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[毎日新聞] 京都に文化庁 東京集中正す突破口に (2016年03月23日)

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政府は国機関の地方移転に関する基本方針を決めた。中央省庁に関しては、文化庁を京都府に数年以内に移転する。消費者庁、総務省統計局を移転するかについては結論を先送りした。

伝統文化の蓄積した京都に文化庁を移す判断は理解できるが、東京集中を是正する政府の決意が伝わったとは言いがたい。文化庁移転を突破口として、国の行政組織のあり方についてさらに踏み込んだ見直しを求めたい。

安倍内閣は地方創生の一環として都道府県から要望を募る形で中央省庁や政府系研究機関などの移転を検討してきた。中央省庁は7機関が検討対象となった。

文部科学省の外局である文化庁は文化財を用いた観光戦略の強化などの観点から、一部機能を東京に残しての京都移転が有効と判断された。関西地域の発信力アップにも寄与する結論といえよう。

政府は協議会を設け、移転に伴う組織改革案を年内にまとめる。文化庁は文化財保護にとどまらず、著作権や宗教法人など幅広い領域の行政を所管する。東京に残す機能の確定などに万全を期す必要がある。

これまで不十分との指摘もあった文化行政全般の拡充に京都移転をつなげていく発想が欠かせない。政府は移転を機に、地方文化の多様性を従来以上に尊重していくと説明している。こうした視点を実際に反映できるかで、移転の意義が試される。

一方、消費者庁の徳島県、総務省統計局の和歌山県への移転は8月末までに移転試行実験の結果などを踏まえて判断する。消費者庁移転は消費者行政に支障を来さないよう、慎重な判断を改めて求めたい。

他の道府県などから要望があった観光庁や中小企業庁など4機関の移転は見送られた。政府は代替策として関係省庁の地方出先機関を拡充する方針を示すが、これは地方移転とまったく異なるアプローチだ。地方重視にかこつけて組織を膨らませるようでは行革にも逆行する。

政府系研究機関の移転は23機関が対象となったが、ほとんどは一部機能の移転にとどまる。一極集中の構造にメスを入れたとは言えまい。

国機関の移転は本来、国が首都直下地震などに備え危機管理として取り組むべき課題だ。地方から要望がなくても、移転にふさわしい機関が他にもあったはずだ。

国機関の見直しを地方の活性化につなげるのであれば、国と地方の役割を再点検し、中央官庁の地方出先機関を権限とともに地方に移譲することも有力な選択肢となろう。文化庁移転で国機関の見直しを打ち止めにしてはならない。

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