新しく得た科学的な知識を原子力の安全規制に取り込み、すでに運転認可が出された原子力発電所に対しても適用する――。
これは「バックフィット規制」という考え方で、3年前に施行された新規制基準で原子力規制委員会が導入した。
東京電力・福島第1原発では想定しうる津波の高さが地質調査で大きくなったにもかかわらず、有効な対策をとらなかった。その教訓を踏まえての改善策だ。
原子力の安全を常に最高水準に保つために有効な考え方だといえる。しかし新たな知識をどう規制に取り入れるか、具体的な仕組みがなければ絵に描いた餅になる。規制委は実効性のあるルールづくりを急ぐべきだ。
島崎邦彦・東京大学名誉教授は関西電力大飯原発の地震の揺れについて、安全審査で承認された想定が「過小評価だ」と指摘した。島崎氏は2014年9月まで規制委の委員長代理を2年間務めた地震学の第一人者だ。退職後に自身の研究を通じて得た知見に基づき問題提起したという。
規制委は島崎氏の意見を聞いて揺れの大きさを再計算したものの最終的に「根拠がない」などとして想定を見直さないと決めた。
一人の学者の意見だけで規制を変更するわけにはいかない。見直さないとの判断は理解できる。
ただ、そう決めた理由が一般にはわかりにくいうえ、規制委に地震学の専門家がおらず判断が揺れた印象も与えた。結果的に規制委への国民の信頼感を損なったのは残念なことだ。
規制委の傘下に、新知識を客観的に評価できる専門組織を設けてはどうか。安全性向上につながる研究成果に常に目を光らせ、必要なものは規制に取り入れるよう規制委に対し適宜提言する。
地震学会や原子力学会なども科学者や技術者の間で十分に議論をし、有用な発見や技術を規制に反映させる努力をすべきだ。それが事故を防げなかった専門家の使命のはずだ。
これは「バックフィット規制」という考え方で、3年前に施行された新規制基準で原子力規制委員会が導入した。
東京電力・福島第1原発では想定しうる津波の高さが地質調査で大きくなったにもかかわらず、有効な対策をとらなかった。その教訓を踏まえての改善策だ。
原子力の安全を常に最高水準に保つために有効な考え方だといえる。しかし新たな知識をどう規制に取り入れるか、具体的な仕組みがなければ絵に描いた餅になる。規制委は実効性のあるルールづくりを急ぐべきだ。
島崎邦彦・東京大学名誉教授は関西電力大飯原発の地震の揺れについて、安全審査で承認された想定が「過小評価だ」と指摘した。島崎氏は2014年9月まで規制委の委員長代理を2年間務めた地震学の第一人者だ。退職後に自身の研究を通じて得た知見に基づき問題提起したという。
規制委は島崎氏の意見を聞いて揺れの大きさを再計算したものの最終的に「根拠がない」などとして想定を見直さないと決めた。
一人の学者の意見だけで規制を変更するわけにはいかない。見直さないとの判断は理解できる。
ただ、そう決めた理由が一般にはわかりにくいうえ、規制委に地震学の専門家がおらず判断が揺れた印象も与えた。結果的に規制委への国民の信頼感を損なったのは残念なことだ。
規制委の傘下に、新知識を客観的に評価できる専門組織を設けてはどうか。安全性向上につながる研究成果に常に目を光らせ、必要なものは規制に取り入れるよう規制委に対し適宜提言する。
地震学会や原子力学会なども科学者や技術者の間で十分に議論をし、有用な発見や技術を規制に反映させる努力をすべきだ。それが事故を防げなかった専門家の使命のはずだ。