中東をめぐる国際政治の枠組みが変わる歴史的な節目である。イランに対し米欧が続けてきた制裁の解除が発表された。
孤立していたイランが国際社会への本格復帰に歩を進める。米欧は、イランとの対立から、平和共存の模索へかじを切る。
それは大局的に見て、中東と世界の長期的な安定のために欠かせない一歩である。関係国の判断を支持したい。
問題は、新たな中東の政治地図をどう落ち着かせるかだ。イスラエルやサウジアラビアなど多くの周辺国は、米欧とイランの接近を強く警戒している。
秩序の移行に伴う混乱の悪化を避ける最大限の努力が求められる。米欧やロシアはそれぞれの影響力を駆使し、地域の緊張をほぐしてゆくべきだ。
1979年の革命以降、政教一致の体制をとるイランは長く反米姿勢をとってきた。サウジなど王族が支配する周辺国は革命の輸出を恐れ、米欧とともにイランの封じこめを続けた。
だが、その対決の構図が中東問題をこじらせてきた。シリアやイラクの混乱も、過激派「イスラム国」(IS)問題も、背景には米欧・アラブ対イランの分断が影を落としている。
イスラエルもサウジも、イランとの一触即発の緊張を続ける不毛さを悟るべきだ。永遠の火薬庫としての中東の姿を変える努力こそ、国民や同胞のために果たすべき責務である。
その同じ責任は当然、イランの指導部にもある。核合意を守るだけでは不十分だ。各地の傘下勢力への軍事支援など覇権争いの行為をやめるべきだ。
イラン国内の人権にも大きな懸念が残っている。宗教指導体制への批判を許さない弾圧を続ける限り、国際社会への本当の仲間入りはあり得ない。民主化を進める覚悟を促したい。
制裁解除により凍結が解かれるイランの資産は1千億ドル(約12兆円)ともいわれる。欧米企業の間では、新たな有力市場とみて、ビジネス参入する動きが広がっている。
だが米国では、秋に迫る大統領選・議会選を意識して野党共和党がいまも強硬姿勢をとっている。中東和平と核問題を政争の具にするのは無責任だ。
核をめぐる緊張を、武力でなく外交で穏便に収拾に導く知恵は、北朝鮮問題でも求められている。イラン問題は、核拡散を防ぐモデルケースでもある。
その意味でも、アジアにとってひとごとではない。今回の進展が逆戻りしないよう、中東の安定へ向け、日本政府も積極的に関与の工夫をこらすべきだ。
孤立していたイランが国際社会への本格復帰に歩を進める。米欧は、イランとの対立から、平和共存の模索へかじを切る。
それは大局的に見て、中東と世界の長期的な安定のために欠かせない一歩である。関係国の判断を支持したい。
問題は、新たな中東の政治地図をどう落ち着かせるかだ。イスラエルやサウジアラビアなど多くの周辺国は、米欧とイランの接近を強く警戒している。
秩序の移行に伴う混乱の悪化を避ける最大限の努力が求められる。米欧やロシアはそれぞれの影響力を駆使し、地域の緊張をほぐしてゆくべきだ。
1979年の革命以降、政教一致の体制をとるイランは長く反米姿勢をとってきた。サウジなど王族が支配する周辺国は革命の輸出を恐れ、米欧とともにイランの封じこめを続けた。
だが、その対決の構図が中東問題をこじらせてきた。シリアやイラクの混乱も、過激派「イスラム国」(IS)問題も、背景には米欧・アラブ対イランの分断が影を落としている。
イスラエルもサウジも、イランとの一触即発の緊張を続ける不毛さを悟るべきだ。永遠の火薬庫としての中東の姿を変える努力こそ、国民や同胞のために果たすべき責務である。
その同じ責任は当然、イランの指導部にもある。核合意を守るだけでは不十分だ。各地の傘下勢力への軍事支援など覇権争いの行為をやめるべきだ。
イラン国内の人権にも大きな懸念が残っている。宗教指導体制への批判を許さない弾圧を続ける限り、国際社会への本当の仲間入りはあり得ない。民主化を進める覚悟を促したい。
制裁解除により凍結が解かれるイランの資産は1千億ドル(約12兆円)ともいわれる。欧米企業の間では、新たな有力市場とみて、ビジネス参入する動きが広がっている。
だが米国では、秋に迫る大統領選・議会選を意識して野党共和党がいまも強硬姿勢をとっている。中東和平と核問題を政争の具にするのは無責任だ。
核をめぐる緊張を、武力でなく外交で穏便に収拾に導く知恵は、北朝鮮問題でも求められている。イラン問題は、核拡散を防ぐモデルケースでもある。
その意味でも、アジアにとってひとごとではない。今回の進展が逆戻りしないよう、中東の安定へ向け、日本政府も積極的に関与の工夫をこらすべきだ。