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[読売新聞] 社会保障政策 「1億総活躍」の具体策を急げ (2016年01月12日)

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◆医療費の抑制は避けて通れない◆

人口減と超高齢化をいかに乗り越え、社会・経済の活力を維持していくか。日本が直面する極めて重要な課題である。

子育てや介護の支援を強化し、女性や若者、高齢者の働き手を増やす。中長期的には少子化に歯止めをかける。安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」という目標は間違ってはいない。

多岐にわたる施策の具体化に取り組む1年としたい。

日本の総人口は2008年をピークに減少に転じた。現在は約1億2700万人だ。

◆若者の雇用安定が重要

出生率が改善しないと、60年には8700万人にまで減り、高齢化率は4割に達するとされる。労働力人口も50年に今の3分の2になる見込みだ。

この流れを食い止めなければ、社会保障制度の維持は危うい。

政府は、「1億総活躍社会」の重点指標の一つに「出生率1・8」を掲げる。財政難から後回しにされてきた少子化対策を、最優先課題としたことは評価できる。

1人の女性が生涯に産む子供の平均数を示す合計特殊出生率は現在、1・42にとどまる。

若者が結婚や子育てを希望通りにできれば、出生率は1・8に回復するという。この差の要因としては、経済的な問題とともに、仕事と子育ての両立が困難な雇用慣行や保育所不足が挙げられる。

若年層の経済基盤を強化するため、非正規労働者の処遇改善と正社員への転換支援を進める必要がある。職業能力開発の体制整備も重要だ。多子世帯への経済支援や奨学金の拡充など、子育ての負担軽減も図りたい。

◆保育・介護人材確保を

16年度予算案に盛り込まれた関連施策を着実に実施すべきだ。

女性を含め、多様な人材が活躍するための大前提となるのが、長時間労働の是正など働き方の見直しである。男女ともに仕事と家庭を両立できる環境が整わなければ、出生率の向上は望めまい。

重点指標の二つ目の「介護離職ゼロ」は、団塊の世代が高齢化する中で、喫緊の課題だ。

介護を理由とした離職者は、40?50歳代を中心に年間10万人に上る。介護サービスが不十分な実態を物語る。特別養護老人ホームの入居待ちは50万人を超える。

政府は、保育や介護の受け皿を従来の計画に上乗せして整備する方針を打ち出している。

問題は、保育・介護サービスを担う人材の確保である。いずれの業界も人手不足が深刻化し、サービス提供に支障が出ている事業者が目立つ。最大の要因は低賃金だ。思い切った処遇改善に向け、財源確保策を検討せねばならない。

「103万円の壁」「130万円の壁」など、女性の就労を阻害している税や社会保障制度の見直しについても議論を深めたい。

高齢化に伴って膨らむ医療費の抑制は、社会保障制度を持続させる上で最大のポイントである。

かかりつけ医の機能を高め、軽症者の大病院受診を減らす。退院支援や在宅診療など高齢者のニーズに合った医療を充実させ、高コストの急性期病床は絞り込む。

かかりつけ薬局の普及により、重複投薬といったムダを省き、安価なジェネリック医薬品(後発薬)の利用を促進する。

4月の診療報酬改定では、こうした方向性に沿ってメリハリをつけ、費用の抑制と医療の質向上を両立させることが大切だ。

◆給付抑制は不可欠だ

高齢者にも経済力に応じた負担を求めたい。高額療養費制度で70歳以上の負担上限を現役並みに引き上げる案は、検討に値する。

年金制度にも課題が残る。

少子高齢化の進行に応じて給付水準を引き下げる「マクロ経済スライド」の機能強化は不可欠だ。現行制度では、デフレ下での実施が制限されているため、引き下げが遅れている。

その分は将来世代の年金を減らして収支のバランスを取ることになる。これでは若年層の理解は得られまい。経済情勢にかかわらず完全実施するようにすべきだ。

厚生年金の加入対象拡大も進めたい。現在は非正規労働者の多くが除外されている。将来、無年金・低年金になる恐れが強い。企業が保険料負担を逃れるため、非正規雇用を増やす要因でもある。

厚生労働省が昨年まとめた改革案は、これらの懸案を先送りした不十分な内容だった。今国会に提出予定の関連法案では、しっかりと対応してもらいたい。

政府・与党は、今夏の参院選を意識して痛みを伴う改革から逃げることがあってはならない。

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