自動車、電機を皮切りに春闘の労使交渉が始まった。デフレ脱却を目指した大胆な金融緩和で円安の恩恵を受けた企業経営者が賃上げで応えなければ、好循環どころか経済は悪循環に陥りかねない。
日銀は「二年で2%」という物価上昇を狙った短期決戦が失敗し、日本では初めてとなるマイナス金利の導入に踏み切った。安倍政権が最初に放った三本の矢でただ一本、円安・株高で輸出企業などの収益を押し上げる効果を発揮した金融緩和策も色あせ始めている。
デフレ脱却の出口が見えてこないのはなぜか。
はっきりしている原因のひとつに伸びない賃金と個人消費の低迷がある。「企業業績は大幅に改善しているのに、賃上げが輸入物価の上昇に追いつかない」という消費低迷の説明が何度繰り返されてきただろう。
データを示すまでもない。物価上昇分を差し引いた二〇一五年の実質賃金は前年比0・9%減で四年連続の前年割れ。物価の上昇は続いており、消費者の節約志向に拍車がかかっている。
一方、経済界は輸出企業を中心にリーマン・ショック前を上回る水準の収益を享受している。今期(一六年三月期)は国際的な経済の不安定化で急ブレーキがかかっているものの、通期では増益基調を維持するとみられている。
好業績とこれまでにため込んだ巨額の内部留保を原資に、企業が賃上げと設備投資を実施し、国内総生産(GDP)の六割を占める個人消費が増え、景気を上向かせる。この経済の好循環を実現するには、今春闘で経営側が実質賃金の増加につながる水準の賃上げに踏み切ることが不可欠だ。
消費税が8%になってから消費意欲は低いまま。今年も賃金が伸びず、一年後に次の増税も控えているとなれば、誰が前向きに買い物をするだろうか。
このまま景気の低迷が続けば消費税増税の凍結を望む声が高まるだろう。仮に増税が見送りになれば、景気の「気」は上向くかもしれないが社会保障の財源論議は混乱し、将来不安がさらに長引く悪循環に陥りかねない。
企業には原油価格の急落によるコスト減や法人税減税など先行きにプラスの材料もある。春闘相場をリードするトヨタ自動車や日産のベア要求は昨年の獲得実績(トヨタ四千円、日産五千円)を下回る月三千円。経営陣は満額で応える気概をみせてほしい。
日銀は「二年で2%」という物価上昇を狙った短期決戦が失敗し、日本では初めてとなるマイナス金利の導入に踏み切った。安倍政権が最初に放った三本の矢でただ一本、円安・株高で輸出企業などの収益を押し上げる効果を発揮した金融緩和策も色あせ始めている。
デフレ脱却の出口が見えてこないのはなぜか。
はっきりしている原因のひとつに伸びない賃金と個人消費の低迷がある。「企業業績は大幅に改善しているのに、賃上げが輸入物価の上昇に追いつかない」という消費低迷の説明が何度繰り返されてきただろう。
データを示すまでもない。物価上昇分を差し引いた二〇一五年の実質賃金は前年比0・9%減で四年連続の前年割れ。物価の上昇は続いており、消費者の節約志向に拍車がかかっている。
一方、経済界は輸出企業を中心にリーマン・ショック前を上回る水準の収益を享受している。今期(一六年三月期)は国際的な経済の不安定化で急ブレーキがかかっているものの、通期では増益基調を維持するとみられている。
好業績とこれまでにため込んだ巨額の内部留保を原資に、企業が賃上げと設備投資を実施し、国内総生産(GDP)の六割を占める個人消費が増え、景気を上向かせる。この経済の好循環を実現するには、今春闘で経営側が実質賃金の増加につながる水準の賃上げに踏み切ることが不可欠だ。
消費税が8%になってから消費意欲は低いまま。今年も賃金が伸びず、一年後に次の増税も控えているとなれば、誰が前向きに買い物をするだろうか。
このまま景気の低迷が続けば消費税増税の凍結を望む声が高まるだろう。仮に増税が見送りになれば、景気の「気」は上向くかもしれないが社会保障の財源論議は混乱し、将来不安がさらに長引く悪循環に陥りかねない。
企業には原油価格の急落によるコスト減や法人税減税など先行きにプラスの材料もある。春闘相場をリードするトヨタ自動車や日産のベア要求は昨年の獲得実績(トヨタ四千円、日産五千円)を下回る月三千円。経営陣は満額で応える気概をみせてほしい。