都心から約20キロ離れた埼玉県新座市の地下トンネル。そこで起きたひとつの火災によって、おととい都内58万世帯が一時停電し、首都機能がマヒした。
電車が運転を見あわせ、信号がつかない交差点で警察官が交通整理にあたった。霞が関の官庁街でも明かりが消えた。
その光景に、5年前の東日本大震災を思い起こした人も少なくなかったのではないか。
ふだん気にとめずに享受している都市の便利さは、多くのインフラに支えられている。そのどれかがおかしくなると、日常生活を送れなくなる。当たり前であることのありがたさが、改めて人々に突きつけられた。
幸い停電は1時間ほどで復旧し、大きな混乱にはならなかった。過去の同種事故の教訓を踏まえ、対策にあたってきた関係者の努力のたまものだ。
これを「良かった」「うまくいった」で済ませず、次への備えを固める機会としたい。
首都直下型地震は、30年以内に70%の確率で起き、最悪で2万3千人が死亡すると予測されている。発生直後は電気の供給能力が5割程度になり、それが1週間以上続く場合もあるというのが中央防災会議の想定だ。
その時、どうするか。
日ごろの準備が大切なのはわかっているが、きっかけがないと、考えたり行動に移したりしないのが人の常だ。
今回の停電で、自分の仕事場やマンションの非常用電源はうまく作動したか。暗くなった地下街であわてずに落ち着いて行動できたか。自宅に乾電池などの備蓄はあるか。大規模施設を運営する業者は情報を迅速に入手し、客を適切に誘導できたか――。記憶の新しいうちに点検し、問題があればすみやかに手当てをしておこう。
停電の原因究明はこれからだが、東京電力によると、送電ケーブルの内部にひびが入り、引火した可能性があるという。
インフラの老朽化は高速道路や橋、水道管などだけでなく、電気設備関係でも頭の痛いテーマである。問題のケーブルは設置から35年が経ち、その間、交換されていない。同型でやはり35年以上使い続けているケーブルは、東電管内で総延長約1千キロもあるという。
目視による点検で経年劣化を見逃していなかったか。検査体制は十分か。他の電力会社も、この事故を他山の石として足元を点検してもらいたい。
原発事故の後、どの社も厳しい経営が続く。だがそれは安全対策を怠る理由にはならない。これも当たり前の話だ。
電車が運転を見あわせ、信号がつかない交差点で警察官が交通整理にあたった。霞が関の官庁街でも明かりが消えた。
その光景に、5年前の東日本大震災を思い起こした人も少なくなかったのではないか。
ふだん気にとめずに享受している都市の便利さは、多くのインフラに支えられている。そのどれかがおかしくなると、日常生活を送れなくなる。当たり前であることのありがたさが、改めて人々に突きつけられた。
幸い停電は1時間ほどで復旧し、大きな混乱にはならなかった。過去の同種事故の教訓を踏まえ、対策にあたってきた関係者の努力のたまものだ。
これを「良かった」「うまくいった」で済ませず、次への備えを固める機会としたい。
首都直下型地震は、30年以内に70%の確率で起き、最悪で2万3千人が死亡すると予測されている。発生直後は電気の供給能力が5割程度になり、それが1週間以上続く場合もあるというのが中央防災会議の想定だ。
その時、どうするか。
日ごろの準備が大切なのはわかっているが、きっかけがないと、考えたり行動に移したりしないのが人の常だ。
今回の停電で、自分の仕事場やマンションの非常用電源はうまく作動したか。暗くなった地下街であわてずに落ち着いて行動できたか。自宅に乾電池などの備蓄はあるか。大規模施設を運営する業者は情報を迅速に入手し、客を適切に誘導できたか――。記憶の新しいうちに点検し、問題があればすみやかに手当てをしておこう。
停電の原因究明はこれからだが、東京電力によると、送電ケーブルの内部にひびが入り、引火した可能性があるという。
インフラの老朽化は高速道路や橋、水道管などだけでなく、電気設備関係でも頭の痛いテーマである。問題のケーブルは設置から35年が経ち、その間、交換されていない。同型でやはり35年以上使い続けているケーブルは、東電管内で総延長約1千キロもあるという。
目視による点検で経年劣化を見逃していなかったか。検査体制は十分か。他の電力会社も、この事故を他山の石として足元を点検してもらいたい。
原発事故の後、どの社も厳しい経営が続く。だがそれは安全対策を怠る理由にはならない。これも当たり前の話だ。