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[読売新聞] 比次期大統領 「南シナ海」の対応が問われる (2016年05月12日)

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経済成長を維持し、南シナ海の軍事拠点化を加速させる中国の脅威に、日米など関係国と連携して対処できるのか。その手腕が問われよう。

フィリピン大統領選で、南部ダバオの市長を務めるロドリゴ・ドゥテルテ氏の当選が確実になった。アキノ大統領が1期6年の任期を終えて退任するのを受け、6月末に次期大統領に就任する。

ドゥテルテ氏は、アキノ氏の後継候補で経済界も支持した前内務自治相や、副大統領を破った。

アキノ政権は、投資環境整備や財政改革を進め、年6%程度の経済成長を達成した。国際的評価も高い。だが、所得格差の拡大や治安、交通渋滞などに対する国民の生活上の不満がアウトサイダーを大統領に押し上げたのだろう。

検事出身のドゥテルテ氏は、下院議員などをはさんでダバオ市長を20年以上務め、国内最悪とされた治安を強権的手法で改善した。選挙戦でも、汚職をはじめとする犯罪の撲滅を公約に掲げた。

「犯罪者は殺害する」などの過激な発言で支持を広げたため、米大統領選で共和党候補の指名を確実にした不動産王のドナルド・トランプ氏にも喩(たと)えられる。

懸念されるのは、これまで、ドゥテルテ氏が治安問題以外に、経済や外交で具体的な政策を明らかにしていないことである。

ドゥテルテ氏が人気に溺れ、場当たり的で大衆迎合の政策を採るようでは、アキノ氏の経済発展路線の成果が台無しになろう。

中国と領有権を争う南シナ海問題でも方向性が見えない。中国と対話し、資源の共同探査を行う考えを表明する一方、自ら水上バイクで中国の人工島へ行き、フィリピンの旗を立てると放言した。

フィリピンは、南シナ海に関する中国の独善的な領有権主張を巡り、オランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴している。中国に不利な判断が近く示される見通しだ。中国の一方的行動の不当さを国際社会に訴え続ける必要がある。

強大な軍事力を背景に、南シナ海のほぼ全域を支配しようとする中国の圧力は強まるばかりだ。

アキノ政権は日米と連携を深めて、中国に対峙(たいじ)してきた。それに応えて、米国はフィリピンとの軍事協定に基づき、事実上の軍駐留を始める。日本も海上自衛隊の練習機を貸与し、南シナ海の監視能力強化を支援する。

地域の安定にとって海洋安全保障面での日米など関係国との協調継続が重要であることを、ドゥテルテ氏は忘れてはならない。

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