大手タイヤメーカー、東洋ゴム工業が船舶のエンジンや鉄道車両の振動を抑える防振ゴム製品の品質試験データを改ざんしていたことが明らかになった。2007年の断熱パネル、今年3月の免震ゴムに続く重大な不正の発覚だ。
免震ゴムの偽装問題を調べた外部調査チームは「3度目の不祥事を起こしたら、会社の存続は危うい」と指摘していた。実際に不正が3度発生したことの異常さを強く自覚すべきである。
防振ゴムは振動を抑えるためにエンジンの周りや窓枠などに使われるもので、国土交通省は「直ちに安全に影響はない」としている。しかし、納入先は鉄道会社を中心に国内18社、計8万7804個に及ぶ。公共交通機関にも多数使用されているとみられ、利用者の不安はぬぐえない。点検を徹底して安全確認を急ぐ必要がある。
同社は免震ゴム不正の発覚を受けて全製品を対象に緊急監査し、8月10日に事実上の安全宣言を出していた。ところが、防振ゴムの不正はその後も続いており、結果的に見抜けなかった。明るみに出たのは従業員の内部通報があったからだ。
防振ゴムの不正は少なくとも10年前からあり、その大半は検査を担当する部署が人員削減された08年以降に起きている。改ざんの動機を解明するとともに、人員削減による負担増など構造的な問題があったかどうかや不正が見過ごされてきた原因について調べを尽くすべきだ。
不正が絶えないのは、担当者らの倫理意識の乏しさだけでなく不正に甘い企業体質がある。外部調査チームは報告書で、問題があっても後任者がそのまま引き継いだり、上司が適切な対応を取らなかったりするなど「社員の規範意識を鈍らせてしまう企業風土がある」と指摘した。
チームの提言を受けて同社は、弁護士を入れたコンプライアンス(法令順守)調査委員会を新設し全生産工程を恒常的に監査することを再発防止策とした。しかし、不正再発はこうした対応が機能していないことを示している。再発防止策を見直し、社員の意識改革を徹底する必要がある。
同社の売上高の約8割はタイヤ事業で、防振ゴムは免震ゴムと同じく1%に届かない。主力でない分野だからという理由で安全性がおろそかにされてきたとすれば深刻だ。この点も検証しなければならない。
同社は、会長職を外部登用するなど経営陣を刷新し、企業風土の変革を進める方針を示しているが、生半可な取り組みでは信頼回復はおぼつかない。企業体質を根本から改める覚悟が必要だ。
2015年10月16日 02時35分
免震ゴムの偽装問題を調べた外部調査チームは「3度目の不祥事を起こしたら、会社の存続は危うい」と指摘していた。実際に不正が3度発生したことの異常さを強く自覚すべきである。
防振ゴムは振動を抑えるためにエンジンの周りや窓枠などに使われるもので、国土交通省は「直ちに安全に影響はない」としている。しかし、納入先は鉄道会社を中心に国内18社、計8万7804個に及ぶ。公共交通機関にも多数使用されているとみられ、利用者の不安はぬぐえない。点検を徹底して安全確認を急ぐ必要がある。
同社は免震ゴム不正の発覚を受けて全製品を対象に緊急監査し、8月10日に事実上の安全宣言を出していた。ところが、防振ゴムの不正はその後も続いており、結果的に見抜けなかった。明るみに出たのは従業員の内部通報があったからだ。
防振ゴムの不正は少なくとも10年前からあり、その大半は検査を担当する部署が人員削減された08年以降に起きている。改ざんの動機を解明するとともに、人員削減による負担増など構造的な問題があったかどうかや不正が見過ごされてきた原因について調べを尽くすべきだ。
不正が絶えないのは、担当者らの倫理意識の乏しさだけでなく不正に甘い企業体質がある。外部調査チームは報告書で、問題があっても後任者がそのまま引き継いだり、上司が適切な対応を取らなかったりするなど「社員の規範意識を鈍らせてしまう企業風土がある」と指摘した。
チームの提言を受けて同社は、弁護士を入れたコンプライアンス(法令順守)調査委員会を新設し全生産工程を恒常的に監査することを再発防止策とした。しかし、不正再発はこうした対応が機能していないことを示している。再発防止策を見直し、社員の意識改革を徹底する必要がある。
同社の売上高の約8割はタイヤ事業で、防振ゴムは免震ゴムと同じく1%に届かない。主力でない分野だからという理由で安全性がおろそかにされてきたとすれば深刻だ。この点も検証しなければならない。
同社は、会長職を外部登用するなど経営陣を刷新し、企業風土の変革を進める方針を示しているが、生半可な取り組みでは信頼回復はおぼつかない。企業体質を根本から改める覚悟が必要だ。
2015年10月16日 02時35分