前年度の過去最高益も、円高が進めば一転し、本年度は大幅に目減りしそうだ。十一日発表のトヨタ自動車の決算は、日本の基幹産業も相変わらず為替頼みの収益構造だと、あらためて印象づけた。
本業のもうけを示す連結営業利益で、二〇一五年度(一六年三月期)は過去最高の二兆八千五百三十九億円。だが一六年度(一七年三月期)には一兆七千億円と四割も減る見通しで、減収減益の予想だ。
最大の減益要因は、為替の変動。
トヨタは最近の円高傾向を織り込み、想定レートを前年度通期の一ドル=一二〇円から一〇五円に、一ユーロ=一三三円から一二〇円に引き上げた。その結果、九千三百五十億円も利益が下がりそうだ。
トヨタお得意の「カイゼン」や、部品の値下げ要請を含めた「原価改善の努力」をもってしても、その増益効果は三千四百億円。為替の影響の前には、焼け石に水といえる。
この傾向は、四月下旬に発表されていたトヨタ系大手部品メーカー決算や、十日発表のスズキ決算でもはっきりしていた。スズキも一五年度に過去最高益を記録しながら、一六年度は主要市場のインドの通貨ルピーに対する円高が響き、減収減益となる見込みだ。
日本の自動車産業が、技術力や商品力向上により国際競争力を高めているのは疑いがない。ただ、やはり円高に振れると業績が息切れすることも、今回の決算発表ははっきり示した。日本経済が自律的な回復をしているのではなく、輸出時の帳簿上の計算で大きく膨らんでいることの証左である。
企業業績はいいのに、景気の好循環につながらない−。政府や日銀が経済全体に抱くもどかしさは、まさに自動車産業の業績見通しに集約されているのではないか。日本を代表するトヨタですら為替変動で利益四割減を見込むなら、どの企業経営者も強気の投資はしにくいだろう。もはや米政府も、日本を外国為替の監視リストに載せており、円安誘導をしにくい国際的なムードもできている。
為替変動に左右されにくい経営のためには、輸出主導ではなく、遠回りではあるが、力強い国内需要をつくり出すしかない。少子高齢化や若者のクルマ離れが言われて久しいが、若者たちが車を持てる経済環境が整っているのか。トヨタ決算を通し、金融政策一辺倒だったアベノミクスの限界もまた、浮き彫りになっている。
本業のもうけを示す連結営業利益で、二〇一五年度(一六年三月期)は過去最高の二兆八千五百三十九億円。だが一六年度(一七年三月期)には一兆七千億円と四割も減る見通しで、減収減益の予想だ。
最大の減益要因は、為替の変動。
トヨタは最近の円高傾向を織り込み、想定レートを前年度通期の一ドル=一二〇円から一〇五円に、一ユーロ=一三三円から一二〇円に引き上げた。その結果、九千三百五十億円も利益が下がりそうだ。
トヨタお得意の「カイゼン」や、部品の値下げ要請を含めた「原価改善の努力」をもってしても、その増益効果は三千四百億円。為替の影響の前には、焼け石に水といえる。
この傾向は、四月下旬に発表されていたトヨタ系大手部品メーカー決算や、十日発表のスズキ決算でもはっきりしていた。スズキも一五年度に過去最高益を記録しながら、一六年度は主要市場のインドの通貨ルピーに対する円高が響き、減収減益となる見込みだ。
日本の自動車産業が、技術力や商品力向上により国際競争力を高めているのは疑いがない。ただ、やはり円高に振れると業績が息切れすることも、今回の決算発表ははっきり示した。日本経済が自律的な回復をしているのではなく、輸出時の帳簿上の計算で大きく膨らんでいることの証左である。
企業業績はいいのに、景気の好循環につながらない−。政府や日銀が経済全体に抱くもどかしさは、まさに自動車産業の業績見通しに集約されているのではないか。日本を代表するトヨタですら為替変動で利益四割減を見込むなら、どの企業経営者も強気の投資はしにくいだろう。もはや米政府も、日本を外国為替の監視リストに載せており、円安誘導をしにくい国際的なムードもできている。
為替変動に左右されにくい経営のためには、輸出主導ではなく、遠回りではあるが、力強い国内需要をつくり出すしかない。少子高齢化や若者のクルマ離れが言われて久しいが、若者たちが車を持てる経済環境が整っているのか。トヨタ決算を通し、金融政策一辺倒だったアベノミクスの限界もまた、浮き彫りになっている。