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[東京新聞] イグ・ノーベル賞 笑った後で考える科学 (2016年09月30日)

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米ハーバード大で先週、イグ・ノーベル賞の授賞式があり、日本人が十年連続で受賞した。賞は「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究が対象。ユーモアが科学を身近にしてくれる。

本年度の「知覚賞」に選ばれたのが、立命館大の東山篤規(あつき)教授らの「股のぞき」だ。

京都府の天橋立に行くと誰もがやってみる。天地がひっくり返るとともに、遠くのものが近くに見える。日本人にはなじみの行動だが、見え方が変わるのはなぜか。学生ボランティアを使った実験での結論は、意外にも「いつもと違う姿勢によって知覚の精度が下がる」ということだった。「なぜ」と考えることの大事さを教えてくれる。

授賞式後、東山教授が股のぞきを実演すると爆笑が起きた。講演会の会場では「逆立ちでは」との質問が出たという。まさに「笑わせ、考えさせる」研究である。

同賞は一九九一年に始まった。特典は、本物のノーベル賞受賞者から認定書が贈られることで、旅費も出ない。例年、十件のテーマが選ばれるが、すべてが科学的な業績とは限らない。

今年の化学賞は、排ガス規制で不正を働いたフォルクスワーゲン社。授賞理由は、排ガス問題を検査時に自動的・電気機械的に処理したという皮肉である。

国別では、米国が圧倒的に多い。日本はカラオケが「人々が互いに寛容になることを教えた」として平和賞に選ばれるなど二十二件。英国と二位を争う。ドイツは少なく、中国が健闘している。

オランダ人物理学者のアンドレ・ガイム博士は二〇一〇年に「炭素新素材グラフェン」でノーベル物理学賞を受賞しているが、〇〇年に「カエルの磁気浮上」でイグ・ノーベル賞も取っている。

独創的な研究はときに巧まざるユーモアを感じさせる。クラゲを八十五万匹捕まえた。何度も実験装置を爆発させた。これはどちらの賞だろうか。

〇八年にノーベル化学賞を受賞した下村脩・名古屋大特別教授は家族総出でクラゲを捕った。緑色に光るタンパク質GFPを見つけるためだった。

中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授は実験装置を何度も爆発させた末、青色発光ダイオードの製作に成功。一四年にノーベル物理学賞を受賞した。

来週からノーベル賞の発表が始まる。三年連続の日本人受賞を期待したい。

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