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[東京新聞] シリア内戦 代理戦争の場にするな (2015年10月17日)

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ロシアがシリアへの空爆を激化させ内戦の混乱が広がっている。犠牲者や難民が増大し、人道危機は深刻化。米ロの溝は深く国際社会の足並みはそろわないが、絶望せず、和平への糸口を探りたい。

ロシア側によると、空爆でシリア北西部の過激派組織「イスラム国」(IS)の訓練キャンプや爆薬倉庫などを破壊したという。

シリアでは、アサド政権と反体制派との内戦が、四年半にわたって続いている。台頭したISも加わって、戦闘は泥沼化。欧米は、アサド大統領が住民を殺傷しているとして退陣を要求するが、ロシアは、アサド政権を支援している。

ロシアと米国主導の有志国連合は協力せず、別々に空爆を実施。米国はロシアがISではない反体制派を攻撃していると指摘、反体制派に武器や弾薬を提供し、米ロの対立は深まる。オバマ米大統領はロシアの介入を批判する一方で「シリアを米ロの代理戦争の場にはしない」とも話す。衝突を避ける自制と外交努力を求めたい。

シリア内戦による死者は二十万人を超え、国内の避難民は約七百六十万人、難民は約四百万人に上り、欧州に殺到している。人道危機を止める手だてはないのか。

二十年前を思い起こしたい。約二十万人の犠牲者と、約二百万人の難民を出したとされるボスニア・ヘルツェゴビナの内戦を終結に導くデートン合意が成立した。

一九九二年春、旧ユーゴスラビアの一部だったボスニアが独立を決めたことをきっかけに、国内のイスラム教徒、セルビア人、クロアチア人の三勢力による内戦が三年半以上にわたって続き、他民族の「民族浄化」など大量虐殺も相次いだ。イスラム教徒主体のボスニア政府の背後には米国などの北大西洋条約機構(NATO)、セルビア人勢力の背後にはロシアが付き、国際的な対立も広がった。

デートン合意は、NATOによるセルビア人勢力空爆など軍事的圧力も加え、米英仏独ロを中心に国際社会が調停してまとめた。二十年後の今、三勢力は共存し、ボスニアは欧州連合(EU)入りを目指すまでになった。

中東のシリアとは環境が異なり、米ロの力関係も今とは違う。だが、合意実現の経緯や知恵から学べることはあるのではないか。

ロシアが空爆で行き詰まる時が、国際的交渉を進める時機ともいわれる。IS壊滅という目的では一致できる。シリア和平への希望をあきらめてはならない。

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