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[読売新聞] 厚生年金逃れ 従業員の老後が脅かされる (2016年01月22日)

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事業主の経営上の都合で、従業員の老後の安心が脅かされている。看過できない事態だ。

厚生年金に加入する資格があるのに、未加入となっている人が200万人に上ることが、厚生労働省の調査で明らかになった。

保険料負担を逃れようと、届け出を怠っている疑いのある事業所は全国で79万に上るという。

このままでは、将来、低年金・無年金の人が続出しかねない。安倍首相が国会で、「放置するのは問題だ」として、対策の強化を表明したのは、もっともだ。

厚生年金は原則として、全ての法人事業所と従業員5人以上の個人事業所に加入義務がある。保険料は、従業員本人と事業主が折半して負担する。

厚生年金に入れないと、国民年金だけに加入する。老後は満額でも月6・5万円の基礎年金のみだ。自分で保険料の支払い手続きをする必要があるため、未納により年金が減る人も目立つ。

少子高齢化に伴い、基礎年金の水準は今後30年で3割程度下がる見込みだ。定年のない自営業者らを想定した国民年金は、給与所得者の老後保障にはなり得ない。

未加入者は、厚生年金と同時加入する企業の健康保険組合などにも入れない。保険料が割高な国民健康保険に入ることになる。

企業負担のある厚生年金に対象者がきちんと加入することは、本人の救済だけでなく、年金財政全体の安定性向上にも大きな効果がある。政府は、そのメリットを国民に周知する必要がある。

加入逃れは中小・零細企業が中心とみられる。経営難を理由に挙げる事業主も多いが、企業の社会的責任を蔑(ないがし)ろにしてはなるまい。保険料を負担している企業との公平性の点からも問題が大きい。

日本年金機構は、度重なる加入指導に応じない事業所に対しては立ち入り検査の上、強制加入させることができる。だが、長期間にわたって検査を実施しなかった事例が相当数に上ることが、会計検査院の調査で判明している。

厚労省と機構は、検査基準を明確化し、迅速な対応を徹底すべきだ。検査拒否には重い罰則が定められている。塩崎厚労相が、悪質な事業所には刑事告発も辞さない考えを表明したのは妥当だ。

政府は、非正規労働者の年金を充実させるため、パートらへの厚生年金の適用拡大を進めている。加入逃れが横行していては実効性は望めない。全ての対象者が確実に加入できるようにすべきだ。

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