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[産経新聞] 【主張】英国とEU 離脱は世界の安定を乱す (2016年02月23日)

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英国のキャメロン首相が欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票実施を表明した。

EU首脳会議が、域内移民の抑制など英国が求めていた改革案を承認したのを受け、キャメロン氏は残留の立場から国民投票に臨む。

だが、離脱論は与党の保守党内にも広がっている。結果次第では、国家を超えた壮大な実験といわれてきたEUの危機を招く。

英国はドイツに次ぐ域内2位の経済大国であり、フランスとともに国連安全保障理事会の常任理事国を務める。離脱は経済、外交、安全保障のあらゆる面でEUに打撃を与えるからだ。

キャメロン氏はEUに留(とど)まり、中核国の役割を担う選択を行うよう指導力を発揮してほしい。

欧州を取り巻く情勢に目を向ければ、ロシアは米欧との対決姿勢を鮮明にしており、中東ではシリア内戦がやまず、過激組織「イスラム国」(IS)が跋扈(ばっこ)する。EUの存在感低下は、地域のみならず世界の安定を乱しかねない。

英国では、遅れてEUに加盟した東欧諸国などからの域内移民が急増し、雇用が奪われたとの不満が強い。非ユーロ圏でありながらユーロ危機に巻き込まれたこともEUへの懐疑論を強めた。

EU全体としても地中海を渡り押し寄せる難民問題に苦慮する。欧州諸国に流入した難民・移民数は昨年、100万人を超え、第二次大戦以来最大規模となった。

キャメロン氏は昨年5月の総選挙で、国民投票の実施を公約に掲げて勝利した経緯がある。国内世論を受けた対応だったのだろうが、英国民の不満のはけ口のように離脱を論じるべきではない。

だいいち、離脱後に英国が歩む姿は描き切れていない。経済面では、中国依存を高めることで埋め合わせようというのだろうか。

また、離脱は北部スコットランドにある独立論を再燃させ、英国としての一体性の維持にも困難な事態をもたらすだろう。

EUがまとめた改革案では、英国がユーロ圏の救済で負担を求められないことを確認するなど、不利益を受けないための保証が盛り込まれた。

英国は主権や独自性を重視し、欧州統合から一定の距離を置いてきた。さらに「特別な地位」を得たのであり、離脱回避の説得材料とすべきだろう。

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