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[読売新聞] 安倍外交と安保 国際秩序構築へ脱「受け身」で (2016年01月06日)

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◆日米同盟の抑止力を強化したい◆

日本の安全保障環境は悪化している。中国は、軍備を急速に増強・近代化してきた。北朝鮮も、核と弾道ミサイルの開発を着々と進めている。

日本は従来、危機の発生後に対応策や法整備を検討し、「対米追随」とも揶揄(やゆ)された。こうした受け身の姿勢では、日本や地域の平和と繁栄は保てない。

安全な国際環境の形成に主体的に関与し、国益を確保する能動的な外交が求められている。

安倍首相は年頭の記者会見で、「日本外交が世界を引っ張る1年となる」と強調した。

◆国際テロの封じ込めを

日本は今年、先進7か国(G7)の議長国を務める。国連安全保障理事会の非常任理事国にも復帰した。国際秩序の再構築に、どんな役割を果たすのか。「積極的平和主義」をどう展開するのか。

5月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、過激派組織「イスラム国」などの国際テロ対策が主要議題となろう。

インターネットなどで過激思想に染まった若者らによるテロが世界各地で頻発している。脅威は新たな局面を迎えた、との厳しい認識を持つべきだ。

「イスラム国」の弱体化へ、各国の厳格な出入国管理と緊密な情報交換で戦闘員の渡航を阻み、資金源を断つ必要がある。宣伝戦への対抗措置を含め、総合対策の策定を日本が主導したい。

南シナ海の人工島付近での試験飛行など、中国は「力による現状変更」を強めている。海上交通路の安全確保は国際社会の共通利益だ。G7は一致して、中国に国際法の順守を促さねばならない。

4月には、広島市でG7外相会合が開かれる。核軍縮に重い責任を持つG7外相が被爆地に初めて顔をそろえることは意義深い。

昨年9月成立の安全保障関連法は今年3月、施行される。集団的自衛権の行使容認は、アジアを重視する米国のリバランス(再均衡)政策との相乗効果で、日米同盟の実効性を大幅に高めよう。

様々な事態に迅速に対処するため、自衛隊と米軍が緊密に連携し、共同訓練や警戒監視活動を充実することが欠かせない。

米軍普天間飛行場の辺野古移設は、在日米軍の抑止力を維持しつつ、基地周辺住民の負担を軽減する唯一の現実的な手段だ。他の選択肢を検討する時期は過ぎ、今は移設を実行する段階である。

反対する沖縄県の翁長雄志知事との争いは法廷に持ち込まれている。政府は、訴訟と並行して、代替施設建設に向けた作業を着実に進めることが大切だ。

◆中韓と「未来志向」築け

今年は、日中韓の首脳会談が日本で開かれる。経済や環境分野などで実務的協力の拡大を図る。

安倍首相は、中国の李克強首相、韓国の朴槿恵大統領と個別に会談する意向だ。日中、日韓の未来志向の関係構築につなげたい。

日中関係は改善基調にある。この流れを定着させるため、「戦略的互恵」の大局に立ち、対話を重ねることが重要だ。新たな日中協力やアジアの秩序作りについて率直に協議してはどうか。

同時に、尖閣諸島周辺での中国公船の領海侵入に対する警戒を怠るべきではない。歴史認識に絡めた中国の対日批判には、的確に反論する必要もある。

日韓両政府は昨年末、慰安婦問題で合意した。日本は、元慰安婦支援のために10億円程度を拠出する。韓国は、ソウルの日本大使館前に設置された、慰安婦を象徴する少女像の撤去に努力する。

日韓合意には、元慰安婦支援団体が反発し、韓国世論も肯定的ではない。韓国政府は、責任を持って関係者の説得に努め、合意を忠実に履行することが肝要だ。

北朝鮮の核問題に万全を期すため、米国と同盟関係にある日韓の協力を再強化せねばなるまい。

◆「日露」を打開できるか

北朝鮮による日本人拉致問題の解決も重要な課題である。

北朝鮮は拉致被害者の再調査について、日本側への報告を先延ばしにしている。この状況が続くなら、いったん解除した制裁の復活を真剣に検討すべきだろう。

安倍首相は、ロシアのプーチン大統領との信頼関係を基に、北方領土問題の解決を目指している。プーチン氏の来日は2年連続で先送りされたが、首相自らの訪露を検討し、接点を探る構えだ。

無論、領土問題のハードルは高い。ロシアのクリミア併合などに対する米欧の反発も根強い。日本はG7の協調を大切にしつつ、ロシアの出方を慎重に見極め、領土交渉を進めねばならない。

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