慰安婦問題を解決していくためには冷静さが欠かせない。そのことを改めて心にとめておきたい。
国連の女性差別撤廃委員会が、昨年末の日韓合意を「被害者中心の立場に立っていない」と批判する最終見解を公表した。長い曲折の末にまとまった合意に理解を得られなかったことは残念だ。
委員会は、個人の資格で参加する専門家によって構成される。女性差別撤廃条約の精神にのっとって加盟国の状況を数年ごとに審査する。
審査対象国には厳しい意見を示すのが常だ。今回の最終見解では、夫婦同姓や女性の再婚禁止期間に関する民法規定も問題視された。もっともな指摘である。法的に従う義務があるわけではないが、自国の人権状況に対する外部の視線を知り、広い視野を持つことは有益だ。
しかし、慰安婦問題は日韓両国の国民感情を刺激しやすい。だからこそ合意は簡単ではなかった。日本政府は「極めて遺憾で受け入れられない」と反発し、委員会に抗議した。
ただ、委員会の性格を考えると、いささか過剰反応ではなかったか。
いま考えるべきは合意の誠実な履行である。
韓国政府は、元慰安婦らに合意内容を説明する作業を進めている。韓国世論の反発は根強いが、理解を示す元慰安婦も少なくはないという。
合意では、韓国政府が元慰安婦を支援する財団を設立し、日本政府が10億円を拠出することになっている。財団は「すべての元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」を担う。元慰安婦の意向を十分にくんだ意味のある事業にしてほしい。
慰安婦問題は人権に関連する多くの国連機関で取り上げられてきた。背景には、戦時下の女性の性的被害への関心が1990年代のユーゴ紛争を契機に高まったことがある。
各機関で定期的に行われる加盟国に対する審査では、今後も慰安婦問題が取り上げられるはずだ。
審査は、勝ち負けを争う場ではない。国際社会が慰安婦問題で日本に厳しい視線を向ける中、感情的な対応を取れば相手を硬化させてしまうだけだ。誤解があれば丁寧な説明を尽くす努力が必要だ。その際には第三者の視点を意識することが欠かせない。それが、日本に対する正しい理解を広めることにつながる。
安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パククネ)大統領はともに合意を守っていく姿勢を明確にしている。安倍首相は「職業としての娼婦(しょうふ)」と発言した自民党議員をたしなめ、朴大統領も1日の演説で改めて合意履行を訴えた。
信頼関係を基に日韓合意を誠実に履行する。その姿を国際社会に示していきたい。
国連の女性差別撤廃委員会が、昨年末の日韓合意を「被害者中心の立場に立っていない」と批判する最終見解を公表した。長い曲折の末にまとまった合意に理解を得られなかったことは残念だ。
委員会は、個人の資格で参加する専門家によって構成される。女性差別撤廃条約の精神にのっとって加盟国の状況を数年ごとに審査する。
審査対象国には厳しい意見を示すのが常だ。今回の最終見解では、夫婦同姓や女性の再婚禁止期間に関する民法規定も問題視された。もっともな指摘である。法的に従う義務があるわけではないが、自国の人権状況に対する外部の視線を知り、広い視野を持つことは有益だ。
しかし、慰安婦問題は日韓両国の国民感情を刺激しやすい。だからこそ合意は簡単ではなかった。日本政府は「極めて遺憾で受け入れられない」と反発し、委員会に抗議した。
ただ、委員会の性格を考えると、いささか過剰反応ではなかったか。
いま考えるべきは合意の誠実な履行である。
韓国政府は、元慰安婦らに合意内容を説明する作業を進めている。韓国世論の反発は根強いが、理解を示す元慰安婦も少なくはないという。
合意では、韓国政府が元慰安婦を支援する財団を設立し、日本政府が10億円を拠出することになっている。財団は「すべての元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」を担う。元慰安婦の意向を十分にくんだ意味のある事業にしてほしい。
慰安婦問題は人権に関連する多くの国連機関で取り上げられてきた。背景には、戦時下の女性の性的被害への関心が1990年代のユーゴ紛争を契機に高まったことがある。
各機関で定期的に行われる加盟国に対する審査では、今後も慰安婦問題が取り上げられるはずだ。
審査は、勝ち負けを争う場ではない。国際社会が慰安婦問題で日本に厳しい視線を向ける中、感情的な対応を取れば相手を硬化させてしまうだけだ。誤解があれば丁寧な説明を尽くす努力が必要だ。その際には第三者の視点を意識することが欠かせない。それが、日本に対する正しい理解を広めることにつながる。
安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パククネ)大統領はともに合意を守っていく姿勢を明確にしている。安倍首相は「職業としての娼婦(しょうふ)」と発言した自民党議員をたしなめ、朴大統領も1日の演説で改めて合意履行を訴えた。
信頼関係を基に日韓合意を誠実に履行する。その姿を国際社会に示していきたい。