◆丁寧な合意形成と説明も怠れぬ◆
政権復帰後の安倍政権が4年目に入った。最近では、約5年半続いた小泉政権に次ぐ長さだ。
デフレ脱却と財政再建の両立、地方創生や「1億総活躍社会」の実現、地球儀俯瞰(ふかん)外交と積極的平和主義の具体化――。安定した長期政権の利点を生かし、こうした重要な政策課題を前進させるべきだ。
今年の通常国会は、異例に早い4日に召集された。昨年秋の臨時国会が見送られたこともあり、冒頭、総額3・3兆円の2015年度補正予算案を処理した後、16年度予算案の審議に入る。
◆強い経済を実現したい
日米など12か国の交渉が昨年10月に大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)の関連法案も審議される方向だ。TPPは、自由度の高い貿易・投資ルールを作ることで、日本経済再生の一つの柱となる枠組みである。
「強い経済」の実現は、社会保障、教育、外交・防衛など、あらゆる政策展開の基盤となる。それには、両予算案やTPP関連法案の早期成立が欠かせない。
自民党は、国政選に3回連続で大勝し、永田町で「1強」を謳歌(おうか)している。しかし、安倍政権に対する国民の支持には依然、「民主党政権よりはまし」といった消極的なものも少なくない。
安倍首相は、数の力に驕(おご)らず、謙虚な国会運営と国民への丁寧な説明を心掛けねばなるまい。
無論、安全保障関連法や特定秘密保護法の整備のように、世論の評価が分かれていても、日本の将来に欠かせない政策の実現には敢然と取り組むべきだ。同時に、野党と協議し、より幅広い合意形成を目指すことも怠れない。
今夏には参院選が控えている。14年12月に発足した第3次安倍内閣の中間評価の機会である。
首相は年頭記者会見で「安定した政治を前に進めるため、自公で過半数を確保したい」と語った。同日選に関しては「衆院解散は全く考えていない」と言明した。
◆野党結集は政策が重要
自民、公明両党は、経済、社会保障、外交など、山積する様々な課題について、具体的な処方箋と今後の道筋を明確に提示することが求められよう。
野党の責任も大きい。単に安倍政権を批判するだけでなく、説得力のある対案を掲げなければ、有権者の支持は広がるまい。
気がかりなのは、民主党の岡田執行部が安保関連法案の審議を通じて、「左派色」を強めたことだ。岡田代表は従来、日本周辺での米艦防護に前向きだったが、反対一辺倒の立場に転じた。
政権担当を経験した民主党が現実的な外交・安保政策を掲げなければ、建設的論争は望めない。
民主、維新の両党は、衆院で統一会派を組み、参院選前の合流も視野に入れている。ただ、安保政策や公務員人件費などを巡る両党の主張には大きな開きがある。
民主、共産両党などは、熊本、石川選挙区などで、安保関連法の廃止などを旗印に、無所属の野党統一候補の擁立も進めている。
自民党は、「究極の談合」と批判する。民主党内にも、共産党との共闘には反対論がある。
政策を一致させないまま、選挙目当てで勢力結集を図るのは「野合」にほかならない。
おおさか維新の会は、民主党などとは一線を画し、憲法改正などで安倍政権と積極的に連携する姿勢を強調している。
首相は、憲法改正について「参院選でしっかりと訴える。同時に国民的議論を深めたい」と語った。大切なのは各論の議論である。
改正には、衆参両院の3分の2以上の賛成による発議に加え、国民の過半数の賛成を要する。国の在り方にかかわる重要な問題だけに、与党は、民主党も含めた幅広い政党の合意を目指すべきだ。
◆憲法改正の議論深めよ
自民党は、大災害発生時などの緊急事態条項の新設、環境権など新たな人権の追加、財政規律条項の新設の3項目を改正の優先課題とするよう提案している。
選挙が困難になるほどの大災害時に、国会議員の暫定的な任期延長を可能にする規定がないことは現憲法の欠陥だ。国民の生命や財産を効果的に守るための首相権限の強化と合わせて検討したい。
岡田氏が「9条改憲勢力を3分の2未満に抑える」ことを参院選の目標としているのは疑問だ。自民党の優先していない「9条」をことさらに取り上げるのは、55年体制下の社会党を想起させる。
与野党はまず、改正テーマの絞り込みに向けた議論を本格化させてもらいたい。
政権復帰後の安倍政権が4年目に入った。最近では、約5年半続いた小泉政権に次ぐ長さだ。
デフレ脱却と財政再建の両立、地方創生や「1億総活躍社会」の実現、地球儀俯瞰(ふかん)外交と積極的平和主義の具体化――。安定した長期政権の利点を生かし、こうした重要な政策課題を前進させるべきだ。
今年の通常国会は、異例に早い4日に召集された。昨年秋の臨時国会が見送られたこともあり、冒頭、総額3・3兆円の2015年度補正予算案を処理した後、16年度予算案の審議に入る。
◆強い経済を実現したい
日米など12か国の交渉が昨年10月に大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)の関連法案も審議される方向だ。TPPは、自由度の高い貿易・投資ルールを作ることで、日本経済再生の一つの柱となる枠組みである。
「強い経済」の実現は、社会保障、教育、外交・防衛など、あらゆる政策展開の基盤となる。それには、両予算案やTPP関連法案の早期成立が欠かせない。
自民党は、国政選に3回連続で大勝し、永田町で「1強」を謳歌(おうか)している。しかし、安倍政権に対する国民の支持には依然、「民主党政権よりはまし」といった消極的なものも少なくない。
安倍首相は、数の力に驕(おご)らず、謙虚な国会運営と国民への丁寧な説明を心掛けねばなるまい。
無論、安全保障関連法や特定秘密保護法の整備のように、世論の評価が分かれていても、日本の将来に欠かせない政策の実現には敢然と取り組むべきだ。同時に、野党と協議し、より幅広い合意形成を目指すことも怠れない。
今夏には参院選が控えている。14年12月に発足した第3次安倍内閣の中間評価の機会である。
首相は年頭記者会見で「安定した政治を前に進めるため、自公で過半数を確保したい」と語った。同日選に関しては「衆院解散は全く考えていない」と言明した。
◆野党結集は政策が重要
自民、公明両党は、経済、社会保障、外交など、山積する様々な課題について、具体的な処方箋と今後の道筋を明確に提示することが求められよう。
野党の責任も大きい。単に安倍政権を批判するだけでなく、説得力のある対案を掲げなければ、有権者の支持は広がるまい。
気がかりなのは、民主党の岡田執行部が安保関連法案の審議を通じて、「左派色」を強めたことだ。岡田代表は従来、日本周辺での米艦防護に前向きだったが、反対一辺倒の立場に転じた。
政権担当を経験した民主党が現実的な外交・安保政策を掲げなければ、建設的論争は望めない。
民主、維新の両党は、衆院で統一会派を組み、参院選前の合流も視野に入れている。ただ、安保政策や公務員人件費などを巡る両党の主張には大きな開きがある。
民主、共産両党などは、熊本、石川選挙区などで、安保関連法の廃止などを旗印に、無所属の野党統一候補の擁立も進めている。
自民党は、「究極の談合」と批判する。民主党内にも、共産党との共闘には反対論がある。
政策を一致させないまま、選挙目当てで勢力結集を図るのは「野合」にほかならない。
おおさか維新の会は、民主党などとは一線を画し、憲法改正などで安倍政権と積極的に連携する姿勢を強調している。
首相は、憲法改正について「参院選でしっかりと訴える。同時に国民的議論を深めたい」と語った。大切なのは各論の議論である。
改正には、衆参両院の3分の2以上の賛成による発議に加え、国民の過半数の賛成を要する。国の在り方にかかわる重要な問題だけに、与党は、民主党も含めた幅広い政党の合意を目指すべきだ。
◆憲法改正の議論深めよ
自民党は、大災害発生時などの緊急事態条項の新設、環境権など新たな人権の追加、財政規律条項の新設の3項目を改正の優先課題とするよう提案している。
選挙が困難になるほどの大災害時に、国会議員の暫定的な任期延長を可能にする規定がないことは現憲法の欠陥だ。国民の生命や財産を効果的に守るための首相権限の強化と合わせて検討したい。
岡田氏が「9条改憲勢力を3分の2未満に抑える」ことを参院選の目標としているのは疑問だ。自民党の優先していない「9条」をことさらに取り上げるのは、55年体制下の社会党を想起させる。
与野党はまず、改正テーマの絞り込みに向けた議論を本格化させてもらいたい。