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[日経新聞] 企業の意思決定に政府が介入しては困る (2015年10月18日)

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政府は企業に投資拡大を促す「官民対話」の初会合を開いた。首相や経済閣僚と経済界の代表者が参加し、投資促進に向けた規制緩和や減税策なども話し合う。経済の活性化に向け官民が意見交換することには意味があろう。

だが、設備投資をどうするかなど、企業が自主判断で決めるべきことに政府が干渉するなら問題だ。企業の経営戦略をゆがめるようなことになれば、民間の活力が抑えられる懸念がある。政府の役割は民間が競争力を高めやすくなる規制改革などの環境づくりだ。

政府が企業に投資増を促すのは業績が堅調な割には投資が伸び悩んでいるためだ。上場企業全体の手元資金は2014年度末で105兆円と過去最高水準にある。一方で民間設備投資は鈍化しており、先行指標となる機械受注額は15年7?9月期に、船舶・電力を除く民需で前期比マイナスとなるのがほぼ確実な情勢だ。

設備投資の停滞は中国経済の減速などが影響している。ただ資金は潤沢なだけに、企業がお金をもっと投資に振り向け、景気の足踏み状態を打開してほしいと政府が考えるのもわからないではない。

しかし政府の圧力を受ける形で、企業が無理をして投資を拡大すれば、肝心の競争力が低下する心配がある。国内投資に資金を回す結果、海外事業展開に支障が出るという事態も考えられよう。

経営の意思決定は個々の企業が下し、国の圧力や統制は排除するのが自由主義経済の基本だ。賃上げの働きかけもそうだが、企業の経営判断への政府の介入には違和感を覚えざるを得ない。

最も大事なのは企業が持続的に成長する力をつけることだ。安定的に投資を増やしていけるだけの競争力を持った企業が広がることが、強い経済を実現するために欠かせない。

医療、環境・エネルギー関連といった成長分野への企業参入を促す規制改革や、法人実効税率の着実な引き下げなど、企業の活動を活発にする環境整備は一段と重要になる。政府はこうした政策を強力に進めてほしい。

企業が資金を有効活用して競争力を高める努力もいっそう求められる。ロボットや人工知能は新しいビジネスの種になり、生産性向上にも使える。イノベーションを起こす力を経営者は問われる。日本経済の再生へ企業と政府がそれぞれの役割を果たすときだ。

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