政治頼み、行政頼みを続けてきた業界が自分の力で新たな需要を創造し、市場の縮小を跳ね返す契機になるのだろうか。都内最大手の日本交通が東京23区のタクシーの初乗り料金を現在の「2キロメートルまで730円」から「約1キロまで410円」に引き下げる変更申請を国土交通省に提出した。
これまで上がりこそすれ、逆はほとんどなかったタクシー料金の引き下げは乗客にとって朗報だ。環境が厳しい中であえて料金下げで需要喚起をめざす日本交通の攻めの経営姿勢にも注目したい。
高齢化が進めば「最寄りの駅から近くの病院まで」といった短距離のタクシー利用が増えるだろう。ワンコイン以下の初乗り料金で割安感を出し、「チョイ乗り」需要を発掘して、市場のパイを広げるのが同社の狙いである。
外国人観光客からの「日本のタクシーは初乗り料金が高い」という不満にも応える。例えばニューヨークの「イエローキャブ」の初乗りは2.5ドル(約270円)。チップを含めて考えると、東京で410円まで下げればそれほど変わらない水準になり、乗客の裾野拡大につながる可能性がある。
地域密着型のタクシー業界は一定の政治力があり、経営が厳しくなると、政治や行政に保護を求めるのが常だった。その結果、新規参入を制約する規制強化策が実施され、値上げも繰り返された。それが乗客のタクシー離れを招き、年間の延べ利用客数は過去10年で5億人近く減った。
今回の料金改定を主導する日本交通の川鍋一朗会長は創業家の3代目で、タクシー業界の「改革派」として知られる。「従来の手法を続けるだけでは、先細りが避けられない」という危機感が今回の決断の背景にある。
ただ、実際に23区の初乗り料金下げが実現するためには、車両台数ベースで域内の7割以上のタクシー会社が同様の料金改定を申請することが必要だ。日本交通の発案に他の経営者がどこまで賛同するのか、業界の本気度が問われる局面だ。
タクシー改革と並んで、自家用車を使って有償で人を運ぶ「ライドシェア」の普及も今後の課題である。この分野の先駆けの米ウーバー日本法人はまずタクシーなどのない公共交通の空白地域でサービスを定着させたい考えだ。多様な取り組みを加速することで、より便利な社会をめざしたい。
これまで上がりこそすれ、逆はほとんどなかったタクシー料金の引き下げは乗客にとって朗報だ。環境が厳しい中であえて料金下げで需要喚起をめざす日本交通の攻めの経営姿勢にも注目したい。
高齢化が進めば「最寄りの駅から近くの病院まで」といった短距離のタクシー利用が増えるだろう。ワンコイン以下の初乗り料金で割安感を出し、「チョイ乗り」需要を発掘して、市場のパイを広げるのが同社の狙いである。
外国人観光客からの「日本のタクシーは初乗り料金が高い」という不満にも応える。例えばニューヨークの「イエローキャブ」の初乗りは2.5ドル(約270円)。チップを含めて考えると、東京で410円まで下げればそれほど変わらない水準になり、乗客の裾野拡大につながる可能性がある。
地域密着型のタクシー業界は一定の政治力があり、経営が厳しくなると、政治や行政に保護を求めるのが常だった。その結果、新規参入を制約する規制強化策が実施され、値上げも繰り返された。それが乗客のタクシー離れを招き、年間の延べ利用客数は過去10年で5億人近く減った。
今回の料金改定を主導する日本交通の川鍋一朗会長は創業家の3代目で、タクシー業界の「改革派」として知られる。「従来の手法を続けるだけでは、先細りが避けられない」という危機感が今回の決断の背景にある。
ただ、実際に23区の初乗り料金下げが実現するためには、車両台数ベースで域内の7割以上のタクシー会社が同様の料金改定を申請することが必要だ。日本交通の発案に他の経営者がどこまで賛同するのか、業界の本気度が問われる局面だ。
タクシー改革と並んで、自家用車を使って有償で人を運ぶ「ライドシェア」の普及も今後の課題である。この分野の先駆けの米ウーバー日本法人はまずタクシーなどのない公共交通の空白地域でサービスを定着させたい考えだ。多様な取り組みを加速することで、より便利な社会をめざしたい。