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[産経新聞] 【主張】日銀の総括検証 脱デフレへの転換点に 政府と一体で改革加速せよ (2016年09月22日)

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日銀が3年半に及ぶ大規模な金融緩和を総括的に検証し、政策を強化するための新たな枠組みを決めた。最大の特徴は、長期金利と短期金利を誘導目標とし、従来の「量」から「金利」へ重点を移すことにあるといえよう。

異次元と呼ばれた緩和は、思い通りの効果を上げないまま長期化し、緩和余地の縮小や副作用が取り沙汰されていた。懸念を拭い、政策の信頼を保つ上で、今回、検証を行った意味はけっして小さくないだろう。

問われるのは、これを踏まえて金利重視の下での政策効果をいかに高めていくかである。

≪副作用に目配り怠るな≫

黒田東彦総裁は会見で、新たな枠組みにより「政策の持続性が高まる」と述べた。景気回復に裏付けられた物価の上昇により、脱デフレを確実に果たす。その政策を継続しつつ、実効性を高める転換点としなければならない。

同時に認識しておくべきことは日銀頼みの限界である。むろん金融政策はアベノミクスの重要な柱ではあるが、それだけでは経済の好循環を果たせない。

政府の構造改革や成長戦略、財政政策などもこの際、併せて検証すべきではないか。それでこそ、政府・日銀一体での取り組みも加速できよう。

日銀は、物価上昇率が安定的に2%を超えるまで緩和を続けると宣言した。ここで緩和姿勢が揺らげば、20年の長期デフレに舞い戻りかねない。断固たる姿勢を示し、物価上昇への期待感を高めようとする姿勢は妥当だ。

マイナス金利政策を維持し、必要に応じてこれを深掘りする考えも示した。国債を買い入れて資金供給量を増やす政策は限界に近づくとの指摘もあったが、マイナス金利政策を緩和手段の主軸としつつ長期戦に臨む判断を示した。

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問題は、マイナス金利政策にどれだけの効果が期待できるかだ。総括検証は2月の政策導入後、長短金利を大きく押し下げる効果があったと指摘した。

だが、一段の金利低下が進む中でも、企業の資金需要は乏しく融資増は限定的だ。投資や消費を活性化する効果が期待ほど高まらない一方で、金融機関の収益圧迫や年金、保険の運用難などの副作用が指摘されてきた。利回り低下が企業の退職給付会計を圧迫する実害も出ている。

副作用は、日銀も検証で認めている。長期金利を政策目標に据えたのも、これがマイナスになるなど、行き過ぎた動きに歯止めをかける意味合いだろう。

無論、金融機関による貸し出しへの地道な経営努力が十分行われたかとの視点も必要だ。

マイナス金利政策の結果、地方銀行などの経営が悪化すれば融資ペースは鈍化する。そうした事態を招かぬよう警戒を怠るわけにはいかないが、地域経済の活性化への金融機関の積極的な取り組みも求めたい。

≪潜在成長力の向上図れ≫

21日の債券市場では10年物国債の利回りが一時、半年ぶりのプラスに転じた。まずはその動きを見極めなければならない。

政策の透明性を高める丁寧な説明も、日銀には求めたい。

新たな政策を打ち出す際にサプライズの演出に固執し、「黒田バズーカ」とも称されてきた。唐突な政策決定を繰り返せば、金融政策決定会合のたびに市場が追加緩和を催促する関係を招く。

マイナス金利政策の決定時、直前まで黒田総裁は否定的だった。金融機関がその後、日銀不信を強めた点と無縁ではあるまい。

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アベノミクスの下で、日銀の緩和策は物価目標を明確にすることと相まって、人々が将来の物価上昇を見込んで消費や投資を活発化するよう促す狙いがあった。だが十分に機能してこなかった。

その背景として、総括検証は原油安や税率8%への消費税増税、新興国経済の減速を列挙した。長年にわたりデフレ心理が染みついてきたことも大きい。

言うまでもなく、これらをいかに乗り越えるかは、安倍晋三政権が腰を据えて取り組むべき重要な経済政策そのものである。

財政政策の風呂敷を広げて「エンジンをふかす」という姿勢が、従来とは異なる生きた予算につながる保証はまだない。

潜在成長力や生産性を高めることに結び付く、改革と戦略への取り組みが急務である。

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