沖縄県で起きた元米海兵隊員の軍属による女性遺棄事件。日本側は米側に「綱紀粛正」を求めているが、日米地位協定を改定し、沖縄の米軍基地を削減しなければ、真の再発防止策とはなり得ない。
主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開幕に先立ち、二十五日夜に行われた日米首脳会談。約五十分間の会談前半に行われた少人数会談は、すべての時間が沖縄県での事件に費やされた、という。
安倍晋三首相はオバマ米大統領に「身勝手で卑劣極まりない犯行に憤りを覚える」と伝えた上で「実効的な再発防止策の徹底など厳正な対応」を求めたが、具体的に何を指すのかは不明だ。
日本政府はこれまでも、米兵や米軍基地に勤める軍属による事件や事故が起きるたびに、米軍側に綱紀粛正や再発防止を求めてきたが、今回の事件は、その抑止効果に限界があることを示す。
事件や事故を起こしても米軍基地内に逃げ込めば、地位協定に守られる。こんな特権意識が凶悪犯罪を誘発していると、沖縄県民の事件を見る目は厳しい。
一九九五年に県内で起きた少女暴行事件を受けて、殺人、強姦(ごうかん)の凶悪事件に限って起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的配慮を払う」よう運用が改善されたが、身柄引き渡しはあくまでも米側の判断であり、拒否した例もある。
米兵らの特権意識が犯罪や事故を誘発すると指摘される状況を解消するには、運用改善では限界がある。翁長雄志知事をはじめ沖縄県側が切実に求めているにもかかわらず、首相はなぜ、地位協定の改定に踏み込まなかったのか。
沖縄県には在日米軍専用施設の約74%が集中する。日本国民たる沖縄県民の命と平穏な暮らしを守るには米軍施設の大幅削減が急務だが、日米両政府は、県民の抜本的な基地負担軽減にはつながらない米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への「県内移設」が、「唯一の解決策」であるとの立場を変えようとしない。
首相は会談後の記者会見で「日本国民の命と財産を守る責任を果たすために、あらゆる手を尽くす決意だ」と強調した。首相たる者の心構えとしては当然だが行動が伴わなければ意味がない。
首相は今回の会談で、地位協定の改定と普天間飛行場の国外・県外移設を提起すべきだった。沖縄の状況が劇的に改善すれば、大統領にとってもレガシー(政治的遺産)になったはずだ。機を逸したことは残念でならない。
主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開幕に先立ち、二十五日夜に行われた日米首脳会談。約五十分間の会談前半に行われた少人数会談は、すべての時間が沖縄県での事件に費やされた、という。
安倍晋三首相はオバマ米大統領に「身勝手で卑劣極まりない犯行に憤りを覚える」と伝えた上で「実効的な再発防止策の徹底など厳正な対応」を求めたが、具体的に何を指すのかは不明だ。
日本政府はこれまでも、米兵や米軍基地に勤める軍属による事件や事故が起きるたびに、米軍側に綱紀粛正や再発防止を求めてきたが、今回の事件は、その抑止効果に限界があることを示す。
事件や事故を起こしても米軍基地内に逃げ込めば、地位協定に守られる。こんな特権意識が凶悪犯罪を誘発していると、沖縄県民の事件を見る目は厳しい。
一九九五年に県内で起きた少女暴行事件を受けて、殺人、強姦(ごうかん)の凶悪事件に限って起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的配慮を払う」よう運用が改善されたが、身柄引き渡しはあくまでも米側の判断であり、拒否した例もある。
米兵らの特権意識が犯罪や事故を誘発すると指摘される状況を解消するには、運用改善では限界がある。翁長雄志知事をはじめ沖縄県側が切実に求めているにもかかわらず、首相はなぜ、地位協定の改定に踏み込まなかったのか。
沖縄県には在日米軍専用施設の約74%が集中する。日本国民たる沖縄県民の命と平穏な暮らしを守るには米軍施設の大幅削減が急務だが、日米両政府は、県民の抜本的な基地負担軽減にはつながらない米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への「県内移設」が、「唯一の解決策」であるとの立場を変えようとしない。
首相は会談後の記者会見で「日本国民の命と財産を守る責任を果たすために、あらゆる手を尽くす決意だ」と強調した。首相たる者の心構えとしては当然だが行動が伴わなければ意味がない。
首相は今回の会談で、地位協定の改定と普天間飛行場の国外・県外移設を提起すべきだった。沖縄の状況が劇的に改善すれば、大統領にとってもレガシー(政治的遺産)になったはずだ。機を逸したことは残念でならない。