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[産経新聞] 【主張】トルコ紙「接収」 露骨な言論弾圧許されぬ (2016年03月21日)

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中東の民主主義の手本ともいわれた国の「報道の自由」は、風前のともしびなのか。

トルコの裁判所が今月初め、政権に批判的な有力紙ザマンを政府が事実上、接収することを認めた。紙面は政権寄りに一変した。

決定に抗議する読者や従業員の家族ら数百人を警官隊は放水や催涙ガスで強制排除し、本社を制圧した。露骨な言論弾圧というしかない。憂慮すべき事態である。

与党・公正発展党(AKP)のダウトオール首相は「政府転覆を企てた相手に対する正当な措置だ」などと主張したが、到底、言葉通りには受け取れない。

裁判所が理由の詳細を明らかにしていないのもおかしい。

米政府は「トルコの憲法が重視する民主的価値を維持すべきだ」と批判し、欧州からも懸念の声が上がった。当然の反応だ。

ザマン紙接収の背景には、同紙と関係の深いイスラム教指導者ギュレン師とエルドアン大統領の対立があると指摘されるが、政治的動機があるとすれば、なおさら許されるものではない。

AKP政権は過去にも、記者を逮捕・拘束し、メディア自体の接収を行ってきたと批判されている。問題の根は深い。

トルコ情報機関によるシリアのイスラム過激派への武器輸送疑惑を伝えた左派系紙の編集局長はスパイ容疑で有罪判決を受けた。

昨年11月にトルコで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合で、政権に批判的なメディアへの取材許可証が拒否されたという。

こうした強権的な姿勢は、民主主義が根付いてきたトルコの社会を不安定化させる。

トルコは、シリアから流入した200万人を超える難民問題や、過激組織「イスラム国」(IS)とクルド反政府勢力によるテロ頻発という難局に直面している。

シリア内戦終結、難民、IS掃討という課題は各国が最優先で取り組むべきものだ。そのためには、トルコの安定と積極的な関与も不可欠である。国際社会はトルコが抱える問題の解決に協力しつつ、今回のような言論抑圧を容認してはなるまい。

AKPは力でなく、国民の声を聴く民主的な政権運営に立ち戻る必要がある。安倍晋三首相もエルドアン氏との良好な関係を生かし、働きかけを強めてほしい。

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