中東から欧州への大量難民の「出口」となっているトルコと、欧州連合(EU)が密航した難民らの送還について新たな枠組みに合意した。
欧州には昨年来、100万人以上の難民が押し寄せ、エーゲ海を渡る水難事故では多数の犠牲が出ている。
ドイツのメルケル首相は合意後、「危険な道を選ぶ者は命を危険にさらすだけでなく成功の見通しもない」と表明した。
密航を思いとどまらせ、違法なボート業者の跋扈(ばっこ)を阻止する狙いだ。欧州への無秩序な難民流入と多くの悲劇を考慮すれば、やむを得ない措置といえよう。
合意では、今月20日以降にトルコからギリシャに不法に渡った難民や移民を送り返す代わりに、EUは、「密航を試みたことのないシリア難民」を同じ人数だけトルコから受け入れる。
EUは見返りに、トルコへの難民支援金を60億ユーロ(約7600億円)に倍増させ、トルコ国民のEUへのビザ(査証)免除措置の検討を前倒しする。
だが、これだけではトルコにとどまる大量の難民の問題は解決しない。EUでは昨年、難民受け入れに積極的なドイツなどと、反対する国々の対立も表面化した。
EUとトルコは緊密な協力体制を取り、今回の合意を難民危機打開への第一歩としてもらいたい。国際社会も、難民の人道状況改善に向けて、いっそうの支援を考えるべきだ。
テロの土壌を絶つ上でも、こうした支援は必要だ。
残された課題も多い。イラクなどからの難民はEUの正式受け入れの対象外とされた。別のルートで欧州を目指す難民が増える事態を防げるのか。
トルコは自国内のキャンプで、国連機関による難民登録に協力していない。合意履行を順調に進めるためにも、トルコはその関与を認めるべきだ。
難民を生む最大の原因であるシリア内戦の収拾がもっとも重要であることは言をまたない。各国が国連主導の和平協議で強く各勢力に妥協を迫り、しっかりとした統治能力のある新政権樹立へとつなげることが不可欠である。
中長期的にみればアジアでも難民危機が起きる恐れはある。日本も人ごとではない。そうした観点から欧州やトルコの対応を政府は注視する必要があろう。
欧州には昨年来、100万人以上の難民が押し寄せ、エーゲ海を渡る水難事故では多数の犠牲が出ている。
ドイツのメルケル首相は合意後、「危険な道を選ぶ者は命を危険にさらすだけでなく成功の見通しもない」と表明した。
密航を思いとどまらせ、違法なボート業者の跋扈(ばっこ)を阻止する狙いだ。欧州への無秩序な難民流入と多くの悲劇を考慮すれば、やむを得ない措置といえよう。
合意では、今月20日以降にトルコからギリシャに不法に渡った難民や移民を送り返す代わりに、EUは、「密航を試みたことのないシリア難民」を同じ人数だけトルコから受け入れる。
EUは見返りに、トルコへの難民支援金を60億ユーロ(約7600億円)に倍増させ、トルコ国民のEUへのビザ(査証)免除措置の検討を前倒しする。
だが、これだけではトルコにとどまる大量の難民の問題は解決しない。EUでは昨年、難民受け入れに積極的なドイツなどと、反対する国々の対立も表面化した。
EUとトルコは緊密な協力体制を取り、今回の合意を難民危機打開への第一歩としてもらいたい。国際社会も、難民の人道状況改善に向けて、いっそうの支援を考えるべきだ。
テロの土壌を絶つ上でも、こうした支援は必要だ。
残された課題も多い。イラクなどからの難民はEUの正式受け入れの対象外とされた。別のルートで欧州を目指す難民が増える事態を防げるのか。
トルコは自国内のキャンプで、国連機関による難民登録に協力していない。合意履行を順調に進めるためにも、トルコはその関与を認めるべきだ。
難民を生む最大の原因であるシリア内戦の収拾がもっとも重要であることは言をまたない。各国が国連主導の和平協議で強く各勢力に妥協を迫り、しっかりとした統治能力のある新政権樹立へとつなげることが不可欠である。
中長期的にみればアジアでも難民危機が起きる恐れはある。日本も人ごとではない。そうした観点から欧州やトルコの対応を政府は注視する必要があろう。