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[朝日新聞] パナマ文書 まずは先進国が動け (2016年05月14日)

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国境をまたいだ税逃れの闇が深刻な様相をみせている。

国際調査報道ジャーナリスト連合は今月、入手した「パナマ文書」にあった法人や株主の名前など全体像を公開した。

すでに英国や中国、ロシアなど一部の国々の指導者と親族らの名前が浮上していたが、今回は全体の規模が示された。

法人の数だけで21万余。これも一つの法律事務所が関わった数で、氷山のほんの一角だ。

租税回避地は規制や監視がゆるく、情報を隠しやすい。世界の企業や富裕層の関与の実態が明るみに出るにつれ、納税者の怒りは募るばかりだ。

その責任の多くを負うべきなのは、まず先進国である。

法人の設立地として目立つのは英国領だ。英領・王室属領の回避地からロンドンの金融街シティーに資金が流れ込んでいる。米国の一部の州も、あえて緩い税制にしている。租税回避地は、欧米が築き上げた蓄財システムと称されるゆえんだ。

新興国や途上国の特権階級も、それを活用して私財を国外に蓄えている。先進国がつくった富の隠し場所が、発展地域の汚職や腐敗の浸透に加担しているという構図も垣間見える。

国際NGOの試算では、世界の富裕層が租税回避地にもつ未申告の金融資産は、約2570兆?3750兆円で、世界のGDPのほぼ3割にあたる。

世界に貧困がなおはびこり、先進国も財政難にあえぐ時代、途方もない資産が課税の網の外でうごめいている。こんな現状で世界の統治をめぐる公平・公正さが保てるはずがない。

国際的な対策づくりは、遅まきながら歩を進めている。

経済協力開発機構の加盟国を中心とする40カ国余は昨年、15の行動計画をまとめた。17年には各国・地域の海外在住者が持つ金融口座に関する情報を自動交換する制度が動き出し、約100の国と地域が参加する。

だが、規制の網の目をくぐる資産隠しの手法は絶えず進化するものだ。もっと先進国が率先して本腰を入れる必要がある。

今月は日本で主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)がある。租税回避の対策づくりに向けて決意を示し、新たな対策を検討する絶好の機会だ。

パナマ文書には、法人の株主や役員として日本がらみの二百数十の個人や企業も登場する。大半は合法的な節税目的と見られ、政治家の名前は見つかっていない。とはいえ、世界3位の経済大国として責務は重い。安倍首相はサミット議長として、議論を引っぱってほしい。

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