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[東京新聞] 人工知能 よき友になれそうだ (2016年03月21日)

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人工知能(AI)が囲碁の世界で最強といわれるプロ棋士に勝ち越した。進歩の早さに驚くが、警戒する必要はない。AIを使うのは人間だ。賢い友を得たと考え、うまく付き合っていきたい。

グーグル傘下の人工知能開発ベンチャー「ディープマインド」(英国)の囲碁ソフト「アルファ碁」が、世界最強ともいわれる韓国人プロ棋士李世ドル(イセドル)九段と対戦、四勝一敗で圧勝した。

コンピューターは計算が得意で間違わない。以前から終盤はコンピューターの方が上とされた。それでも、囲碁に必要な直感や大局観は難しく、プロに勝つのは十年先という予想もあった。

技術の進歩は直線的ではなく、時に大きくジャンプする。アルファ碁はディープラーニング(深層学習)という技術で、自ら過去の棋譜を学習し、能力を飛躍的に高めた。学習から得た大局観が、プロ棋士と同じかどうかは、今回の五局ではまだ不明だ。

井山裕太・六冠は「アルファ碁の優れた部分もあるが、人間の方が優れた部分もあると感じた」と感想を話している。

勝敗ばかりが注目されるが、今回の五局の棋譜は、人間とAIが作った作品だ。これから多くのプロによって研究されるだろう。トッププロでも思い付かない手があったのか。AIも間違えることがあったようだが、どんなときにミスをするのか。興味は尽きない。

いつもと違う相手との対戦は飛躍のきっかけになる。たとえば、碁の布石の一つに中国流がある。江戸時代、日本で生まれたが、五十年前の日中囲碁交流で注目され、逆輸入されたという。

対戦の賞金は百万ドル(約一億一千百万円)。アルファ碁は賞金をほしがらない。グーグルは国連児童基金(ユニセフ)などに寄付をするという。AIは使う人間次第なのだ。

「徒然草」には「よき友に三つあり」として(1)物くるる友(2)医師(3)知恵ある友−を挙げている。アルファ碁は物くるる友であり、知恵ある友だ。いい友だちになれそうではないか。

ディープマインド社にお願いがある。井山六冠らとも対戦してほしい。それは新しい碁の世界を切り開く可能性を秘める。

初心者を指導するソフトも開発してほしい。的確で、文句も言わず、いつでも、何度でも教えてくれるのなら理想の教師だ。知育にも、ぼけ防止にも役立つ。二回に一回は負けてほしいが。

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