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[産経新聞] 【主張】最高裁が謝罪へ 過ち認めるに躊躇するな (2016年04月02日)

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ハンセン病患者の裁判を隔離先の療養所などに設置した「特別法廷」で開いていた問題で、最高裁が手続きに不適切な点があったとして元患者に謝罪する方向で調整しているという。

特別法廷は療養所や隣接する刑務所、拘置所などで昭和23年から47年まで、95件も開かれた。病気に対する無知や偏見が根底にあったことは否定できまい。

わずか44年前まで「隔離法廷」が存在したことに、今更ながら驚く。遅きに失した感はあるが、過ちを認め、元患者らに謝罪すべきは当然である。

寺田逸郎最高裁長官を含む15人の裁判官全員で構成される裁判官会議で近く決定し、報告書を公表する見込みだ。

最高裁が設置した外部の有識者委員会も「違法だった可能性がある」との意見を伝えており、最高裁の報告書にはそれぞれの見解が併記される。

最高裁は真摯(しんし)な謝罪を、いわれなき差別感情の根絶や、偏見の是正に結びつけてほしい。それこそ司法の責務であろう。

裁判所法は、災害などの緊急時には最高裁が必要と認めれば外部で法廷を開けると規定している。ハンセン病患者の特別法廷はこの規定を根拠とし、地裁や高裁からの申請を、当時の最高裁事務総局が個別に深く検討することなく許可してきたものとみられる。

ハンセン病問題をめぐっては、平成13年5月に熊本地裁判決が強制隔離政策を違憲と判断し、当時の小泉純一郎首相が「政府として深く反省し率直におわびする」と談話を発表した。衆参両院も同年6月の決議で「隔離政策の継続を許してきた責任」を認めた。

最高裁が謝罪に踏み切れば、三権の全てが責任を認めることになる。元患者らは、行政、立法、司法によっても醸成された社会の差別意識に苦しめられてきた。

いや、報道がこれを助長することはなかったか。その反省と検証も欠かせない。

ハンセン病はかつて「らい病」の名で呼ばれたが、差別感情を呼ぶなどとして、現在は新聞でも基本的に使わない。「業病」としてこれを扱う小説や映画もあったが、全くの誤りである。

ハンセン病は、感染力が極めて弱く、治療法も確立している。この機に改めて、その認識の周知を徹底したい。

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