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[朝日新聞] ブラジル政治 国内の安定が最優先だ (2016年04月14日)

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リオデジャネイロ五輪を夏に控えたブラジルで、政治が混迷の度合いを深めている。

政府会計の粉飾に関与したとして、ルセフ大統領に対する弾劾(だんがい)手続きが議会で進む。大統領の職務停止や罷免(ひめん)の可能性も、現実味を帯びてきた。

背景には、深刻な不況や政権がからんだ汚職疑惑への市民の不満がある。大統領の退陣を求めるデモも起きており、治安の悪化も心配されている。

大統領や政府は、自らの政治的延命ではなく、何よりも国内の安定確保に向けて全力を尽くすべきだ。

混乱は政争の側面も強く、大統領側にも言い分はあるに違いない。しかし、行き詰まりが続くなら、潔く身を引いて収拾を図る選択肢も考慮すべきだ。

経済の不振に伴う政治の不安定化は、ブラジルに限らず、多くの新興国が抱える問題だ。各地に混乱が広がらないよう日米欧も知恵を出し合いたい。

ブラジルでは、穏健左派政権を2011年に引き継いだルセフ大統領が、サッカーのワールドカップ(W杯)や五輪の準備を進めた。しかし鉄鉱石を含む資源価格の下落などが響き、市民生活の向上や格差是正が進まず、世論の反発が強まった。

14年のW杯の際は、競技場建設への投資がかさんで福祉や教育が置き去りにされたとして、開催に反対する大規模なデモやストを招いた。

その批判は現在も収まっていない。加えて、国営石油会社から与党政治家らに裏金が渡っていた疑惑も持ち上がった。

大統領の支持率は10%前後と低迷し、閣僚や議員の離反が相次いでいる。

早ければ17日にも下院本会議で投票がある。下院が3分の2以上、上院が半数以上で弾劾に賛成すれば、大統領は職務停止に追い込まれる。大統領は対決姿勢をあらわにし、議員たちの説得工作に必死だ。

しかし、それは権力にしがみつく姿に他ならない。ブラジルに必要なのは、南米を代表する新興国の地位にふさわしい民主政治の成熟だ。五輪人気にあやかることなく粛々と国民生活を向上させる責務を果たし、批判にも誠実に応える態度が政権には欠かせない。

それは他の新興国も同様だ。ここ数年の停滞以前に急成長を遂げた中国やロシア、インドなどで、民主化や人権の尊重、自由な市民社会の形成が後回しにされてこなかっただろうか。

いま一度問い直し、現状を見つめ、国家のあり方を議論する時期に差しかかっている。

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