シリア内戦の終結に向けた和平協議がジュネーブで始まった。国連の仲介で約2年ぶりだ。
7月までの移行政権樹立と来年半ばの選挙を経て、新政権を発足させる行程表の進め方を話し合う。
アサド政権と反体制派の相互不信は根強く、道のりは険しい。政権を支援するロシアと、反対する米国などの対立も影を落とす。紛争当事者が歩み寄るよう、国際社会が後押しすることが大切だ。
シリアには、敵対勢力の包囲で物資の供給が途絶え、飢餓状態に陥った住民が約40万人いるとされる。食糧や薬などを届ける人道目的の停戦を最優先すべきだ。
行程表は昨年11月、米露など関係国が合意した。過激派組織「イスラム国」の台頭や難民流出に歯止めをかけようとする国際社会の取り組みの成果と言えよう。
問題なのは、当事者が履行の意思を欠いていることである。
アサド政権は和平協議直前に反体制派に対する空爆を強化し、多くの拠点を奪還した。交渉を有利に進める狙いだろう。反体制派が空爆停止を求めたのは当然としても、実現まで実質協議を拒むというのでは空転は避けられない。
政権側と反体制派が同席せず、国連特使が双方を行き来して接点を探る。この現状は、協議が決裂しかねない危うさを象徴する。双方が粘り強く交渉の成果を積み上げていくことが欠かせない。
部分的な停戦でも合意できれば、信頼が醸成される。米国などが「イスラム国」掃討作戦に集中する効果も期待できる。
首都ダマスカス郊外で70人超が死亡した1月31日のテロで「イスラム国」が犯行声明を出した。協議の妨害を図った可能性がある。影響を最小限にとどめたい。
行程表では、アサド大統領の処遇は、棚上げされる。米国が「即時退陣」の主張を事実上、転換したのは、「イスラム国」の脅威増大による苦渋の決断だろう。
内戦で化学兵器を使用したアサド氏の続投は許されないが、退陣後の受け皿がないのは深刻だ。
5年前の民衆蜂起「アラブの春」でリビアやイエメンの長期独裁政権が倒れた後、権力の空白が生じ、テロや内戦を招いた経験を生かさねばならない。米露など関係国は、シリアの安定政権樹立の青写真作りで協力する必要がある。
ロシアと対立を深めるトルコは「露軍機が再び領空を侵犯した」と主張し、緊張が高まっている。両者は、地域の覇権争いを続けている場合ではあるまい。
7月までの移行政権樹立と来年半ばの選挙を経て、新政権を発足させる行程表の進め方を話し合う。
アサド政権と反体制派の相互不信は根強く、道のりは険しい。政権を支援するロシアと、反対する米国などの対立も影を落とす。紛争当事者が歩み寄るよう、国際社会が後押しすることが大切だ。
シリアには、敵対勢力の包囲で物資の供給が途絶え、飢餓状態に陥った住民が約40万人いるとされる。食糧や薬などを届ける人道目的の停戦を最優先すべきだ。
行程表は昨年11月、米露など関係国が合意した。過激派組織「イスラム国」の台頭や難民流出に歯止めをかけようとする国際社会の取り組みの成果と言えよう。
問題なのは、当事者が履行の意思を欠いていることである。
アサド政権は和平協議直前に反体制派に対する空爆を強化し、多くの拠点を奪還した。交渉を有利に進める狙いだろう。反体制派が空爆停止を求めたのは当然としても、実現まで実質協議を拒むというのでは空転は避けられない。
政権側と反体制派が同席せず、国連特使が双方を行き来して接点を探る。この現状は、協議が決裂しかねない危うさを象徴する。双方が粘り強く交渉の成果を積み上げていくことが欠かせない。
部分的な停戦でも合意できれば、信頼が醸成される。米国などが「イスラム国」掃討作戦に集中する効果も期待できる。
首都ダマスカス郊外で70人超が死亡した1月31日のテロで「イスラム国」が犯行声明を出した。協議の妨害を図った可能性がある。影響を最小限にとどめたい。
行程表では、アサド大統領の処遇は、棚上げされる。米国が「即時退陣」の主張を事実上、転換したのは、「イスラム国」の脅威増大による苦渋の決断だろう。
内戦で化学兵器を使用したアサド氏の続投は許されないが、退陣後の受け皿がないのは深刻だ。
5年前の民衆蜂起「アラブの春」でリビアやイエメンの長期独裁政権が倒れた後、権力の空白が生じ、テロや内戦を招いた経験を生かさねばならない。米露など関係国は、シリアの安定政権樹立の青写真作りで協力する必要がある。
ロシアと対立を深めるトルコは「露軍機が再び領空を侵犯した」と主張し、緊張が高まっている。両者は、地域の覇権争いを続けている場合ではあるまい。