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[読売新聞] 特定研究法人 世界を凌駕する成果を上げよ (2016年05月15日)

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科学技術で世界を凌(りょう)駕(が)する成果を上げる。それが日本の持続的な成長と発展にもつながる。

国立の「エリート研究所」を政府が選定し、研究者への支援を強化するための特定国立研究開発法人法が成立した。今秋に施行される。

選ばれたのは、文部科学省所管の理化学研究所と物質・材料研究機構、経済産業省所管の産業技術総合研究所の3機関だ。27ある国立研究開発法人の中から、研究論文の質や数、特許の取得状況などを考慮して選考した。

科学技術の国際競争は激化する一方だ。欧米に加え、中国など新興国のレベルも上がっている。

日本は、研究者の高年齢化などでかつての勢いを失っている。3機関への期待は大きい。国際級の成果を収めるよう、研究に一層打ち込んでもらいたい。

今国会では、文科相が指定した国立大学をエリート大学として支援する改正国立大学法人法も成立している。今後、対象となる大学が選ばれる予定だ。

エリート研究機関と大学が成果を競い合い、日本の研究現場が活性化することも望めよう。

選定された研究機関、国立大学には、それぞれ、政府の総合科学技術・イノベーション会議と文科相から、高いノルマが課される。各機関は、国内外から優秀な人材を招請し、目標の達成に挑む。

人材確保の切り札として認められたのが、研究者に対する特別待遇だ。高額報酬も可能で、1億円の年俸もあり得る。現場の意欲を引き出せるのではないか。

研究資金の使途も自由度が広がる。研究機関の責任は重くなり、自律性も高まるだろう。

その一方で、組織の運営に問題があると判断されれば、政府は、機関のトップを解任できる。

懸念されるのは、行き過ぎた成果至上主義がもたらす研究不正である。悪質な不正は、日本の科学技術全体の信頼を損ないかねない。選定された機関と研究者は、責任を自覚せねばならない。

政府は、特定国立研究開発法人法案を、2014年の通常国会に提出する方針だった。だが、理研を舞台にしたSTAP細胞の論文不正問題が発覚し、法案提出が見送られた経緯がある。その結果、制度のスタートは2年遅れた。

理研は、外部有識者らによる経営戦略会議を設け、経営効率化や合理化などの改革を進めた。研究者の倫理教育も強化している。

今回の選定は、理研にとって失地回復の試金石となるだろう。

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