Quantcast
Channel: 新聞社説まとめサイト
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

[読売新聞] 新聞週間 若い世代の羅針盤でありたい (2016年10月15日)

$
0
0
新聞週間が始まった。今年の代表標語は「新聞を 開くその手で ひらく未来」。採用されたのは高校生の作品だ。

若い時に新聞を読むことで、広く社会に目を向けるようになった人は少なくあるまい。

選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が施行され、7月の参院選に適用された。

新聞の存在意義を再認識する機会となったのではないか。

主権者教育が典型例だ。

党首の第一声が並んだ紙面を教材に用いた高校がある。選挙中の新聞は、主要な政党や候補者の主張を偏りなく取り上げるのが原則だ。政治的中立が求められる教育現場では使いやすいのだろう。

読売新聞は昨年10月から、「18歳の1票」と題した週1回の企画で、少子化や国の財政といった政治テーマを分かりやすく解説している。教材にも役立っている。

読売新聞の世論調査で、参院選で特に重視したメディアを質問したところ、新聞を挙げた人が最も多く、62%に上った。ツイッターなどのソーシャルメディアは11%にとどまる。

この差は、発信される情報への信頼度に起因すると言えよう。深い取材に裏打ちされた正確な記事は、新聞の生命線である。

安全保障や経済を巡る国内外の情勢が不透明さを増す中で、新聞には、社会の羅針盤としての機能が一層求められる。使命を胸に刻みつつ、若者に訴えかける紙面作りに今後も知恵を絞りたい。

気がかりなのは、最近、重大な事件や災害で当事者の実名が公表されない事例が目立つことだ。

7月に相模原市の知的障害者施設で起きた殺傷事件で、神奈川県警は犠牲者19人の氏名を明らかにしなかった。岩手県も8月の台風10号の行方不明者について当初公表したのは、人数だけだった。

新聞は、実名を割り出せなければ当事者の取材ができない。その結果、捜査当局や行政機関による情報操作や不適切な権力行使をチェックできなくなる。実名発表は正確な報道の大前提である。

あくまでも実名の公表を求め、紙面に掲載するかどうかは、新聞が自らの責任で判断する。それが本来の姿である。

もっとも、新聞への信頼が揺らげば、こうした主張は説得力を失おう。記事の捏造(ねつぞう)や取材資料の第三者への提供といった記者倫理にもとる行為が、一部のブロック紙などで表面化したのは残念だ。

新聞界全体で襟を正し、読者の信頼に応えたい。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17272

Trending Articles