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[読売新聞] アップル問題 テロ捜査と情報保護の両立を (2016年02月23日)

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捜査当局は、強制力を背景に、テロ容疑者の個人情報にどこまでアクセスできるのか。

米政府とアップル社の対立は、難しい問題を突きつけている。

米カリフォルニア州で昨年12月に14人が死亡した銃乱射テロの容疑者の「iPhone(アイフォーン)」を巡り、米連邦捜査局(FBI)がロック機能の解除をアップルに要請した。通信記録やメモなどを分析するのが目的だ。

これをアップルが拒否したことから、FBIは解除を命じるよう州連邦地裁に申し立て、地裁は解除命令を出した。

だが、アップルはなおも解除を拒否している。企業が司法の命令を突っぱねる異例の展開である。今後、本格的な法廷闘争に発展する公算が大きい。

容疑者は、ネットを通じて、過激派組織「イスラム国」の影響を受けていたとされる。FBIは、共謀者の有無など、事件の全容解明には、端末データの解析が不可欠とみているのだろう。

ロック機能は、正しい暗証番号を入力しなければ解除できない。ミスが10回続くと、内部データが消去される。パソコンにつないで機械的に入力することも、できない仕組みだという。

FBIは、容疑者の端末に限り、この設定を解除するソフトウェアの作成を要求している。本来なら容疑者本人に解除を命じるのが筋だが、警察に射殺されたことが、事態を複雑にしている。

「ソフトが悪用された場合、すべての端末のロック解除につながる危険がある」というのがアップルの見解だ。

ハッキングによる情報漏洩(ろうえい)が相次ぎ、情報技術(IT)企業には万全の情報保護策が求められている。それを考えれば、もっともな主張だと言えよう。グーグル、ツイッターなどのIT大手も、アップルの対応を支持している。

米国家安全保障局(NSA)による通信傍受が暴露された際、IT企業側が、当局に協力したとの批判にさらされた経験も影響しているのだろう。

アイフォーンなど、スマートフォンの技術は急速に進んでいる。データは暗号化され、アップルも個々の端末の暗証番号を把握していない。まず必要なのは、技術の進歩に対応した法整備である。

テロに対抗するには、捜査機関とIT企業の一定の協力は欠かせまい。テロ対策と個人情報の保護をいかに両立させるか。日本にとっても重要な課題である。

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