香港の雨傘運動を主導した若者らが新党を旗揚げした。社会を分断させた運動の挫折を「未来への闘争の一過程」と総括した。反省を踏まえ、民衆と共に真の民主を勝ち取る戦いを続けてほしい。
二〇一四年の雨傘運動で民主派学生らの先頭に立った一人、羅冠聡氏(22)を党首として四月上旬に新党・香港衆志が結成された。羅氏らは「香港の未来のために過激でも保守でもない選択肢を有権者に示していきたい」と述べた。
雨傘運動は非暴力を貫いたが警察の強制排除を招き、社会や経済を混乱させた。民主を尊重する市民感情も分断させた。その反省に立つ穏健現実路線と評価したい。
最近の香港は一九九七年の中国への返還以降、国際公約であるはずの「一国二制度」が最悪の危機に直面しているといえる。
中国指導者を批判する本を出版した書店関係者が失踪し、中国当局による連行が疑われる。だが、香港に一時戻った書店関係者自身が批判本出版に反省の弁を述べ、中国の関与を否定した。
多くの香港人は勇敢であった言論人の態度の変化に違和感を覚え、中国の関与を疑っている。後世振り返ると、軍事と外交以外は五十年間不変とされた「高度な自治」が踏みにじられた、象徴的な出来事として記録されかねない。
中国政府の強硬路線への転換以上に気がかりなのは、香港の過激な急進民主派の台頭である。むろん、雨傘運動の挫折が招いた民主派内の揺り戻しの面もある。
だが、香港こそが「本土」だと主張して公然と香港独立を掲げ、敵対勢力には武力行使も辞さない活動は、香港の健全な民主を守ろうとする姿勢とはほど遠い。逆に、中国政府の香港統制を厳しくするだけではないだろうか。
香港衆志は独立も選択の一つとしながら、十年以内の住民投票で香港の未来像を決める方針を打ち出した。九月の立法会(議会)選挙には候補者を擁立する方針だ。
学生らが香港占拠の直接行動で長官選民主化を訴えた雨傘運動は、その純粋さゆえに香港市民の心をとらえた。だが、民主派議員との連携を欠いた面もある。
羅氏は運動一周年の昨年秋、本紙の取材に「権力に反対する声が生まれるのは、民主的メカニズムが健全に発展している証しだ」と述べた。ひるまず真の民主を求める姿勢は頼もしい。新党はより多くの民衆の共感が得られるよう活動のウイングを広げてほしい。
二〇一四年の雨傘運動で民主派学生らの先頭に立った一人、羅冠聡氏(22)を党首として四月上旬に新党・香港衆志が結成された。羅氏らは「香港の未来のために過激でも保守でもない選択肢を有権者に示していきたい」と述べた。
雨傘運動は非暴力を貫いたが警察の強制排除を招き、社会や経済を混乱させた。民主を尊重する市民感情も分断させた。その反省に立つ穏健現実路線と評価したい。
最近の香港は一九九七年の中国への返還以降、国際公約であるはずの「一国二制度」が最悪の危機に直面しているといえる。
中国指導者を批判する本を出版した書店関係者が失踪し、中国当局による連行が疑われる。だが、香港に一時戻った書店関係者自身が批判本出版に反省の弁を述べ、中国の関与を否定した。
多くの香港人は勇敢であった言論人の態度の変化に違和感を覚え、中国の関与を疑っている。後世振り返ると、軍事と外交以外は五十年間不変とされた「高度な自治」が踏みにじられた、象徴的な出来事として記録されかねない。
中国政府の強硬路線への転換以上に気がかりなのは、香港の過激な急進民主派の台頭である。むろん、雨傘運動の挫折が招いた民主派内の揺り戻しの面もある。
だが、香港こそが「本土」だと主張して公然と香港独立を掲げ、敵対勢力には武力行使も辞さない活動は、香港の健全な民主を守ろうとする姿勢とはほど遠い。逆に、中国政府の香港統制を厳しくするだけではないだろうか。
香港衆志は独立も選択の一つとしながら、十年以内の住民投票で香港の未来像を決める方針を打ち出した。九月の立法会(議会)選挙には候補者を擁立する方針だ。
学生らが香港占拠の直接行動で長官選民主化を訴えた雨傘運動は、その純粋さゆえに香港市民の心をとらえた。だが、民主派議員との連携を欠いた面もある。
羅氏は運動一周年の昨年秋、本紙の取材に「権力に反対する声が生まれるのは、民主的メカニズムが健全に発展している証しだ」と述べた。ひるまず真の民主を求める姿勢は頼もしい。新党はより多くの民衆の共感が得られるよう活動のウイングを広げてほしい。