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[産経新聞] 【主張】新たな「国際通貨」 人民元拡大へ警戒怠れぬ (2016年10月05日)

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真の「国際通貨」と呼ぶのがはばかられるほど、多くの課題を抱えたままの始動である。

中国の人民元が、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に加わった。ドルとユーロ、円、ポンドに並ぶ主要通貨としてIMFのお墨付きを得たことになる。

中国経済の膨張を反映して人民元の存在感が増すこと自体は自然だとしても、それだけで国際通貨として認めるには、金融・資本取引の自由度が低すぎる。

為替相場の透明性や自由な決済が十分に確保されない中で、利用ばかりが広がれば、世界経済の大きなリスクとなりかねない。

前のめりに判断したIMFはもちろん、国際社会は人民元への監視をさらに強め、中国に改革の着実な履行を迫る必要がある。

既存の国際金融秩序に対抗する一歩として、SDR入りは中国の悲願だった。これで直ちにドル中心の国際通貨体制が揺らぐことはなかろうが、中国側の輸入を中心とする人民元建て取引の拡大や、人民元を外貨準備に組み込む動きは強まるとみられる。

人民元の国際化を通じ、中国との貿易上の利便性が高まることへの期待は小さくないだろう。問題は、国際通貨の信認に欠かせぬ改革がいまなお不十分なことだ。

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中国はこれまで、海外での人民元決済銀行の拡充など、段階的な自由化を進めてきた。だが、人民元の相場は変動幅が管理され、国境を越えた資本の出入りにも制限がある。政府の人為的操作で為替相場や株価に介入することが目立ち、最近はむしろ改革の後退が懸念されている。

自由化で資本の海外流出が加速し、一党独裁体制の経済秩序が揺らぐことを避けたいのだろう。だからといって恣意(しい)的な経済運営を変えなければ、人民元はいつまでも国際通貨の名に値しないと認識すべきである。

警戒すべきは、各国企業が中国の唐突な政策変更に翻弄される事態である。人民元の国際化がもたらすリスクに備えることを、国際社会は余儀なくされる。

将来的に人民元経済圏が形成されれば、外交や安全保障環境の地殻変動も起こりかねない。人民元の透明性が高まらないと、ドルの力を源泉とした経済制裁の効果が減じることなども、想定しておかねばなるまい。

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