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[読売新聞] きょう公示 難題克服へ政策論争を深めよ (2016年06月22日)

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◆経済改革の実効性を吟味したい◆

安倍政権の経済、社会保障、外交・安全保障政策などを信任するのか。あるいは、転換を求めるのか。日本の針路を左右する重要な選挙だ。

参院選がきょう公示される。

デフレ脱却と財政再建の両立、少子高齢化と人口減社会への対策の強化、不安定化する国際情勢への対処――。日本は今、多くの困難な政策課題に直面している。

各政党と候補者は、説得力ある処方箋を示し、積極的な政策論争を展開してもらいたい。

参院選の最大の争点は無論、アベノミクスの是非である。

2014年の衆院選と同様、安倍首相は消費税率10%への引き上げを延期し、その信を問う考えを示している。日本記者クラブ主催の9党党首討論会でも、経済政策が論争の焦点となった。

安倍首相は、アベノミクスについて「リーマン・ショックで失われた国民総所得50兆円を今年中に取り戻せる」と語った。税収増、雇用改善の成果も強調した。

公明党の山口代表は、「アベノミクスの成果が十分に及んでいないところに希望を広げたい」と述べ、地方や中小企業対策に重点を置く考えを示した。

◆重要性増す安保関連法

民進党の岡田代表は、「金融や財政(政策)で(成長を)膨らませるだけのやり方は限界がある」などと安倍政権を批判し、経済政策を転換するよう主張した。

消費増税の延期はやむを得ないが、景気の足踏み状況を早期に脱し、19年10月には確実に増税できる環境を実現する必要がある。

与党は、今秋に予定される当面の経済対策や、中長期的な成長戦略の強化策の骨格を示すべきだ。野党も、アベノミクスの批判一辺倒でなく、どう転換するかを具体的に明らかにせねばなるまい。

自民党の公約は「成長と分配の好循環」、民進党は「分配と成長の両立」をそれぞれ明記した。

成長と分配の順番が逆だが、保育士の待遇改善、最低賃金の引き上げなど、共通する政策も多く、違いが分かりにくい。両党には、さらなる説明が求められよう。

集団的自衛権の行使を限定容認した3月施行の安全保障関連法も重要な論点となろう。

首相は「日米同盟の絆を強くした。日本の安全は、さらに強化された」と意義を指摘した。共産党の志位委員長は「自衛隊を海外の戦争に出していいのか」と述べ、関連法の廃止を主張した。

北朝鮮は核とミサイルによる軍事挑発を続け、中国は独善的な海洋進出を拡大させる。安保関連法を効果的に運用し、日米同盟を強化する重要性は一層高まった。

◆憲法は冷静に話し合え

与党は、こうした実情を丁寧に訴え、国民の理解を広げる努力を尽くすことが大切である。

憲法改正について、首相は、参院選後に、衆参の憲法審査会で具体的な改正項目を絞る作業を進めたい考えを改めて示した。

岡田氏は、「お互い協力する姿勢が安倍政権にあるのか。立憲主義に対する認識が全く間違っていないか」と疑問を呈した。

与党は、憲法改正を参院選の争点に据えることに慎重な姿勢を示している。首相は街頭演説でほとんど触れず、公明党は公約に盛り込まなかった。

野党との対立を先鋭化するのは選挙戦術上も、選挙後に幅広い合意形成を目指すうえでも、得策でないと判断したのだろう。だが、少なくとも、どういう改正項目を重視し、優先したいのかを示さなければ、有権者は戸惑おう。

野党も、9条改正反対と唱えるだけでは無責任である。

憲法は、70年近く一度も改正されず、現実との様々な乖離(かいり)が指摘される。最高法規をより良いものにする観点から、冷静に議論することが求められる。

◆野党協力は実るのか

自民、公明の与党は改選議席の過半数の61議席を獲得目標に掲げる。さらに、憲法改正発議に必要な参院の3分の2を占めるため、改正に前向きなおおさか維新の会などとの合計で78議席を確保できるか。この点も注目される。

民進、共産、社民、生活の野党4党は、「1強」の自民党に対抗するため、32ある1人区のすべてで統一候補の擁立に成功した。憲法、安全保障など基本政策が異なる中、「野合」批判をかわし、選挙協力の実を得られるか。

新たに選挙権を手にした18、19歳の約240万人を含め、有権者は、各党の訴えをしっかりと吟味し、誤りなき選択をしたい。

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