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[読売新聞] 基準地価 緩やかな上昇を持続できるか (2016年09月21日)

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実需に基づく緩やかな上昇基調を続けることが大切である。

国土交通省が発表した7月1日時点の基準地価で、商業地の全国平均が9年ぶりに下落から横ばいに転じた。全用途、住宅地の下げ幅は、ともに7年連続で縮小した。

すでにプラス圏にある東京、大阪、名古屋の3大都市圏の商業地は、4年連続で上げ幅を広げた。地価の回復傾向は、一段と鮮明になったと言えよう。

主要都市では、外国人観光客を当て込んだ商業施設やホテルの開業ラッシュが相次ぐ。アベノミクス効果による企業活動の回復で、オフィスの空室率が低下した。2020年東京五輪に向けた都心や臨海部の再開発も見逃せない。

地価は経済の活力を示す指標とされる。不動産価格の上昇を、デフレ脱却に向けた日本経済の底上げにつなげたい。

日本銀行が2月に導入したマイナス金利政策によって、企業融資や住宅ローンの金利が低下した。それが旺盛な需要につながっていると指摘されている。

ただ、不動産市場の活況が、超低金利政策で生じた緩和マネーの流入に過度に依存しているのであれば、長続きはしまい。

銀行の企業向け融資が全般的に伸び悩んでいる中で、不動産向け融資は突出している。4?6月の新規分だけで3兆円超に膨らみ、バブル期のピークを超えた。

東京・銀座は、3年間で地価が2倍に上昇した。金融緩和で行き場を失った資金が投機に流れ、新たなバブルの芽が生まれていることはないだろうか。

バブルが再来すれば、その崩壊過程で不動産価格を乱高下させる。1980年代の日本が得た教訓を忘れてはならない。

実体経済を反映した地価の持続的な上昇基調を実現させることが重要である。政府は、投機的な動きに目を凝らしてもらいたい。

規制改革などの成長戦略を地道に進めることで、不動産の健全な需要を創出する必要もある。

地方圏の地価は、二極化が進んでいる。札幌、福岡など拠点都市や観光地が外国人効果で潤う一方、人口減の目立つ農村部は一向に下げ止まる気配がない。

住宅地全体で上昇率1位は、外国人の別荘需要を掘り起こした北海道倶知安町の物件だった。

地方には、観光資源としてまだまだ「隠れた宝」も眠っているはずだ。地価上昇の裾野を地方に広げるには、自治体や地元経済界の創意工夫が欠かせない。

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