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[読売新聞] 国立公文書館 生の歴史に触れられる施設に (2016年04月04日)

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日本の歩みを伝える公文書は、国民の貴重な財産である。それを収集・保管する東京の国立公文書館を充実させることは政府の大切な責務だ。

内閣府の有識者会議が、新たな国立公文書館の基本構想をまとめた。これを受け、衆院議院運営委員会の小委員会が建設地の選定を始める。早期決定を望みたい。

候補地に挙がったのは、国会近くの憲政記念館を含む一角と、国会参観者用のバス駐車場だ。

このうち、老朽化した憲政記念館を解体し、新築する施設に国立公文書館を同居させる案が有力視されている。十分な面積を確保できることが最大の要因だ。

北の丸公園にある現在の公文書館本館は、1万1550平方メートルと手狭だ。本館と茨城県つくば市の分館を合わせた収納スペースは2019年度にも満杯となる。

新公文書館の建設が遅れれば、民間の書庫を一時的に借りることを検討せざるを得ない。そうなると、公文書の管理体制などに不安が生じるのではないか。

欧米諸国と比べて、現在の公文書館がハード、ソフトの両面で著しく見劣りすることは否めない。館内の書架は総延長72キロ・メートルで、米国の1400キロ、英国の200キロなどに遠く及ばない。

こうした点を踏まえ、基本構想は、新公文書館の広さについて、4万?5万平方メートル程度が望ましいと提言した。温度や湿度の管理を徹底した展示スペースの確保を求めたのも、重要なポイントだ。

現在の公文書館では、日本国憲法など貴重な公文書の原本については通常、レプリカの展示にとどまる。原本を常時展示すると、不十分な空調などにより、傷みが生じる恐れがあるためだ。

生の公文書がいつでも見られるようになれば、歴史の重要な局面に触れる機会が格段に増える。

アーキビストと呼ばれる文書管理の専門家を育成するため、基本構想が公的資格制度の導入を求めた点も、実現に移したい。

専門知識を生かして、興味深い展示を企画する。来館者から寄せられる要望に、的確に応える。こうしたスタッフの配置を充実させれば、公文書館が国民にとって、より身近な存在になるだろう。

文書をデジタル化し、地方の関連施設などと結ぶ検索・閲覧システムを構築することも、利用者の利便性向上につながる。

厳しい財政状況の中、公文書館の機能を一足飛びに拡充させるのは困難だ。基本構想の理念を尊重した施策を着実に進めたい。

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