裁判員制度の根幹に関わる深刻な問題だ。
指定暴力団の工藤会系組幹部が被告の裁判員裁判で、福岡地裁小倉支部が判決の期日を取り消した。裁判員に対する「威迫」と受け取れる行為があったためとされている。
公判は5月10?12日に開かれ、16日に判決が予定されていた。公判期間中、組幹部の知人とみられる男が、閉廷後に庁舎外で待ち伏せし、複数の裁判員に「よろしく」と声をかけた。脅しのような言い回しもあったという。
知り合いを日本刀で刺し、殺人未遂罪で起訴された幹部は、裁判で殺意を否認していた。殺意の有無の判断が、量刑のポイントとなろう。男の振る舞いには、判決を決める裁判員の心理に圧力を加える意図がうかがえる。
裁判の公正性を歪める悪質な行為と言うほかない。
裁判員法は、裁判員に請託や威迫を行った者に対し、罰則を科すよう規定している。厳正な捜査による真相解明を求めたい。
工藤会は、一般市民への襲撃を繰り返してきた。極めて凶暴な集団だ。暴力団対策法に基づき、2012年に全国初の特定危険指定暴力団となった。
裁判員裁判の対象事件でも、裁判員に危害が及ぶ恐れがある場合には、プロの裁判官のみで裁くことが裁判員法で定められている。これまでに、工藤会に絡む5件の裁判で検察側が申し立て、いずれも認められた。
検察側は今回、組ぐるみの犯罪ではないとして申し立てを見送った。裁判官だけによる審理への切り替えは、裁判所が職権で行うことも可能だ。裁判員裁判とした検察や裁判所の判断が適切だったのかどうか、検証が必要である。
裁判員の身辺保護が不十分だったことは間違いない。男の接触を許した裁判所の責任は重い。
刑事裁判に国民各層の幅広い考え方を反映させるのが、裁判員制度の趣旨だ。その実現には、裁判員が安心して評議に臨める環境整備が不可欠である。
裁判所は、検察や警察と連携しながら、裁判員の身辺に危険が及ぶ可能性について情報収集し、庁舎外の警備の強化や裁判員の送迎など、対策を再検討すべきだ。
導入から7年を迎えた裁判員制度では、仕事などを理由に候補者の辞退率が上昇している。
国民の協力なしに、制度は成り立たない。再発防止を徹底しなければ、裁判員を敬遠する傾向が、さらに強まってしまう。
指定暴力団の工藤会系組幹部が被告の裁判員裁判で、福岡地裁小倉支部が判決の期日を取り消した。裁判員に対する「威迫」と受け取れる行為があったためとされている。
公判は5月10?12日に開かれ、16日に判決が予定されていた。公判期間中、組幹部の知人とみられる男が、閉廷後に庁舎外で待ち伏せし、複数の裁判員に「よろしく」と声をかけた。脅しのような言い回しもあったという。
知り合いを日本刀で刺し、殺人未遂罪で起訴された幹部は、裁判で殺意を否認していた。殺意の有無の判断が、量刑のポイントとなろう。男の振る舞いには、判決を決める裁判員の心理に圧力を加える意図がうかがえる。
裁判の公正性を歪める悪質な行為と言うほかない。
裁判員法は、裁判員に請託や威迫を行った者に対し、罰則を科すよう規定している。厳正な捜査による真相解明を求めたい。
工藤会は、一般市民への襲撃を繰り返してきた。極めて凶暴な集団だ。暴力団対策法に基づき、2012年に全国初の特定危険指定暴力団となった。
裁判員裁判の対象事件でも、裁判員に危害が及ぶ恐れがある場合には、プロの裁判官のみで裁くことが裁判員法で定められている。これまでに、工藤会に絡む5件の裁判で検察側が申し立て、いずれも認められた。
検察側は今回、組ぐるみの犯罪ではないとして申し立てを見送った。裁判官だけによる審理への切り替えは、裁判所が職権で行うことも可能だ。裁判員裁判とした検察や裁判所の判断が適切だったのかどうか、検証が必要である。
裁判員の身辺保護が不十分だったことは間違いない。男の接触を許した裁判所の責任は重い。
刑事裁判に国民各層の幅広い考え方を反映させるのが、裁判員制度の趣旨だ。その実現には、裁判員が安心して評議に臨める環境整備が不可欠である。
裁判所は、検察や警察と連携しながら、裁判員の身辺に危険が及ぶ可能性について情報収集し、庁舎外の警備の強化や裁判員の送迎など、対策を再検討すべきだ。
導入から7年を迎えた裁判員制度では、仕事などを理由に候補者の辞退率が上昇している。
国民の協力なしに、制度は成り立たない。再発防止を徹底しなければ、裁判員を敬遠する傾向が、さらに強まってしまう。