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[東京新聞] スキーバス事故 なぜ繰り返されるのか (2016年01月16日)

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またしても長距離を夜通しで走るバスの事故が起きた。これまでの事故を教訓に安全基準の見直しも行われてきたが、なぜ、悲劇は繰り返されるのか。多くの命を預かる自覚が薄らいではいないか。

事故現場は緩やかな左カーブの下り坂だった。バスは対向車線にはみ出し、右側のガードレールをなぎ倒して約三メートル転落、横倒しになった。路面凍結はなかった。

バスは、十四日深夜に東京・原宿を出発し、長野県内のスキー場を巡って十五日早朝に長野・新潟県境の斑尾高原に到着する予定だった。その途中、長野県軽井沢町で事故が起きたのは出発から三時間ほど経過した十五日午前一時五十五分ごろだった。

これまでに明らかになった事実の中に、気になる点が二つある。

一つはバスのルート。

ツアーの行程表には関越自動車道、上信越自動車道を経由するルートが記されていたが、バスは上信越道には入らず、国道18号の碓氷バイパスを走行して事故を起こした。運行会社のイーエスピーは「時間調整のため、高速道路を使わず行程表通りに行かないこともあり得る」としているが、誰の判断で、なぜ、カーブの多い碓氷バイパスを通ったのだろう。

もう一つは運行会社の姿勢。

イーエスピーは「運転手の健康把握が不適切」だとして今月十三日付で国土交通省から行政処分を受けていた。昨年二月の定期監査で、運転手十三人中十人に健康診断を受けさせていなかったことが発覚したためだ。

スキーツアーを企画した旅行会社キースツアーは「激安&格安」をうたい、スキーやスノーボードの日帰りや一〜二泊のバスツアーを手掛けていた。その格安運行の裏に、落とし穴はなかったか。

長距離を走るバスの事故は後を絶たない。二〇一二年には群馬県の関越自動車道でツアーバスが防音壁に激突し、乗客七人が死亡、三十八人が重軽傷を負った。運転手の居眠りが原因だった。

この事故を機に国交省はツアーバス制度を大幅に見直し、連続運転時間に上限を設けたり、長距離では交代運転手の配置を義務付けたりするなど安全規制を強化した。それで足りないことはなかったか、命を守る観点から、もう一度、見直してもらいたい。

格安ツアーを支える貸し切りバスも、安全対策を後回しにすることは許されない。運行事業者は、人命を預かる責任の重さをあらためてかみしめねばなるまい。

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