どちらが指導者にふさわしいか。米大統領選のテレビ討論会は、候補者同士が直接論戦し、政策と手腕について、公に吟味をあおぐ貴重な機会である。
しかし、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏による最初の対決は、論戦に深みがなく、物足りないものだった。
相手の主張のあやまりや歪曲(わいきょく)ぶりへの指摘に時間を費やし、今の米国や世界が直面する数々の難題に正面から向き合ったとは到底、言えない。
経済問題でクリントン氏は、最低賃金引き上げや女性の地位向上など分配の重視を説いた。トランプ氏は減税による経済活性化を唱える一方、自由貿易協定が「産業を国外に流出させ、雇用を奪った」と批判した。
いずれも従来の主張の繰り返しだ。グローバル経済のもとで米国の伝統的な製造業が衰退しつつあるという問題意識は共有されているが、その現実にどう取りくむのかが見えない。
中間層を守る姿勢を強調したクリントン氏は、有望な産業分野に再生可能エネルギーを挙げたが、全体的に新味に欠けた。トランプ氏は、なぜ保護主義を強めれば企業競争力が高まるのか、明確に説明しなかった。
安全保障で、トランプ氏はさらに内向きな主張を展開した。
「日韓、ドイツ、サウジアラビアは米国から多大な軍事サービスを受けながら対価を払っていない」と非難した。
これもトランプ氏のかねての持論とはいえ、共和党の大統領候補という責任ある立場にある以上、見過ごせない。
同盟国が米軍に駐留拠点を提供することで米国の安全は保たれている。中国やロシアなどが国際秩序に挑むような行動をとり、テロ組織の脅威が国境を越えて米国内にも及ぶ時代だからこそ、同盟国の結束がますます求められている。トランプ氏には、理性的な状況認識が欠けていると言わざるをえない。
何より残念なのは、今回の討論会ではお互いの欠点を批判し合うやりとりが中心となり、政策をめぐる議論がほとんど、かみ合わなかったことだ。
クリントン氏はトランプ氏の税逃れ疑惑、人種・女性差別を責めたてた。トランプ氏は、弱体化し、犯罪やテロで混乱する「悲観的な米国」を印象づけ、オバマ大統領やクリントン氏のせいだとやり玉にあげた。
まだ論戦は始まったばかりだ。テレビ討論会はあと2回ある。米国をどうやって再生させるのか、国際社会でどんな責任を果たすのか。今度こそ、具体的な将来像を示してほしい。
しかし、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏による最初の対決は、論戦に深みがなく、物足りないものだった。
相手の主張のあやまりや歪曲(わいきょく)ぶりへの指摘に時間を費やし、今の米国や世界が直面する数々の難題に正面から向き合ったとは到底、言えない。
経済問題でクリントン氏は、最低賃金引き上げや女性の地位向上など分配の重視を説いた。トランプ氏は減税による経済活性化を唱える一方、自由貿易協定が「産業を国外に流出させ、雇用を奪った」と批判した。
いずれも従来の主張の繰り返しだ。グローバル経済のもとで米国の伝統的な製造業が衰退しつつあるという問題意識は共有されているが、その現実にどう取りくむのかが見えない。
中間層を守る姿勢を強調したクリントン氏は、有望な産業分野に再生可能エネルギーを挙げたが、全体的に新味に欠けた。トランプ氏は、なぜ保護主義を強めれば企業競争力が高まるのか、明確に説明しなかった。
安全保障で、トランプ氏はさらに内向きな主張を展開した。
「日韓、ドイツ、サウジアラビアは米国から多大な軍事サービスを受けながら対価を払っていない」と非難した。
これもトランプ氏のかねての持論とはいえ、共和党の大統領候補という責任ある立場にある以上、見過ごせない。
同盟国が米軍に駐留拠点を提供することで米国の安全は保たれている。中国やロシアなどが国際秩序に挑むような行動をとり、テロ組織の脅威が国境を越えて米国内にも及ぶ時代だからこそ、同盟国の結束がますます求められている。トランプ氏には、理性的な状況認識が欠けていると言わざるをえない。
何より残念なのは、今回の討論会ではお互いの欠点を批判し合うやりとりが中心となり、政策をめぐる議論がほとんど、かみ合わなかったことだ。
クリントン氏はトランプ氏の税逃れ疑惑、人種・女性差別を責めたてた。トランプ氏は、弱体化し、犯罪やテロで混乱する「悲観的な米国」を印象づけ、オバマ大統領やクリントン氏のせいだとやり玉にあげた。
まだ論戦は始まったばかりだ。テレビ討論会はあと2回ある。米国をどうやって再生させるのか、国際社会でどんな責任を果たすのか。今度こそ、具体的な将来像を示してほしい。