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[日経新聞] 五輪を農漁業の競争力強化につなげよう (2016年02月02日)

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日本の消費者のほとんどは国産の食品は安全と思っている。しかし、残念ながらそれが通じるのは国内だけだ。欧米の流通大手に食品を売り込むときには多くの場合、各国で信用力を持つ安全認証が必要になる。農漁業の競争力を高め、食品輸出を伸ばすために認証への対応を急ぐべきだ。

2012年のロンドン五輪では選手村などへの食品供給で「農業生産工程管理(GAP)」の認証や、海洋環境や資源を守りながらとった水産物であることを示す「海洋管理協議会(MSC)」の認証などが条件になった。厳格な基準を設ける姿勢は今年のリオデジャネイロ五輪に引き継がれる。

GAPの認証は農産物の安全性はもちろん、農薬による水質汚染などを防ぐ対策や、生産者の労働環境など幅広いリスク管理を問う。環境保護に配慮した食品であるかどうかに厳しい目を向けるのは世界の潮流であり、その象徴が五輪での調達基準だ。

国内の対応は遅れている。MSC認証を取得できたのは北海道のホタテと京都のアカガレイ漁の2つだけだ。農産物も110カ国以上で普及する「グローバルGAP」の認証を取得した生産者は200ほどにすぎない。

日本の農家は国内の消費者を視野に食味や品質、見た目の美しさを訴求してきた。安全性に気を使っていても認証が求める生産履歴などの管理は浸透していない。まして環境対策などは視野の外だ。水産資源の管理ももっと厳格にすべきだ、との声は国内にも多い。

日本が食品輸出を伸ばすアジア地域でも、流通大手や外食チェーンが認証への対応を求めるようになる可能性は高い。海外市場を取り込もうとするのであれば認証への対応は急務といえる。

東京五輪の組織委員会は今年中にも食品の調達基準を示す見通しだ。政府や生産者団体の中には、できるだけ国産の食材を使える基準にすべきだとの声もある。

だが、これまでの五輪と比べ甘い基準を採用すれば、世界から「日本の現状はこんなものか」と失望を買うことになりかねない。

海外の認証を取得するコストなどが生産者の重荷であれば、日本独自の認証制度で対応する手もある。その場合は海外で普及する制度との整合性をとり、各国の信頼を得る取り組みが重要になる。せっかくの五輪開催だ。農漁業の競争力を高める機会にしてほしい。

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