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[日経新聞] 耐性菌対策は待ったなしだ (2016年05月12日)

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発熱や下痢で医療機関を受診して抗生物質を処方される人は多いだろう。しかし、薬を使えば使うほど抵抗力をもつ「薬剤耐性菌」が増える。より強力な薬を開発しても、それをしのぐ菌が現れる。

悪循環を断ち切るため、政府は4月に、耐性菌の拡大を防ぐ対策や国際協力の強化などを盛り込んだ行動計画をまとめた。欧米に比べやや出遅れたが、危機感をもって実行に移してほしい。

対策は急を要する。耐性菌による死者は2013年の70万人から、50年には1000万人に増えるとの試算もある。

欧州諸国は旧植民地から感染症が広がることに対する警戒もあり、00年代初めごろから耐性菌の発生や広がりを抑える対策に力を入れてきた。しかし、日本は衛生環境がよいことや、島国の安心感から危機意識が薄かった。

近年、新型インフルエンザやデング熱、ジカ熱などアジアや熱帯から国境を越えて日本に感染症が入るケースが増えている。耐性菌とは異なるが、感染症全般への関心は高まりつつあり、対策を進める好機だ。

政府の行動計画は、抗生物質の使用量を20年に13年比で3分の1減らす目標を掲げた。薬に頼りすぎないという意識改革が医師、患者の双方に求められる。

本当に抗生物質を必要とする患者に、最適なものを適量出す。患者は処方箋通りに服用する。当たり前のことをきちんと実践するだけでも薬の使用はかなり減る。

研究態勢の再構築も欠かせない。感染症研究はがんや再生医療などに比べ日が当たらず、若手研究者は敬遠しがちだった。耐性菌を生まない、画期的な薬の開発などに挑む人材の育成が急務だ。

抗生物質の使用量や耐性菌の実態把握が遅れているアジア諸国との協力も急がれる。診断、解析技術や流行予測は日本のノウハウを生かせる部分もある。人の移動がこれだけ激しい時代だ。どこで起きる感染症も対岸の火事ではないと肝に銘じたい。

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