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[日経新聞] 持続的な地価回復のために (2016年09月21日)

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地価は緩やかな回復が続いている。国土交通省がまとめた基準地価(7月1日時点)をみると、商業地は9年ぶりに下落から脱し、住宅地も下落幅が一段と縮まった。地価が持続的に回復するためには、規制改革などをてこに実需を引き出す政策が欠かせない。

地価回復の理由は主に2つあるのだろう。ひとつは訪日外国人の増加などに伴うホテルや店舗需要の拡大だ。

東京の銀座や大阪の心斎橋などだけでなく、札幌のような地方都市でも訪日客の増加に対応した土地取引が増えている。今回、住宅地で最も上昇率が高かったのもリゾート地として外国人に人気の北海道倶知安町だった。

もうひとつは日銀のマイナス金利政策の影響だ。住宅ローン金利の低下が需要を下支えしているうえ、不動産投資信託(REIT)も借り入れコストの低下で物件を取得しやすくなっている。

一方、不動産市場には懸念材料も目立つ。首都圏ではマンション販売が大幅に減り、契約率も好不調の目安である70%を下回る状況が続いている。建設費の上昇を背景とする販売価格の高止まりに需要が追い付いていない。

東京都心部の商業地をみても、オフィスの空室率が低下している割には賃料の上昇が鈍い。土地の収益力がさらに高まらなければ、地価の上昇は続かないだろう。

金融機関の不動産向け融資が高水準で推移している点も心配だ。特に個人向けアパートローンをてこに、賃貸住宅の建設が大幅に増え、すでにミニバブルの様相を呈している。

地価が適度に上がることは担保価値の上昇を通じて経済にプラスになる。今後も持続的に回復するには実需の下支えが不可欠だ。

そのためには、規制改革や税制などを通じて都市の魅力を磨き、内外から資金を呼び寄せる必要がある。人口減少が続く地方では観光需要をうまく取り込み、街のにぎわいを取り戻せるかどうかがカギになる。

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