戦略を求めたい。

[毎日新聞] 深刻さ増す人手不足 政府の危機感が足りない (2017年04月23日)

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人手不足が深刻化し、日本経済の成長を阻む壁になっている。

今月初め、日銀が発表した短観では、不足感を示す指数が、1990年代初めのバブル末期以来の水準まで悪化した。特に非製造業、中小企業で顕著となっている。

景気過熱時の人手不足と異なり、働き手となる人口そのものが急速に縮小しているところに今回の特徴はある。つまり、問題はこの先も当分持続し、より深刻化する恐れさえあるということだ。

仕事を探している人1人に対し、何件の求人があるかを示す有効求人倍率は25年ぶりとも言われる高水準で推移している。運転手や介護職など、職種によっては全体の平均を大きく上回るものもある。

それにもかかわらず政府や日銀から危機感は伝わってこない。最大の経営課題に人手不足を挙げる経営者も多い中、「まだ賃金や物価の上昇にはつながっておらず企業活動の制約になっていない」(日銀名古屋支店長)などと意識に開きがある。

物価上昇率が目標にほど遠い中、有効求人倍率の上昇は、政府がアベノミクスの成功例として最も胸を張ってきたものだ。急に懸念材料だとは言えないのかもしれない。

政府の政策が皮肉にも人手不足を悪化させている面もあるようだ。外国人旅行者の増加は、経済成長に貢献する半面、主にサービス業界での人手不足に拍車をかけている。

長時間労働の是正など「働き方改革」も、それ自体望ましいとはいえ、労働力の減少要因となる。今後は五輪関連の経済活動も労働市場を一層、逼迫(ひっぱく)させかねない。

企業は当然ながらロボットの導入や作業の自動化で補おうと努めているが、追いつかない。人の手でなければできない仕事も多い。女性や高齢者が今以上に働きやすくなるための努力がもっと必要だ。

今後は国外の人材も本格的に受け入れなくてはなるまい。留学生や技能実習生をその場しのぎの労働力として利用するのは問題だ。本人の希望に応じ、長期的に住んで働いてもらうため、子どもの学校や家族への支援体制など、環境整備に急ぎとりかかる必要がある。

それには、人手不足に対する当局者の強い危機感が不可欠だ。

[毎日新聞] 日本郵政が巨額損失計上へ 復興への影響はないのか (2017年04月23日)

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日本郵政が2017年3月期決算で最大4000億円規模の損失を計上する見通しとなった。買収したオーストラリア企業の不振が原因だ。

政府は、保有する日本郵政株を売却して、利益を東日本大震災の復興財源に充てることにしている。巨額損失で株価が低迷し、復興事業に悪影響を及ぼさないかが心配だ。

国際物流網を展開する豪トール・ホールディングスを、日本郵政が約6200億円で買収したのは15年5月だ。秋に上場を控え、成長戦略を示す必要に迫られていた。

子会社の日本郵便は、電子メールの普及で苦戦が続く。人口減で国内市場の成長は期待しにくい。拡大が見込めるアジア太平洋地域の物流事業に活路を見いだす狙いだった。

当時、日本郵政社長だった西室泰三氏は「グローバル化への第一歩」と自賛した。高市早苗総務相も「野心的な挑戦」と評価した。

だが、石炭などの資源価格が下落し、資源輸出が主力の豪経済が低迷して、トール社の収益も悪化した。買収戦略が裏目に出た形だ。

国内市場が縮小する中、海外進出する日本企業が相次ぐが、失敗も目立つ。東芝の経営危機は、買収した米原子力会社の損失が引き金だ。

一般の企業なら、自らリスクを負って新しい事業に進出すること自体は経営者の判断の問題だ。一方、政府が民営化を進めているとはいえ、日本郵政は公的な影響力が大きい。同列には論じられない。

政府は、日本郵政株の売却益で復興財源4兆円程度を確保する計画を立てている。上場時には1・4兆円の収入があった。今夏以降に2回目の売却を行い、今年度に1・4兆円を得る方針を示している。

巨額損失の可能性が伝えられると、日本郵政株は一時急落した。予定通りの利益を得られないと判断すれば、政府が売却を延期する可能性がある。売却が遠のけば、復興事業も遅れる恐れがある。

また、日本郵政は、日本郵便のほか、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険を傘下に持つ。社会的なインフラを担い、多くの国民が利用する。

買収から巨額損失に追い込まれるまでわずか2年だ。判断に甘さはなかったか。経営陣は原因をきちんと説明し、責任を明確にすべきだ。

[産経新聞] 【主張】「民泊」事業法案 住民の安心安全が第一だ (2017年04月23日)

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自宅の空き部屋などに旅行者を有料で宿泊させる「民泊」を解禁する住宅宿泊事業法案が、国会に提出されている。

外国人旅行者の急増に伴い、都市部ではホテル不足が深刻化している。民泊を認め、宿泊施設を増やすのが法案の目的だが、近隣住民とのトラブル防止など抱えている課題は多い。

民泊とは本来、一般住宅での普通の暮らしなどを体験したい旅行者を、家主がもてなす仕組みである。それを業とする民泊の解禁により、賃貸住宅の空き部屋などを貸し出す事業者の大量参入が見込まれている。

ホテル不足を補う当初の目的を離れ、新たな不動産対策にしたいという側面が見えてきた。

法案は、地域環境の悪化を防ぐため、自治体が民泊の営業日数を規制することを認めている。学校周辺や住宅地などでの営業について、より厳しい制限を設けることなどは妥当だろう。

民泊事業者は、都道府県知事への届け出が義務づけられる。家主が不在の物件では、政府の認可を得た専門業者に対する管理委託も必要となる。宿泊日数は年180日を上限とし、仲介サイトも登録制となる。

宿泊施設が不足する都市部では、すでにマンションの空き部屋を旅行者向けに貸し出す無届けの民泊が広がり、近隣住民からの苦情も急増している。法案が成立すれば、自治体が事業者を把握することができるようになる。

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しかし、営業日数などの規制が守られているかなどは、自治体任せで、どのような実態になるか懸念は小さくない。深夜の騒音、ゴミ出しをめぐるトラブルなどの苦情窓口の整備も重要となろう。

不動産業界などは、人口減少で需要減が見込まれるマンションの空き部屋を民泊向けに貸し出し、新たな需要を開拓することを目指している。

ただ、こうした施設は家主が不在のまま旅行者に貸し出されるため、治安の悪化を招くし、資産価値の低下も起こしかねない。都市部のタワーマンションなどでは、民泊利用を独自に禁止する動きもみられる。

日本ファンを増やす取り組みとしては、政府も民泊を後押しすべきだろう。ただし、毎日そこで生活する住民の安心安全を守ることを、忘れてはなるまい。

[東京新聞] 週のはじめに考える 「爆買い」のあとにこそ (2017年04月23日)

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今年は日中が国交を正常化させて四十五年の節目です。政治関係改善が道半ばだけに、国民同士が相手の良い面を見つめ誤解を解く努力が欠かせません。

円安を追い風に中国人観光客が日本を訪れ大量に商品を購入する「爆買い」は二〇一五年をピークに下火になりつつあるようです。

観光庁などによると、一六年七〜九月の中国人客一人当たりの買い物代は十万一千九百六十四円で、三・四半期連続で減少しました。ピークの一五年一〜三月は十七万六千九百七十五円でした。

一方、一六年一〜九月の訪日中国人旅行者は約五百万人と前年同期比30・5%の増。購買意欲は衰えても、日本社会や文化を自ら体験する人は増えているのです。


◆「関係重要」7割超
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四十五周年を迎える日中関係について、程永華駐日大使は四月の記者会見で「改善のプロセスに入った」と述べ「関係改善の方向で一致した首脳の認識を行動に移す時です」と期待感を示しました。

その現状認識には同感です。ただ、「行動」の具体的な姿が見えてこないのも実情です。昨年秋の日中首脳会談では「両国の国民感情を改善していくこと」で合意しましたが足踏みが続きます。

それだけに、民間レベルで相手の良い面を見つめ誤解を解きほぐすことが、日中関係を支えるすそ野を広くし土台を強くすることにつながると期待します。

日本の民間団体「言論NPO」の昨年秋の調査によると、日中関係を「悪い」と感じる日本人は七割を超え、中国人は八割近くに上りました。ただ、日中関係を「重要」と考える割合は双方とも七割を超えています。政治がぎくしゃくすることで顔を背けてしまうのではなく、誠実に相手を見つめようと考える人が多いことに、希望を見いだします。


◆また会いたい人
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意義深い活動も根づいています。日本留学経験のない中国人学生を対象にした日本語作文コンクール(日本僑報社など主催)が〇五年にスタートしました。一六年のテーマはまさに「訪日中国人『爆買い』以外にできること」など。

一等賞の中国人民大学、郭可純さんは両親や自身の日本旅行を通じ「生きた体験や交流によって心に生まれる『また行きたい場所、また会いたい人』こそが旅の最上のお土産」と書きました。爆買いツアーでは得られぬ人と人との心の触れ合いに光を当てたのです。

嘉興学院の朱杭珈さんは日本語を指導してくれた日本人の先生との思い出をつづりました。最初は「太めの変なおばあさん」と悪印象を抱いた先生が家庭のトラブルまで親身に相談に乗り指導してくれたことで、前向きになれた自身の心の変化を描きました。

大学を卒業し現在は上海の日系企業で働く朱さんは「学生時代は中日交流は政府の仕事だと思っていた。今は自分たちが感じたことをお互いに伝え、誤解を解消し、信頼関係を築いてつきあっていくことだと思う」と話します。

あの「爆買い」ブームが去った後、中国の若い世代にこのような相互理解を求める気持ちが芽生えていることに心強さを感じます。


◆良いところ見よう
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日本の対中理解はどうでしょうか。一〇年の上海万博で全会期の百八十四日間通い詰め、中国で「世博〓〓(ナイナイ)(万博おばあちゃん)」として有名になった愛知県瀬戸市の山田外美代さん(68)も「最初に訪れた北京では置引にあい、中国に良い印象はありませんでした」と振り返ります。

万博開幕前に「庶民の生活を見てみよう」と上海の下町を訪れ、見知らぬ八十二歳の女性から白がゆをふるまわれたそうです。「日本人が私の作ったモノを食べてくれるとは思わなかった」と言われ、今も残る戦争の傷や意識の溝に「ハッとした」といいます。

万博期間中、「世博〓〓も〇・五元(約八円)のバスに乗って会場に来る」と評判になり、バス会社の二階で地元の人たちと交流会を開きました。山田さんの持参した巻きずしと中国の人たちが持ち寄ったちまきを交換し、双方の心の垣根は一気に低くなりました。

山田さんは「日本の良いところを見てほしいと思うなら、まずは中国の良いところにも目を凝らすべきです」と力を込めます。

日本を訪れた中国人は秩序ある社会や礼儀正しさなどに感心して帰国し再訪する人も目立ちます。山田さんは「中国人は人懐っこく情が深いですね」と、自身の体験から相手の良い面を強調します。

四十五年前を振り返れば日中間を往来する人は年間約一万人でした。今はその九百倍です。膨大な隣人の良き相互理解の積み重ねこそが、引っ越しできない隣国の政治関係を好転させる原動力になるはずだと確信します。

※〓は女へんに及

[産経新聞] 【主張】万景峰号就航 「対北」乱す露を警戒せよ (2017年04月23日)

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ロシアが北朝鮮に対する経済協力を強めている。日本への入港が禁止されている北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」を、5月からロシアへの定期船として就航させることが明らかになった。

極東のウラジオストクと北朝鮮北東部の経済特区、羅先(ラソン)を結び、月に6往復する計画という。

核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮に対し、国際社会は圧力を強めている。ロシアの動きはこれに逆行する。いわば「制裁破り」への加担は容認できないものだ。

ロシアは万景峰号で農業・鉱工業用機械の部品や魚介類などを輸出する。さらに、3月に北朝鮮と締結した協定に基づき、極東で働く北朝鮮の労働者を輸送することを想定しているという。

万景峰号はかつて、日本と北朝鮮の間を往来していた。ミサイル発射などを受け、日本政府は2006年以降、独自制裁に基づいて入港を禁じてきた。

日本には入れないのでロシアが代わって商売相手になる、という露骨なやり口ではないか。

万景峰号は朝鮮学校の修学旅行や、在日朝鮮人の祖国訪問などにも使われた。その裏では、日本に潜伏する工作員への指令場所、不正送金、輸出規制物資の搬送などに利用されてきた。

露朝間の定期便は北朝鮮の外貨獲得につながろう。加えて、ミサイル関連部品を含む禁制品の輸送に使われない保証はあるのか。

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そうなれば、国連安全保障理事会が決議を積み重ね、国際社会が築いてきた制裁網に、新たな抜け穴を作るものとなる。

ウラジオストクに初入港する5月9日には、第二次世界大戦の戦勝記念行事が予定されているという。北朝鮮への肩入れを強める姿勢は、安保理決議の効力を弱め、国際社会の結束を乱す。

ロシアは先に、シリアの化学兵器使用について調査を求めた安保理決議案に拒否権を行使し、廃案に追い込んだ。北朝鮮の弾道ミサイル発射を強く非難する報道声明にも一時、強く抵抗した。

大量破壊兵器を保有する国家を擁護し、経済的に利することをためらわない。そういうロシアを日本はどう認識すべきか。

東アジアで高まっている現実の脅威に対処する日米韓とは、明らかに異なる方向をロシアは打ち出しているのだ。日米両国は十分すりあわせを行う必要がある。

[読売新聞] 日豪2プラス2 対北でも「準同盟国」と連携を (2017年04月24日)

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この10年間、日本と豪州は安全保障協力を着実に深めてきた。この重要な関係をアジアの平和構築に活用したい。

日豪両政府が、東京で外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を開いた。

北朝鮮の核・ミサイル開発を強く非難し、独自制裁の検討を含む圧力の強化で合意した。北朝鮮に自制を促すよう、中国に求めていくことでも一致している。

ビショップ豪外相は、北朝鮮について「不法、不正で、非常に好戦的な姿勢だ」と批判した。

重要なのは、北朝鮮への軍事的な圧力を強めつつ、中国に北朝鮮への影響力行使を迫る米国を日豪両国が後押しすることだ。

中国の習近平政権とのパイプを有するターンブル豪首相には、中国への働きかけや北朝鮮包囲網の構築で役割を果たしてほしい。

中国に関して日豪共同声明は、南・東シナ海での海洋進出を念頭に、「あらゆる一方的な行動への反対」を明記した。南シナ海の「非軍事化」も要求した。まずは中国の人工島の軍事拠点化に歯止めをかけることが急務だ。

日豪両国は2007年、第1次安倍内閣時の「安保協力に関する共同宣言」以来、連携を強化してきた。2プラス2も7回目で、今や「準同盟国」レベルにある。

共同声明は、日米・米豪同盟について、「地域の安定と繁栄の礎」と位置付け、「永続的な重要性」を強調している。

日豪双方の同盟国である米国を基軸に、価値観を共有する日豪が重層的な協力関係を拡充することは様々な相乗効果を生もう。

気がかりなのは、ターンブル氏とトランプ米大統領が1月の電話会談で、移民問題を巡って険悪になったとされることだ。

ペンス米副大統領の22日からの豪州訪問を機に、米豪関係をきちんと修復させねばならない。

日米豪3か国の協力は将来的に更なる発展の可能性がある。インドや韓国、東南アジア各国を加えた共同訓練や安保対話の実現を積極的に探ることが大切だ。

日豪は、新たな物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に続き、訪問部隊地位協定の年内署名を目指している。共同訓練や災害救援で自衛隊、豪軍が相手国に派遣された際の活動を円滑化する。

2プラス2では、航空自衛隊と豪空軍の戦闘機による初の共同訓練を来年、日本で行う方向で調整することも確認した。自衛隊と豪州軍が多様な実動訓練を重ね、信頼関係をより強固にしたい。

[朝日新聞] 公文書管理 抜け道許さぬ見直しを (2017年04月24日)

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「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」

2011年に施行された公文書管理法は、公文書についてこう定義し、行政機関の文書作成や管理ルールの統一化を目指した。情報公開法(01年施行)とあわせ、行政の透明性を高めるための「車の両輪」だ。

ところが、国の公務員がこの趣旨に反する行為を相次いでしている。民主主義の根幹を揺るがしかねない深刻な事態だ。

学校法人・森友学園への国有地売却の経緯に関する文書について、財務省は国会で「廃棄した」との説明を繰り返す。

防衛省は、南スーダンの国連平和維持活動で陸上自衛隊派遣部隊が現地情勢を記録した日報を「廃棄した」としていたが、後日、データが見つかった。

なぜそんなに簡単に廃棄できるのか。両省が処分したという文書は、いずれも内部で保存期間が「1年未満」と判断された文書だ。

行政機関の職員の文書の保存期間は、各省庁が公文書管理法のガイドラインに沿って、それぞれ行政文書管理規則を設けて決めている。文書の重要性や性格をもとに「10年」「30年」などと分類するが、その判断は、各省庁に委ねられている。

保存期間が1年以上の文書であれば、行政文書ファイル管理簿に記載し、廃棄する場合、内閣総理大臣の同意を得るように定めている。しかし、1年未満ならば管理簿にも載せず、廃棄できる。どんな文書がどれだけあったのか、外部からは知りようがない。

内閣府公文書管理委員会の委員長代理を務める三宅弘弁護士は「法の抜け穴が明らかになった」と指摘する。

文書廃棄後に問題が発覚した場合、検証が困難になることは、森友学園の例で明らかだ。「1年未満」が適切な判断だったか大いに疑問だ。公にしたくない情報を恣意(しい)的に分類しているのではとの疑念も生じる。

NPO法人「情報公開クリアリングハウス」は、公文書管理法の改正に関する意見書をまとめた。1年未満の保存期間の文書が「ブラックボックス化している」と指摘し、この区分の原則廃止や廃棄文書の一覧の公表などを提案する。

政府はこうした意見に耳を傾け、「抜け道」を許さない法改正に早急に取り組むべきだ。

国有地売却の経緯も文書がないならば関係職員から聞き取りをして報告書を作るのが筋だ。情報公開の後退は許されない。

[朝日新聞] 大学スポーツ 改革に求められる視点 (2017年04月24日)

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大学スポーツの振興を図る取り組みが始まっている。だが打ち出された施策は性急に過ぎ、身の丈にあったものとも思えない。足元の課題を地道に解決していく姿勢が大切だ。

この話は、安倍政権が掲げる経済政策「20年までにGDP600兆円」から始まった。乗り遅れまいと、スポーツ庁も「稼ぐ」ことを前面に押し出し、先月、報告書をまとめた。

目玉は、全米大学体育協会(NCAA)の「日本版」の創設だ。しかし、実現可能性には大きな疑問符がつく。

米国の大学スポーツを統括するNCAAは、アメリカンフットボールとバスケットボールの放映権料などで年間1千億円の収入がある。強豪校の監督ともなれば億単位の年俸を稼ぐ。

収益構造、規模、歴史……。日本とは違いすぎる。ただマネをしても円滑に事が運ぶとは思えない。大学関係者からも戸惑いの声が上がっている。

大学スポーツに改革が必要なことはかねて指摘されてきた。

競技の指導者やクラブの運営は、一部の教職員を除けば、OBや学生らボランティアに頼っているのが現実だ。ハラスメントや会計の不備などの問題が表面化するのは珍しくない。

大学が設けている特待生や奨学金制度の運営にも、不透明さがつきまとう。そして、少なくない学生が、スポーツ一辺倒の偏った生活を送る。

こうした状況を改めるには、たしかに資金が必要だ。大学スポーツが産業として成り立つ素地も十分あるだろう。

だが、まず取り組むべきは「稼ぐ」ことではなく、学業と競技を両立させるための身近な仕組みづくりではないか。

プロや五輪を狙える選手は、ほんのひと握りだ。大多数の普通の学生抜きに、大学スポーツを語ることはできない。

特待生制度などをゆきすぎたものにしないための統一基準の策定、選手の就職支援、チームを運営・管理するノウハウの指導などが不可欠だ。大学スポーツ界全体のコンプライアンス意識が低いままでは、企業・団体も投資や契約に二の足を踏む。

個々の大学やクラブでは、いくつか挑戦が始まっている。例えば、京大のアメフト部は一般社団法人を設立し、スポンサーによる強化費調達を図る。競技指導だけでなく、ハラスメントやドーピング対策の研修、倫理教育などのため、外部から講師を招く費用にあてる考えだ。

学生・競技者本位に徹し、目的とビジョンを明確にして、制度設計を進めたい。

[読売新聞] テロ準備罪法案 国民の不安を丁寧に払拭せよ (2017年04月24日)

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法案の必要性を丁寧に説明し、国民の理解を得る。政府は、この姿勢に徹するべきだ。

テロ等準備罪を創設する組織犯罪処罰法改正案に関する論戦が、衆院法務委員会で本格的に始まった。

安倍首相は「東京五輪が3年後に控える中、テロ対策は喫緊の課題だ」と強調した。法案を成立させて、国際組織犯罪防止条約を締結する重要性も改めて訴えた。

国会が条約締結を承認したのは14年も前だ。締約国が既に187の国・地域に上る中、前提条件の国内法の整備すらできないのは、ゆゆしき事態である。

政府は今度こそ、法案を確実に成立させなければならない。

論戦の主要テーマの一つは、法案がテロ対策に有効かどうか、という点だ。277の対象犯罪には、森林法の森林窃盗罪などが含まれる。民進党は、保安林でキノコを採る行為を処罰することがテロ対策なのか、と追及した。

テロ等準備罪は、組織的犯罪集団による犯罪の計画に加え、実行準備行為があって初めて成立するものだ。キノコ狩りという行為のみを強調し、テロと無関係だと決めつけるのは乱暴だろう。

政府の答弁も物足りない。「組織的犯罪集団が現実的に行う可能性のある犯罪」として対象犯罪を選んだ、と述べるだけだった。

森林窃盗罪の対象には立木や鉱物なども含まれる。天然資源を盗掘し、資金源としている過激派組織「イスラム国」の例もある。

組織的犯罪集団には、テロ組織以外に暴力団や麻薬密売組織なども含まれる。相互の連携も考えられよう。あらゆる事態を想定し、備えるのがテロ対策である。

政府は、こうした点を具体的に説明すべきだ。

「監視社会」になるとの批判も目立つ。組織的犯罪集団かどうかを判断するのは警察であり、警察業務の一環として、一般の人の日常行為も監視や捜査の対象にされる。そんな主張であろう。

通常の犯罪と同様、テロ等準備罪も犯罪の嫌疑があって初めて捜査が始まる。一律に監視が強まるかのような批判は当たるまい。

野党は、法務省刑事局長が政府参考人として出席することに反発している。官僚が衆参両院規則に基づき、委員会で専門的な見地から答弁し、閣僚らを補佐する。それが政府参考人だ。

金田法相の不安定な答弁を再三、批判してきた経緯からすれば、野党側こそ、積極的に出席を求めるのが筋ではないか。

[毎日新聞] 米国の温暖化対策見直し 排出大国の責任忘れるな (2017年04月24日)

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世界全体で協調し、地球温暖化対策に取り組むことを定めたパリ協定に逆行する行為だ。世界第2の温室効果ガス排出国の責任が問われる。 トランプ米大統領は、火力発電所が排出する二酸化炭素(CO2)の大幅削減を義務づけた「クリーンパワー計画」など、オバマ前大統領が進めてきた温暖化対策を全面的に見直す大統領令に署名した。

石炭産業復興などを掲げた選挙公約に従い、環境より雇用を優先する立場を鮮明にした。米国は昨年11月に発効したパリ協定の下で、温室効果ガスの排出を2025年に05年比で26?28%削減すると約束していたが、達成は難しくなった。

だが、協定発効で、脱炭素社会に向かう世界の流れは加速している。各国はトランプ政権の身勝手な対応に踊らされず、団結して、温暖化対策に取り組んでいくべきだ。

クリーンパワー計画は米国の大気浄化法に基づく。大統領令だけでは撤回できず、見直しの行政手続きに相当な時間がかかる。ニューヨークやカリフォルニアなど温暖化対策に熱心な17州は、大統領令に反対して連邦高裁に提訴した。

そもそも、米国の石炭産業の衰退は市場原理に従ったものだ。米国内では、石炭火力発電はガス火力発電よりコストが高い。再生可能エネルギーも低コスト化が続き、この分野の雇用者数は石炭産業を上回る。

ティラーソン国務長官が会長兼最高経営責任者(CEO)を務めた米石油大手、エクソンモービルはパリ協定残留を求める書簡を先月、トランプ氏に送った。米国でも、世界でも脱炭素化の流れを競争力向上につなげようという企業が増えている。

米国が温暖化対策を巡る国際交渉で主導権を手放せば、相対的に中国やインドなど新興国の存在感が高まる。両国は温暖化対策を環境対策や産業振興策とも位置づけており、取り組みが後退するとは考えにくい。

今回の大統領令はそうした現状認識を欠いている。温暖化対策の後退は、むしろ、米国の国益を損なうと考えるべきなのだ。

日本は温室効果ガスを50年に8割削減する長期目標を掲げる。各国と連携して米国に軌道修正を働きかけるためにも、自らの目標達成に向けた道筋をしっかり描く必要がある。

[日経新聞] ITで医療・介護費を抑えよ (2017年04月24日)

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高齢化で医療や介護の費用が際限なく膨らめば、現役世代や次世代の負担が急増し、日本の社会保障制度の存続すら危ぶまれる。

そんな悲観的な未来を変えるためにも、IT(情報技術)を使って医療・介護費を抑えられる余地は大きい。政府は2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に反映させる必要がある。

政府の未来投資会議で、有識者がITを使った医療・介護の効率化策を提案したのは理解できる。

たとえば、かかりつけ医がパソコンやタブレット端末から患者のデータを集めれば、対面でなくても画像をもとに患者の病状を診断できるようになる。

遠隔地にいる医師が患者に向き合う回数が増えたとしても、早めの診断で重症になるのを防いだり疾病を予防したりして、全体としての医療費を抑えやすくなる。

これまでは対面の診察が重視されてきたが、ITを使った遠隔診療を広く認めていくのは当然だ。政府は診療報酬改定の際に遠隔診療に関する診療報酬を上げ、普及を後押ししてほしい。

介護も事態は深刻だ。2025年度に介護費は約20兆円まで増え、約37万人の人材不足が見込まれている。だからこそITによる効率化の流れを加速したい。

赤外線センサーを使った見守りシステムや介護ロボットは、ヘルパーの負担を大きく減らすことができる。政府は介護報酬や人員配置基準で支援していくべきだ。

また膨大な要介護者のデータを分析し、効率よく要介護者の自立を支援していけるような介護標準化の努力を始めてほしい。

一方ですでに診療報酬明細書(レセプト)のデータから、地域で診療回数に大きな差があることが明らかになっている。政府はデータをさらに活用し、過剰な医療行為に切り込んでほしい。

ITによる効率化を評価しつつ、無駄は徹底的に排除して総額としての費用を大きく抑える。そんなメリハリの利いた診療報酬と介護報酬を政府はめざすべきだ。

[毎日新聞] 難航する受動喫煙対策法案 独りよがりの自民の抵抗 (2017年04月24日)

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受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案の今国会提出に向けた調整が難航している。自民党内の反対派が抵抗しているためだ。

2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、国際オリンピック委員会と世界保健機関(WHO)は「たばこのない五輪」を日本政府に求めている。五輪開催国にふさわしい受動喫煙対策を講じるべきだ。

焦点になっているのは飲食店での禁煙だ。当初、厚生労働省は「屋内禁煙」を原則としながら、煙を排出する喫煙室を設置した店を認める予定だった。ところが、飲食店業界や自民党から「屋内禁煙」に反対論が噴出し、延べ床面積30平方メートル以下のバーやスナックでは喫煙を認める内容へ後退を余儀なくされた。

反対しているのは衆参約280人の議員で構成する「自民党たばこ議連」だ。厚労省の妥協案についても納得せず、店が禁煙か分煙か喫煙かを選び、外部にわかるように表示すればOKという独自の案を出した。「五輪を開催する東京だけ条例を作ればいい」との極論まで聞かれる。

今月になってWHOの幹部が厚労省を訪れ、喫煙室を設けた場合でも煙が漏れ出るのを完全には防げないなどの科学的データを示し「例外のない完全禁煙」を強く要請した。

飲食店内に喫煙室を設けることを認めた元の厚労省案でも不十分な対策と指摘したのである。議連の案は論外と言うに等しいものだ。

WHOによると、受動喫煙対策を4段階に分けた評価では、現在の日本は最下位グループに属しており、厚労省案を実施しても下から2番目になるだけという。

近年五輪を開催したカナダ、英国、ロシア、ブラジルは飲食店を含めて「屋内禁煙」を法律や条例で定めている。それ以外に屋内禁煙を法制化した国は40カ国以上もある。

議連の案は世界の潮流に対する認識を著しく欠いている。

たばこを吸うのは個人の自由であり、小さな店舗の懸念もわからなくはない。しかし、他人の煙で健康被害を受ける人のことを最優先に考えないといけない。有効な受動喫煙対策を取るのは政治の責務である。

安倍晋三首相は自民党内の調整に乗り出し、飲食店を「完全禁煙」とする対策をまとめるべきだ。

[日経新聞] 国際金融規制を包括的に点検する時だ (2017年04月24日)

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2008年のリーマン・ショックの後、世界的に進められた金融機関に対する規制づくりが、一段落しつつある。このあたりで、経済的な側面から規制を点検してみてはどうだろう。

そんな問題意識に基づき、各国・地域の金融機関を監督する当局で構成する金融安定理事会(FSB)が、金融規制の経済的なメリット・デメリットを測定する手法などについて、世界中から意見を募り始めた。

過剰規制の見直しは、日本の金融庁や銀行界がかねて主張してきたところだ。金融システムの安定と経済成長を両立させるためのルール構築に向け、日本勢はFSBなど国際交渉の場で積極的に発言していくべきだ。

金融危機後の規制づくりは、20カ国・地域(G20)の主導で進められてきた。巨大金融グループに手厚い自己資本を積むよう求めたり、銀行に投機的な取引を禁じたりといった様々なルールが提唱され、現在までにその大半が実行に移されている。

一連の規制強化は金融システムの動揺を鎮め、世界経済の安定におおいに寄与した。しかし一方で、規制が金融市場の流動性を低下させ、成長の妨げになりかねないとの指摘も世界的に広がっている。

実際に米国ではトランプ大統領が、主に中小企業への資金供給を増やすことを念頭に、ドッド・フランク法(金融規制改革法)などの見直しに着手している。欧州銀行界では、自己資本比率規制のいっそうの強化に慎重な姿勢が目立ちはじめた。

リーマン後の規制づくりは危機対応の目的が前面に出たため、証券化などを前提にした金融仲介への影響が考慮されていたとは、必ずしも言えない。企業や個人が資金調達の面で不利益を被っていないかどうか、各国・地域の金融機関監督者が調査する必要がある。

そのうえで不利益が利益を上回ると判断された規制の事例をFSBなどの場に持ち寄り、国際的な協調を保ちながら手直しを進めるべきだ。ただし、特定の国や地域で規制緩和が先行しすぎると、グローバルなお金の流れがゆがみ、経済が混乱しかねない。

金融危機後の世界経済を支えた中国では、「影の銀行」と呼ばれる規制対象外の金融仲介も拡大した。中国をはじめとする新興国の市場も視野に入れた、包括的な規制の点検が必要だ。

[産経新聞] 【主張】規制委の人事 新体制は再稼働の加速を (2017年04月24日)

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日本の原子力安全行政の頂点に立つ原子力規制委員会の第2代委員長に、委員長代理の更田(ふけた)豊志氏を充てる人事案が国会に示された。

近く衆参両院の本会議で承認される見通しで、新体制は現在の田中俊一委員長が任期満了となる9月から発足する。

更田氏には規制委が国内外の意見に耳を傾ける組織に成長するよう、大所高所からのかじ取りを期待したい。

規制委は、福島事故の教訓を踏まえ、5年前に設置された。国家行政組織法で高い独立性が保証された三条委員会である。

これまでを振り返ると、この独立性の趣旨が生かされてきたかについては疑問が多い。「独立」と「独尊」は全くの別物だ。電力会社の自発的な取り組みで、原発の安全性を向上させていくには、事業者と対等の立場で話し合う謙虚さが必要だ。コミュニケーション能力の向上も欠かせない。

規制委の権限は強大である。更田氏にはその点を十分に心してもらいたい。規制委設置法でも「中立公正」が求められている。

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規制委の仕事は山積みだ。4年前の新規制基準の施行後、安全審査に合格した原発は、5発電所の10基にすぎない。審査の効率を高めることで、停滞からの脱却が望まれる。また、合格した10基は加圧水型で、沸騰水型の原発はゼロである。沸騰水型は東日本に多いこともあり、炉型の違いが地域経済の復活に差を生みつつあることにも心を致すべきだろう。

原発の停止による発電不足は、火力発電の焚(た)き増しで補われてきた。そのための化石燃料の輸入増による国富流出は6年で15・5兆円に達している。これではアベノミクスの効果も望めない。

地球温暖化防止のパリ協定で日本が約束している二酸化炭素の大幅削減も果たせないだろう。

国際緊張が高まるほど、エネルギー小国の日本にとっては長期運転が可能な原子力利用の重要性が増していく。現在はまさしくその局面を迎えている。

今年は日米原子力協定の更新にとっても重要な年である。再稼働の少なさなどから原発利用の後退感をトランプ政権が抱くと、日本のエネルギー政策は根底から瓦解(がかい)する。更田氏には、規制委設置の目的が「わが国の安全保障に資すること」にあることを改めて肝に銘じてもらいたい。

[東京新聞] 河村名古屋市長 地に足つけ歩み寄りを (2017年04月24日)

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名古屋市民は「庶民ファーストナゴヤ」を掲げた河村たかし市長の三期目続投を選択した。行政の長として地に足をつけた市政運営と、議会とも是々非々で歩み寄る建設的討論に努力してほしい。

当選を決めた河村氏は「税金を一円でも安くし、最高の福祉をお届けする」と決意を語った。

河村氏が唱える市民税5%減税や名古屋城天守閣の木造復元の是非などが争点となった選挙で、市民は河村市政の継続を選んだといえる。

だが、投票率は36・90%と前回の39・35%を下回り、二〇〇九年の河村氏初当選以降、出直し選を含む四度の選挙で最低となった。

投票率の低下は、庶民革命を掲げて八年前にスタートした河村市政への期待度や熱気が下がっていることを示す。河村氏は四選三期目におごることなく、初心に立ち戻って市政に取り組んでほしい。

「総理を狙う男」を公言する河村氏が全国的な知名度を持つのは、市民税減税や市長と市議の市民並み報酬など、既得権に切り込む市長として常に政治闘争を仕掛け市民の支持を得てきたからだ。

河村氏は代表を務める地域政党「減税日本」と、松井一郎大阪府知事が代表の「大阪維新の会」、小池百合子東京都知事が中心の「都民ファーストの会」との連携でも秋波を送ってきた。

確かに市や議会のなれ合い体質にカツを入れ、市民目線で改革してきたことは評価できる。投票前の本紙世論調査で七割超の人が河村市政を「高く評価」「ある程度評価」と回答したのは、こうした突破力に共感したものであろう。

一方、この八年を振り返れば河村氏は、行政トップとして丁寧に市職員の意欲を引き出すような行政運営をしてきたとは言い難い。

部下だった前副市長が対抗馬に名乗りをあげ選挙戦で「トップダウンで疲弊する職員。思い付きで停滞する行政」と、内から見た河村市政を批判した。耳が痛くとも謙虚に受け止めるべきである。

議会との建設的な討論も十分であったとはいえない。世論調査では五割を超える人が「市長も議会も歩み寄るべきだ」と答えた。

河村氏は常に「議会で過半数がないから(やりたいことが)できん」とこぼすが、地方自治体は首長と議員が直接住民に選ばれる二元代表制を採用している。もう一方の市民代表である議会をもっと尊重し、粘り強く交渉する努力を求めたい。

[産経新聞] 【主張】中国GDPの拡大 成長演出より改革進めよ (2017年04月24日)

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不安を拭えない経済の拡大である。

1?3月期の中国の国内総生産(GDP)が前年同期比6・9%増となった。2期連続の拡大であり、年間目標の「6・5%前後」を上回る。数字の上では景気の回復基調を示している。

むろん昨年まで減速傾向が顕著だった中国経済が持ち直せば、日本を含む世界経済の追い風になり得る。問題は、それが内実を伴っているかだ。

成長を押し上げたのは、政府主導のインフラ投資や過熱気味の不動産開発だ。国際社会に約束する構造改革は、脇に追いやられた格好になっている。

投資主導経済が限界を来したからこそ、これを改め、消費主導の安定成長を目指したはずだ。現状はこれに逆行している。

秋の中国共産党大会に向けて、習近平指導部は権力基盤を強めたい。だが、強引に成長をかさ上げして実績を演出するようでは、持続的な成長など望めまい。

道路、橋、空港などのインフラ投資は23・5%も増えた。旺盛な需要で粗鋼生産も伸びている。ただ、中国は鉄鋼の過剰生産を解消するため、生産能力を5千万トン削減する目標を掲げている。それが揺らぐ懸念はないのか。

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鉄に限らず、セメントなど経営不振の国有企業も息を吹き返しつつあるという。赤字を垂れ流しても倒産しない「ゾンビ企業」を淘汰(とうた)するのは構造改革の核心だが、それは遠のくのか。

また、投資に偏った政策運営は不動産バブルという副作用を招く。投機資金は不動産市場に集中し、3月の新築住宅価格は主要70都市の9割近くで上昇した。

投機抑制策を講じても追いつかないため、バブル崩壊や金融システム不安への懸念は消えない。李克強首相は「金融リスクを高度に警戒する」と訴えている。

対中貿易赤字を問題視する、トランプ米政権との関係も不確実性が高い。米中首脳会談で表立った対立は回避したが、不均衡是正に向けた「100日計画」で米側の圧力は強まるかもしれない。

トランプ氏は20日、中国を念頭に、鉄鋼の大量輸入が安全保障に及ぼす被害を調べる大統領令に署名した。中国政府の補助金やダンピング(不当廉売)に対処する姿勢を示したものだ。

習政権に、改革を後回しにする余裕はないということだろう。

[東京新聞] 措置入院制度 治安の道具にするな (2017年04月24日)

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精神障害者の監視ネットワークづくりではないかとの懸念が拭えない。今国会で審議されている厚生労働省の精神保健福祉法改正案のことだ。医療を治安維持の道具として利用するのは許されない。

法案の最大の焦点は、措置入院制度の見直しだ。精神障害のために自傷他害のおそれがあると診断された患者を、行政権限で強制的に入院させる仕組みをいう。

見直しの主眼は、措置が解除されて退院した患者を医療や保健、福祉の支援につなぎ留める体制づくりにある。

確かに、患者の地域での孤立を防ぎ、社会復帰を後押しする手だては制度上担保されていない。入院形態を問わず、退院後の支援の空白を埋める取り組みは大切だ。

だが、さる一月の国会施政方針演説で、安倍晋三首相は相模原市の障害者殺傷事件に触れ、こう述べている。「措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じていく」

政府の真の狙いが犯罪抑止にあるのは間違いあるまい。精神障害者をあたかも犯罪者予備軍とみなす無理解や偏見が底流にないか。そういう疑念を招くような法案は、直ちに取り下げるべきだ。

現に想定されている支援体制も、患者を追跡し、監視する全国ネットワークというほかない。

かいつまんでいえば、行政は病院などと協力し、患者が希望するか否かにかかわらず、措置入院中に退院後支援計画をつくる。退院した患者はどこに住んでも、その支援計画がついて回り、地元の行政が面倒を見にやって来る。

さらに、犯罪行為に走りかねない思想信条を抱いていたり、薬物依存だったりする場合に備え、警察と連携する段取りになっている。患者に寄り添うべき医療や福祉を、患者を疑ってかかる治安対策に加担させる構図といえる。

これでは患者の自由も、プライバシーも奪われかねない。精神障害者全体への差別を助長するおそれもはらんでいるのではないか。

見直しの出発点は、障害者殺傷事件を受けて厚労省有識者チームがまとめた提言だ。真相究明を待たず、容疑者の措置入院歴にこだわり、精神障害によって犯行に及んだとの推測を基に議論した再発防止策にほかならない。

だが、容疑者は刑事責任能力ありと鑑定された。よしんば責任無能力だったとしても、異例の一事件が立法事実になり得るのか。共生の理念は治安とは相いれない。
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