世界貿易機関(WTO)は通商紛争を解決する裁判所の役割を担っている。そのWTOの最高裁判事に相当する上級委員7人のうち、2人の委員が空席となる異例の事態が起きている。
自由貿易ルールの番人の力を弱めてはならない。WTOのアゼベド事務局長を中心に関係国は協議を急ぎ、人事を巡る混乱を早く収拾してもらいたい。
WTOの紛争処理は二審制で、一審にあたる小委員会(パネル)と最終審の上級委員会がある。上級委員の任期は4年で、2期まで務められる。
ところが、今年6月に2期目に入る予定だった韓国出身の委員の再任に、米国が「権限を超えた判決を出している」と反対した。さらに2期目を終えた中国出身の委員の後任を巡り、日本を含む6カ国が7人の候補を擁立し調整がつかずにいる。その結果、上級委員は現在5人だけになっている。
上級委員は1件につき3人で判決を出す。委員が少なくなったことで1件あたりの審査が長引き、紛争解決の手続きが滞るのではないか、と懸念される。
経済協力開発機構(OECD)によれば、20カ国・地域(G20)が2008年以降に導入した貿易制限措置の4分の3程度は今なお残ったままだという。
過剰生産を背景にした中国の鉄鋼製品をめぐり、米欧と中国の摩擦も激しくなると予想される。
そんな中で保護主義の広がりを防ぎ、自由貿易の基盤を守り抜くためにも、WTOの紛争解決機能を損ねるわけにはいかない。
WTOは多数決ではなく、加盟国・地域の全会一致で意思決定している。加盟国の合意形成にそれなりの手間がかかるとしても、上級委員の人選にいたずらに時間をかけてしまうのでは困る。
米国が上級委員の人事に反対する権利はもちろんあるが、代わりの人選に貢献する責任もあるはずだ。WTO提訴を活用している日本も積極的に事態の打開に動いてほしい。
自由貿易ルールの番人の力を弱めてはならない。WTOのアゼベド事務局長を中心に関係国は協議を急ぎ、人事を巡る混乱を早く収拾してもらいたい。
WTOの紛争処理は二審制で、一審にあたる小委員会(パネル)と最終審の上級委員会がある。上級委員の任期は4年で、2期まで務められる。
ところが、今年6月に2期目に入る予定だった韓国出身の委員の再任に、米国が「権限を超えた判決を出している」と反対した。さらに2期目を終えた中国出身の委員の後任を巡り、日本を含む6カ国が7人の候補を擁立し調整がつかずにいる。その結果、上級委員は現在5人だけになっている。
上級委員は1件につき3人で判決を出す。委員が少なくなったことで1件あたりの審査が長引き、紛争解決の手続きが滞るのではないか、と懸念される。
経済協力開発機構(OECD)によれば、20カ国・地域(G20)が2008年以降に導入した貿易制限措置の4分の3程度は今なお残ったままだという。
過剰生産を背景にした中国の鉄鋼製品をめぐり、米欧と中国の摩擦も激しくなると予想される。
そんな中で保護主義の広がりを防ぎ、自由貿易の基盤を守り抜くためにも、WTOの紛争解決機能を損ねるわけにはいかない。
WTOは多数決ではなく、加盟国・地域の全会一致で意思決定している。加盟国の合意形成にそれなりの手間がかかるとしても、上級委員の人選にいたずらに時間をかけてしまうのでは困る。
米国が上級委員の人事に反対する権利はもちろんあるが、代わりの人選に貢献する責任もあるはずだ。WTO提訴を活用している日本も積極的に事態の打開に動いてほしい。