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[読売新聞] 北朝鮮新体制 時代錯誤の偶像化では続かぬ (2016年05月11日)

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指導者が自らを偶像化し、粛清の恐怖で求心力を保つ。そんな時代錯誤の統治を進める意思が鮮明になった。

36年ぶりに開かれていた北朝鮮の朝鮮労働党大会は、金正恩第1書記が新設の「党委員長」に就任することを決め、閉幕した。金委員長は、軍から党に軸足を移す政治姿勢を打ち出した。

肩書の変更には、新時代の到来とともに、「党中央委員長」だった祖父である金日成主席の専制政治を踏襲することを国民に印象付ける狙いがある。

党人事では、黄炳瑞軍総政治局長、崔竜海党書記を最高幹部の政治局常務委員に配するなど、側近を重用した。高齢の金永南最高人民会議常任委員長を常務委員にとどめた。体制が不安定になるような世代交代は避けたのだろう。

看過できないのは、党大会で行った事業総括報告で、核開発と経済建設の「並進路線」について、「恒久的に堅持し、核武力を強化する」と宣言したことだ。

この路線は党規約に盛り込まれた。投資環境の整備も政策に掲げたが、核開発と矛盾はないか。

国際社会は、北朝鮮の核保有の既成事実化を許してはいない。北朝鮮に核放棄を迫る制裁を厳格に履行することが肝要である。

金委員長は、北朝鮮が「責任ある核保有国」として「世界の非核化に努力する」とも強調した。国際合意や国連安全保障理事会の決議を幾度も無視しておきながら、「努力」とはおこがましい。

米国には、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換させるよう求めた。軍事的に対峙(たいじ)する韓国に対しても、関係改善が必要だとして、軍当局間の協議を呼びかけた。米韓が相手にするはずがない。

党大会は、金委員長への個人崇拝を進める機会ともなった。

党幹部が業績をたたえる場面がテレビ放映され、大規模な祝賀パレードが行われた。党機関紙は、金主席の「太陽」という喩(たと)えを踏まえ、金委員長を「21世紀の偉大な太陽」と形容した。

金委員長は、国民にとって切実な経済分野で、具体策を示せなかった。2020年までの「国家経済発展5か年戦略」を発表したが、「電力問題の解決」などと課題を列挙したに過ぎない。

金委員長は、叔父の張成沢国防委員会副委員長ら幹部を次々に処刑・粛清し、権力基盤を確立してきた。党大会で「腐敗との闘争」の継続を表明したのは、自らの権威に盾突く者は容赦しない、という警告だろう。

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