昨年1年間に警察が把握した刑法などに触れる犯罪(刑法犯)の件数は約109万9千件で、戦後最少となった。13年連続して前年を下回り、ピークだった2002年の285万4千件と比べると6割減ったことになる。
警察や自治体、事業者、ボランティアなど、この間の官民をあげた取り組みを評価したい。
統計上、治安の水準はもっとも良い状態になったわけだが、国民が「本当に治安が改善した」と実感できるまでには至っていない。さらに対策を強め、より安全で安心な社会をつくっていきたい。
課題のひとつは、容疑者が摘発された割合を示す検挙率が30%程度にとどまっている点だ。1980年代後半までは60%前後を維持しており、低迷は明らかである。「犯罪は減ったものの、起きた事件をなかなか解決できない」というのでは、安心は得られない。
刑法犯の減少は、空き巣や車から金品を盗む車上狙いなど「減りやすい犯罪」が減った結果でもある。捕まる可能性の低い、「より割のいい」手口にシフトしている面もあるだろう。事実、電話1本で高齢者らから大金をだまし取る振り込め詐欺は増えている。
立場が弱い子どもや女性が巻き込まれる虐待や暴力、ストーカーなどの被害は依然深刻だ。サイバー犯罪など、検挙も抑止も難しい新手の犯罪も横行している。
捜査の体制や手法が、犯罪の現状に適応したものになっているかどうか、改めてチェックし、見直す必要がある。大量退職が続くベテラン捜査員の技能の継承や、捜査への科学技術の導入には引き続き力を入れていくべきだろう。
危険性が具体的に高まっているわけではないが、海外でのテロの広がりは、国内の「安心」にも影を落としている。諸外国のテロ対策の仕組みなどもよく研究し、関係機関が連携を強めて備えを固める必要がある。テロ情勢や対策の内容などを広く知らせることも、国民に協力を求め、安全・安心を得るために欠かせない。
警察や自治体、事業者、ボランティアなど、この間の官民をあげた取り組みを評価したい。
統計上、治安の水準はもっとも良い状態になったわけだが、国民が「本当に治安が改善した」と実感できるまでには至っていない。さらに対策を強め、より安全で安心な社会をつくっていきたい。
課題のひとつは、容疑者が摘発された割合を示す検挙率が30%程度にとどまっている点だ。1980年代後半までは60%前後を維持しており、低迷は明らかである。「犯罪は減ったものの、起きた事件をなかなか解決できない」というのでは、安心は得られない。
刑法犯の減少は、空き巣や車から金品を盗む車上狙いなど「減りやすい犯罪」が減った結果でもある。捕まる可能性の低い、「より割のいい」手口にシフトしている面もあるだろう。事実、電話1本で高齢者らから大金をだまし取る振り込め詐欺は増えている。
立場が弱い子どもや女性が巻き込まれる虐待や暴力、ストーカーなどの被害は依然深刻だ。サイバー犯罪など、検挙も抑止も難しい新手の犯罪も横行している。
捜査の体制や手法が、犯罪の現状に適応したものになっているかどうか、改めてチェックし、見直す必要がある。大量退職が続くベテラン捜査員の技能の継承や、捜査への科学技術の導入には引き続き力を入れていくべきだろう。
危険性が具体的に高まっているわけではないが、海外でのテロの広がりは、国内の「安心」にも影を落としている。諸外国のテロ対策の仕組みなどもよく研究し、関係機関が連携を強めて備えを固める必要がある。テロ情勢や対策の内容などを広く知らせることも、国民に協力を求め、安全・安心を得るために欠かせない。