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[日経新聞] 福島の復興・廃炉を進める体制を万全に (2016年08月07日)

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東京電力ホールディングス(HD)は福島第1原子力発電所の廃炉について、政府に支援を求める方針を示した。廃炉にかかる費用が見込みを大幅に上回り、このままでは資金面の理由から作業が滞る可能性が出てきたからだ。

福島第1原発の事故から5年が過ぎた。福島の復興と廃炉にはまだ長い時間がかかるが、やり遂げなければならない。作業を確実に進めるため、資金手当ての枠組みは万全にしなければならない。

国と東京電力(当時)は2014年につくった再建計画「新総合特別事業計画」で、事故処理に必要となる9兆円について、国が交付国債を発行して立て替える仕組みを設けた。

このうち、事故被害者への損害賠償にあてる5兆4千億円については、東電HDや関西電力など原発や関連施設を持つ11社が毎年、収益の中から返済する。除染に使う2兆5千億円は国が保有する東電株の売却益で回収する。

だが、賠償は必要額が7兆円を超えた。除染費用を回収するには1千円以上の株価が必要だが、現状では400円を下回る。

この不足分に加え、原子炉内で溶け落ちた核燃料の取り出し作業が21年以降に始まると、追加の費用が生じる。国の立て替えとは別に、東電HDが廃炉費用として自前で用意する2兆円では足りなくなる可能性が高い。

これらの費用を確保する新たな枠組みが必要だ。まず、東電HDの負担が原則であることと、国民負担はできる限り小さくするという点を忘れてはならない。

実際の廃炉費用は巨額になる可能性がある。作業を止めないためには、これまでと同じように、国が資金を立て替えるなどの支援策を考えなければならないだろう。支援にあたっては、東電HDにこれまで以上に踏み込んだ経営改革を求める必要もある。

東電HDは16年3月期に、賠償費用の返済分として700億円を国に納付した。政府から新たに廃炉費用の支援を受けた場合、これまでの支援分とあわせ、毎年、1千億円以上を数十年間にわたって返済し続けなければならなくなる可能性がある。

収益力を一層、高めることが求められる。電力小売りが全面自由化され、競争は激しくなっている。廃炉費用を負担しながら企業の活力を保ち続けられる枠組みでなければ長続きしない。

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