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[日経新聞] 誰が米大統領でも困らぬパイプづくりを (2016年02月03日)

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米大統領選の予備選が始まった。米政治は保守とリベラルの二極分化が進み、11月の本選挙で二大政党のいずれが勝つかは予断を許さない。日本としては途中経過に一喜一憂することなく、誰が次期大統領になっても困らないパイプづくりをする必要がある。

米二大政党の候補者選びは混戦の様相だ。格差の拡大に不満を抱く中低所得層が極端な主張をする候補者に引き寄せられ、民主、共和両党の溝は深まる一方である。

どの候補も中国批判を不満のはけ口に用いることが多いが、日本も標的のひとつだ。共和党の実業家ドナルド・トランプ氏は日本が米国を守る義務を負わない日米安全保障条約を「安保のただ乗りで、不平等だ」と非難する。

そのトランプ氏が初戦アイオワ州でテッド・クルーズ上院議員に競り負けた。ほっとしてよいのだろうか。民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を除けば両党とも外交に詳しくない候補が並ぶ。米国民が内向き志向を強めていることの反映だ。誤解に基づく日本たたきは続くかもしれない。

安倍政権は米国のアジア専門家らを通じて日本の立場をきちんと伝える努力をこれまで以上にしなくてはならない。

クリントン氏は民主社会主義者を名乗るバーニー・サンダース上院議員を突き放せず、民主党指名候補の地位を固めるに至らなかった。本命視されていることに変わりないが、中道に置く軸足を左翼寄りに移すこともあり得る。

日本への影響が大きいのは環太平洋経済連携協定(TPP)への態度だ。クリントン氏は「賛成できない」と語る。「現時点では」との留保付きなので、いずれ賛成するとの見方が多いが、苦戦が続けば「絶対反対」と言わざるを得なくなる可能性がある。

自由貿易を掲げる共和党でも、オバマ政権と距離を置くためTPPに賛成していない候補が多い。アベノミクスの重要なエンジンであるTPPの発効が遅れる場合の対策は早めに練った方がよい。

国際政治学者のイアン・ブレマー氏は今回の米大統領選を「誰が勝とうと市場への影響は小さい」と分析する。米国は日本にとって重要な同盟国とはいえ、振り回されても仕方ない。

米国はなお超大国だが国力の衰えは否めない。それを補い、世界秩序安定の一翼を担う。日本の進むべき道ははっきりしている。

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