フィリピンでマルコス独裁を倒した「ピープルパワー革命」から30年。この間、大統領を務めた5人の強みは、家柄、清廉さ、実績とさまざまだった。
今週の大統領選で勝利したロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)が国民を引き寄せた持ち味は、その剛腕ぶりだろう。
ミンダナオ島のダバオ市長を長く務め、治安を改善した功績が知られる。犯罪者を暗殺する組織を操った疑いも取りざたされるが、荒療治でも結果を出す手法が支持を得た。
この国では今も海外出稼ぎが経済を支え、貧富の格差が激しい。ドゥテルテ氏が「犯罪者はマニラ湾の魚のえさにする」などと暴言を繰り返しても、むしろ有権者は留飲を下げつつ実行力への期待を高めた。
アキノ現大統領が後継指名したエリート政治家の支持は伸び悩み、ドゥテルテ氏は中央政権での経験がないことが逆に有利になった。世界的に広がる既成政治への不満が、フィリピンでも表れたといえる。
アキノ政権は決して無策だったわけではなく、むしろ評価に値する。汚職摘発や財政立て直し、規制緩和を進めた。経済成長率は6%前後を維持し、かつての「アジアの病人」の汚名を返上したとも言われる。
1人当たり国内総生産が3千ドル水準になった今こそ正念場だ。ドゥテルテ氏は、成長の流れに水を差すことなく、国民への豊かさの分配を実現するためのかじ取りが求められる。
人口は1億を突破し、若年層が厚い。全国に目配りしたインフラ整備に注力し、雇用を増やすことが急務だ。日本からの開発援助や民間の投資も、大いに役立つだろう。
各国が注目する懸案の一つは南シナ海問題である。スプラトリー(南沙)諸島で中国が埋め立てを進め、フィリピンの漁船は中国公船との緊張に悩まされてきた。
これに対しアキノ政権は対米関係を強めるとともに、中国の領有権主張は不当として、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。
国際法に沿って冷静な解決を探る限り、フィリピンの対応は国際社会から理解される。力まかせの海洋進出がめだつ中国と向き合うのは難題だが、細心の外交努力を続けてもらいたい。
目指すべきは平和で自由な南シナ海である。ドゥテルテ氏は選挙運動中、「水上バイクで中国の人工島に旗を立てる」と発言したが、今後は不用意な言動を慎み、堅実な政治指導者として国家運営に臨んでほしい。
今週の大統領選で勝利したロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)が国民を引き寄せた持ち味は、その剛腕ぶりだろう。
ミンダナオ島のダバオ市長を長く務め、治安を改善した功績が知られる。犯罪者を暗殺する組織を操った疑いも取りざたされるが、荒療治でも結果を出す手法が支持を得た。
この国では今も海外出稼ぎが経済を支え、貧富の格差が激しい。ドゥテルテ氏が「犯罪者はマニラ湾の魚のえさにする」などと暴言を繰り返しても、むしろ有権者は留飲を下げつつ実行力への期待を高めた。
アキノ現大統領が後継指名したエリート政治家の支持は伸び悩み、ドゥテルテ氏は中央政権での経験がないことが逆に有利になった。世界的に広がる既成政治への不満が、フィリピンでも表れたといえる。
アキノ政権は決して無策だったわけではなく、むしろ評価に値する。汚職摘発や財政立て直し、規制緩和を進めた。経済成長率は6%前後を維持し、かつての「アジアの病人」の汚名を返上したとも言われる。
1人当たり国内総生産が3千ドル水準になった今こそ正念場だ。ドゥテルテ氏は、成長の流れに水を差すことなく、国民への豊かさの分配を実現するためのかじ取りが求められる。
人口は1億を突破し、若年層が厚い。全国に目配りしたインフラ整備に注力し、雇用を増やすことが急務だ。日本からの開発援助や民間の投資も、大いに役立つだろう。
各国が注目する懸案の一つは南シナ海問題である。スプラトリー(南沙)諸島で中国が埋め立てを進め、フィリピンの漁船は中国公船との緊張に悩まされてきた。
これに対しアキノ政権は対米関係を強めるとともに、中国の領有権主張は不当として、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴した。
国際法に沿って冷静な解決を探る限り、フィリピンの対応は国際社会から理解される。力まかせの海洋進出がめだつ中国と向き合うのは難題だが、細心の外交努力を続けてもらいたい。
目指すべきは平和で自由な南シナ海である。ドゥテルテ氏は選挙運動中、「水上バイクで中国の人工島に旗を立てる」と発言したが、今後は不用意な言動を慎み、堅実な政治指導者として国家運営に臨んでほしい。