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[読売新聞] デジタル教科書 「紙」の補助的役割にとどめよ (2016年04月30日)

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学習効果や健康への影響が十分に検証されていないまま、教科書のデジタル化に道を開くことには疑問を禁じ得ない。

文部科学省の有識者会議が、2020年度をめどに小中高校でデジタル教科書の使用を認める報告案を示した。

当面は、現行の紙の教科書と併用するものの、将来的には、「紙」か「デジタル」かを選べる選択制の導入も検討するとしている。

タブレット型の情報端末に教科書のデータを取り込んだのが、デジタル教科書だ。図面や写真を拡大したり、文章や線を何回も書き込めたりする機能を備え、インターネットにも接続できる。

例えば、理科で宇宙や人体の仕組みを学ぶ際、デジタル教科書を使い、写真で視覚に訴える授業を行うことを想定している。

情報技術の進展に伴い、デジタル技術を活用した教材の開発が進んでいるのは確かだ。そうした教材を使った学校で、子供たちの関心が高まったという声も聞く。

だが、それらはあくまで、学習の基盤となる教科書を補助する副教材だ。「紙」との併用が基本とはいえ、教科書自体をデジタル化する必要は本当にあるのか。

書き込み機能を使わせると、どんな色や太さの線を選ぶかに子供たちの意識が向きがちだとの指摘がある。教科書の内容の理解が浅くなっては元も子もない。

端末をネットに接続して、調べものをする場合、次から次へとサイトをたどるうちに、本来の目的を見失う恐れがある。自分の頭でじっくり考える力の育成にはつながらないのではないか。

学校などがきちんと管理していないと、有害情報にアクセスする事態も起こりかねない。

デジタル教科書を自宅に持ち帰るようになれば、子供たちがその操作に没頭し、本を読む時間が減少することも懸念される。

教科書検定に関して報告案は、「紙」と「デジタル」の内容を同じにすることで、「紙」だけで済ませるという。デジタル教科書の端末に追加機能として入れる音声や動画は、検定対象としない。

追加機能の内容のチェックは、教科書を選定する教育委員会などに委ねる方向のようだが、きちんと質を確保できるのだろうか。

有識者会議は、財政的な観点から、デジタル教科書の無償配布は困難としている。仮に保護者の負担となれば、低所得層への配慮が欠かせない。

様々な課題があるだけに、文科省には慎重な検討を求めたい。

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