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[産経新聞] 【主張】大阪万博 「夢よもう一度」ではなく (2016年10月02日)

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大阪府が誘致をめざす2025年の国際博覧会(万博)について、政府は東京五輪・パラリンピック(20年)後の経済活性化策として立候補の検討に入った。

かつて東京五輪から大阪万博への流れは高度経済成長に弾みをつけた。「夢よもう一度」の期待もあろうが、そろばん勘定を先行させず、万博の今日的意義を内外にどうアピールするかが問われよう。

大阪府の基本構想素案によると、万博は「人類の健康・長寿への挑戦」をテーマに、25年5月から10月、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催する。3千万人の来場者を見込み、経済波及効果は約6・4兆円としている。

菅義偉官房長官は会見で「日本の魅力を世界に発信する絶好の機会だ」と前向きな姿勢を示した。誘致方針が正式決定すれば、来春にも博覧会国際事務局(BIE)に立候補を届け出る。パリとの争いになるとみられる。

1970年に開催された大阪万博は、当時としては万博史上最多の6422万人が来場した。「月の石」を展示したアメリカ館など人気のパビリオンは数時間待ちで、「人類の進歩と調和」というテーマをもじって「人類の辛抱と長蛇」と揶揄(やゆ)された。

高度成長期のピークに位置するイベントだった。しかし、その後は東京への一極集中が進み、本社機能の移転などで、大阪は地盤沈下に歯止めがかからない。

「東京が2度目の五輪なら、大阪も2度目の万博を」には、低迷する経済の起爆剤としての期待がある。インバウンド(訪日外国人客)に弾みをつけるとともに、アクセスなどインフラを整備して、万博後の夢洲にIR(統合リゾート)の誘致をもくろんでいる。

万博開催には巨額の費用がかかる。基本構想素案は会場建設費として1200億?1300億円、運営費を690億?740億円とするが、東京五輪は当初の見積もりを大幅に上回り、計画見直しを余儀なくされている。甘い試算は後悔を招く。費用負担に難色を示す関西財界の協力も不可欠だ。

万博は19世紀後半に産業革命以降の技術文明の見本市として始まったが、もはやパビリオンで展示を競うのは古い。「健康・長寿」という関心の高いテーマをどう表現するか。21世紀にふさわしい新しい万博が求められる。

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